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戦国異伝

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第二百九話 もう一人の龍その十二

「よいな」
「敵地にあえて入り」
「そうじゃ、勝ってみせるわ」
 こう言ってだ、信長は伊達の動きがわかったうえでだった。
 軍勢をあえて磨上原に向かわせる、佐久間は信長のその動きを見て戦について言うことは止めた。だが。
 ここでだ、彼はこうしたことも言ったのだった。
「奥羽は噂通りですな」
「寒いな」
「はい、他の国よりも」
 こう言うのだった。
「関東も風が強かったですが」
「ここは余計にじゃな」
「はい、寒いです」
 その関東以上にというのだ。
「風も強いですし」
「うむ、まだ寒い季節でないからな」
 まだましだと言う信長だった、だが。
 それでもだ、彼は佐久間にこう言った。
「兵共のことを考えるとな」
「はい、今でなくてよかったですな」
「兵共に服を多く用意しておかねばな」
 冬に兵を進めるとならばというのだ。
「そうしなければな」
「なりませんでしたな」
「凍えては戦にならぬ」
 寒さでだ、そうなってはというのだ。
「身体が動かぬし死んでしまう」
「はい、奥羽の冬は厳しいと聞いていましたが」
「この寒さならな」
 冬でなくとも感じる、それならば余計にというのだ。
「冬はより厳しい」
「雪もありますし」
「そうしたことも考えてじゃ」
 それで、というのだ。
「奥羽での戦のことも考えておこう」
「今後は」
「うむ、そうしようぞ」
 信長は佐久間にこうしたことも言った、そして。
 兵をさらに進めていった、伊達との戦の時が迫っていた。


第二百九話   完


                    2014・12・10 
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