ワールド・エゴ 〜世界を創りし者〜
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world war4-『神々の怒り』-
前書き
この話の後半。
"此処から"がワルエゴです。今までは前座。
闇は、滅された。
天の光は地を照らし、暗闇を喰い潰す。
天照大神の持つ浄化の炎は闇を祓い、人界を覆った。
その光はダークテリトリーの晴れぬ紅き空すら照らし、その焦土を恵みの大地へと作り変えた。
穢れは消える。
清き力は満ちる。
人々の恐怖は、もはや消え去ったも同然だった。
--そして
--その中枢である、シン__神名『ネクスト・ジウス・オリジンナイト』は、降り立った。
強い。
自らの事ながら、ひしひしとその強大な力を感じられる。
荒ぶる神の力を束ね、自らの力として使うこの異能。
たった一つ存在するだけで、この世の総べてを統治する事が出来る程の、強力な力。
シンは口を固く閉ざしながら、その拳を握り締めた。
「終わったかい?」
「……お前が、この力を?」
背後から聞こえた声。シンは己が異能でその正体を感じ取り、そして問うた。
「否、その異能はキミ自身のモノ。僕はキッカケを与えたに過ぎない」
「俺が、俺の様なただの人間が、こんな化け物じみた力を持ってる訳ないだろ」
「再び否だ。かの聖女、ジャンヌ・ダルクだって資質は持っていた。某二大宗教の開祖だって素質があったからこそ、その声を聞いたんだ。キミは、少しばかりその素質が強大な個体ってだけさ」
その青年は、シンの心臓部を指差して言う。
正確には、心臓の奥底の魂。その中に眠る『神性』を指差して、言う。
「お前は、誰なんだ?」
「言ったと思っていたんだけど……必死で聞こえてなかったかな?僕の名は《主》。ただの神さ」
「ただのって……神の時点でただのじゃないだろ」
「いいや?神なんて実はそこら中に居るものさ。八百万の神々なんて言われる通り、神は数え切れないほど居る。知名度が無いだけだよ」
クスクスと笑い、例えば--なんて言いながら、人界の中心にそびえる巨大な塔を指差す。
「あの塔。あの素材である大理石一つ一つに、それぞれに付喪神が宿っている。神って言っても、全員が力を持ってる訳じゃない。その資質と、信仰の度合いから力は成るんだ」
「……良く分かんねぇな」
「キミはこちらに踏み込んだばかりだしね、無理もない。すぐに分かるさ--って、こんな事してる場合じゃなかった」
《主》は思い出した様に指をならすと、右掌をこちらに向けた。
力の本流がその前で渦巻き、時空の歪みを引き起こす。
「……ッ!」
「身構えなくても良い、キミには手伝いをして貰うだけだ。安心し給え」
ブラックホールの如き力の本流は、時間を飲み込み、空間を飲み込み、そしてシンを飲み込もうとする。
「うわっ!」
「詳細は現場で説明しよう。なぁに、キミならば大丈夫さ。さあ、行ってらっしゃい。『依り代』」
力を手にした筈のシンですら成す術もなく、その渦に飲み込まれるしかなかった。
◇◇◇
タツは、自らの力の高まりを感じていた。
全知全能が、《全》に含まれない概念すら感知していく。
世界の裏側。
真実の闇。
不存在存在。
失われた世界と、その技術。
『主世界』と『滅びの依り代』。
『世界断絶』。
今まで知り得なかった事すら、全知全能は捉えた。まあ『奪う』ことは出来ない様だが。
『これが……《信仰》の結果ですか』
神が力を得る為の手っ取り早い方法。
即ち、信仰集めだ。
タツは闇を祓うと同時に、人々の信仰を集めていた。
圧倒的な異能を見せつけ、自らの『神格』を鍛え上げていく。
今や、『ゼウス』の神格など不要。
自分自身の力で、真実を塗り替える。
自分自身の力で、全知全能を従える。
自分自身の力で、世界を治める神と成る。
『さて、まずは貴方達でこの力を試すとしましょう』
目の前にいるのは。
大量の『 』だった。
全て、天冠が戦ったモノと同等クラス。
その総てが、地面に這いつくばっている。
「……ッ!」
そのうちの一人が、闇を放つ。
タツは、それを見る。
闇は掻き消される。
特別何か力を使った訳ではない。
ただ、闇という自我の無い筈の力が、タツに恐怖し、自ら消えたのだ。
「なぜだ……ッ!」
『何故?決まっているでしょう。"僕"が貴方達を上回っているに過ぎない。当然の理です』
一歩。
たった一歩。タツが踏み出した。
幾ら分身体とはいえ、物語の管理者である『 』の力が、全く通じない。
「--『削除』ッ!」
物語からあらゆる事象を消し去る、本当の意味での不可避の一撃。
当たれば物語から追放され、二度と存在を取り戻す事は無い。
その"必殺"はタツへと迫り、そして直撃した。
タツの中枢、《主》が指したモノと同じ、魂。さらにその魂を構築する『設定』へとアクセスし、そして--
『--で?終わりですか?』
いとも簡単に、ねじ伏せられた。
「……馬鹿な」
『馬鹿な?分身程度が、僕に抗えると思っているのですか?そこまで驕っていたのなら、相当の愚か者ですね』
容赦の無い一言。だがおかしい。
『 』は、タツの実力を正確に把握していた。
以前接触した時だって、分身体の一撃を数秒持ち堪えるのが精一杯だった筈。あれすら手加減していたとは思えない。
可能性は、この短期間で、劇的に成長したという事。
いや、そんなもの有り得ない。成長速度が規格外過ぎる。そんな事あってたまるものか--
『何を今更なことを考えているのですか?』
心を読んだかの様な、一言。
その右手に構えるは神器、《アブソルロード・ジ・インフェニテッドソウラー》。
その刃は世界を断ち、夜を裂き、闇を祓う。最高クラスの神器。
天に掲げられたその刀は、月の輝きを妖しく纏い、その圧倒的な迄の威力を示した。
『僕らチーターは、何時だって規格外でしょう。貴方同様、僕だって規格外の一人だ』
振り下ろされる。
--そして。
"『 』の分身体"という存在の『セカイ』は、滅びた。
--力は、集まりつつある。
--頃合いだ。歯車を解き放とう。
世界転生まで、あと46時間。
《滅びの依り代》の完成まで、あと44時間。
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