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戦国異伝

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第二百九話 もう一人の龍その十一

 そしてそのうえでだ、こうも言ったのだった。
「あの者は欲しい」
「織田信長自身を」
「あの者自身も」
「うむ、わしは欲が強い」
 また不敵な笑みで言う政宗だった。
「何でも手に入れたい」
「では、ですか」
「それでは」
「織田信長を倒し」
「あの者を家臣とし」
「そして、ですか」
「天下もまた」
 片倉と成実は政宗のその言葉を聞いて笑を浮かべた、彼等もまた。
 そしてだった、彼等も言うのだった。
「ではこれより」
「磨上原に向かいましょう」
「そしてあの地で」
「織田の軍勢を倒しましょう」
「わしの天下がはじまる」
 信長に勝ったその時にというのだ。
「ではこれより磨上原に向かうぞ」
「はい、では」
「これより」
 二人も応えてだ、伊達の軍勢は一旦退いた。そしてそれは。
 織田家の物見達も見た、そして。
 信長はその報を聞いてだ、こう言った。
「磨上原か」
「はい、そこにです」
「向かっています」
「そうか、あの地か」
「殿、磨上原といえば」
 すぐにだ。佐久間が言って来た。
「伊達政宗が芦名家を破った」
「はい、あの地です」
「そうじゃな、あの地に我等を誘き寄せ」
「そしてですな」
「破るつもりじゃな」
「殿、地の利はあちらにあります」
 その伊達家にというのだ。
「ですから」
「その地に誘き寄せか」
「我等に勝つつもりかと」
「ふむ。ではな」
 それではとだ、信長は言い。
 そうしてだ、こうも言ったのだった。
「我等もじゃ」
「その磨上原にですか」
「そうじゃ、向かう」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「あの地ですか」
「そうじゃ、ではな」
「ううむ、あの地での戦は」
 信長の話を聞いてだ、佐久間はこう言った。
「あまり」
「ようないというのじゃな」
「はい、やはり地の利はです」
「伊達にあるな」
「敵地です」
「だからじゃな」
「あの地に入ることは」
 避けるべきだというのだ。
「そう思いますが」
「そうじゃな、慎重に行けばな」
「ましてあの地は伊達家が勝っています」
「確かにな、しかしじゃ」
「あえてですか」
「入る」
 その地にというのだ。
「ここはな」
「そうされますか」
「面白いではないか、あそこで伊達を破りじゃ」
 そしてというのである。
「あの者もじゃ」
「家臣とされ」
「そうしてじゃ」
 そこまで進めてというのだ。
「今は終わりじゃ」
「では」
「うむ、あえて進む」
 そうするというのだ。 
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