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ハイスクール・DM

作者:龍牙
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21話

 クロックの時間停止能力の制御も交えての休憩が終わった後は、四季とカツキングによる組み手を終えて朝のトレーニングは終った。……流石に今回が初日である詩乃には無理をさせられないが、四季のトレーニングもどちらかと言えば最小限に抑えられている。

 ……これまでの基礎のある四季に必死についてきている詩乃の疲労は、隠しているが明らかに大きい物だ。だからこそ、組み手……バトルスタイルの確立していない彼女が休憩していられる様な訓練も交えていた。

 後は学校の近くを通って一度家に帰って支度をするだけだが……


『六十三……六十四……』


 掠れ掠れに聞こえてくる一誠の声が校庭から聞こえてきた。ふと、視線を向けると其処ではリアスを背中に乗せて腕立て伏せをしている一誠の姿があった。

「あなたの能力は基礎体力が高いほど効果があるのよ」

「ういっス……六十五……」

 一誠の神器は己の能力を時間経過と共に倍加していく能力、問答無用で一撃のみの破壊力に限定して百万倍は無限の値にする四季の物とは違い、基礎能力が高ければ高いほど効果は大きくなる。同じ二倍でも、基礎能力が一と三では一度の強化で四の差が出る。
 逆に四季の神器は相手に一撃を当てられるほど四季自身が強くなければならない。言わば、強力だが甘えを許さない能力と言った所だろうか。
 共に強力な神器だが短所も有るが……四季の場合は本来の神器はアウトレイジの書であり、他のアウトレイジを神器モードとして扱う事ができるので、汎用性と言う点では差が大きいだろうが。

「あいつも特訓か……」

「……気付いてるか、あの変態と似た様な顔してたぞ……」

 何処か幸せそうな一誠の顔にブルースが四季にだけ聞こえるように小声で呟く。

「……自覚はある」

 主に大好きな相手と一緒に居られる時点で最大級に幸せと感じる四季だからだろう。詩乃の幸せが至上の幸福、下手すれば彼女自身の意思ならば、喜んで命さえも差し出しかねない……それが四季の性格である。

「それにしても……」

 基礎体力をつける訓練……と言う点では一誠のそれは一般的な運動部のそれと言うレベル。能力を落さない程度の軽めとは言え、四季のレベルについてくる詩乃に比べて、一誠の訓練は何処か必死さが足りないようにも見える。
 ブルースからの特訓は、根本的に詩乃に攻撃できない四季に詩乃の相手役をさせる事を全面的に諦め、四季とのコンビを前提とした実戦を想定とした模擬戦闘訓練も基礎体力作りと平行して行なっている。

「ドラゴン……と言うよりも強過ぎる力はトラブルを引き寄せるって言う自覚無さそうだな、グレモリーの連中」

「そうね」

「だな」

 四季の言葉に同意する詩乃とブルースの二人。四季も詩乃もそれは身を持って知っているのに対して、彼等の行動は楽観的過ぎる。
 これから先、戦いが有るとしても精々、成熟してから参加できるレーディングゲーム程度で、参加可能になるのは今から数年後……今から無理する必要は無いとでも思っているのだろう。

「温い連中だ」

 ブルースの一言。それは四季達アウトレイジとグレモリー眷属の感じている温度差。四季も……つい最近、四季達アウトレイジの一員となった詩乃も自分達がコレから先、平和に過ごせるとは思っていない。恐らく命懸けの戦いは何度も待っていると確信している。
 だからこそ、四季も己の力をもっと引き出したいと思っているし、詩乃も自身の中に在るドラグハートの力を扱える様になりたいと願っている。

 四季に守られているのは心地良い。敵に対しては全てを焼き尽くす灼熱の業火でも、味方……特に詩乃に対しては心地良い春の陽気だ。だが、そんな四季の背中に守られている現状は彼女にとってもいいものとは思っていない。過去から逃げるためにも、自分のために傷付く事を恐れない四季の力になる為にも、だ。

「まっ、連中は連中、オレ達はオレ達……連中の事は気にせずにオレ達のやり方で行こうぜ」

「そうね」

「それもそうだ」

 何時の間にやら運動服姿でアーシアもリアス達に合流している。

(まだまだ足りねぇか……)

 まだまだキングの力にも、赤き血(ザ・ヒート)の力にも上がある。四季には今のままで満足している暇は無い。強い力を持っていたとしても仕えなければ何も守れない。選択肢の一つに詩乃の力を借りてのドラグハートと言う物も増えたが、使い慣れない武器は扱いにくい。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「とお」

「ひでぶ!」

 主人公として色々と何かを失いそうな叫び声で吹っ飛ぶ一誠。その日、四季はリアスからの要請で一誠と模擬戦闘訓練をしていた。相手が格上ばかりと言うのも己の力が正しく見えなくなるので丁度良いとも思っての行動だが、

 四季は神器モードのクロスファイヤを片手に、一誠も己の神器の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を腕に装着しての訓練風景だが……一誠は四季に悉くあしらわれていた。一誠と四季の力の差は大きく、数回の強化が無ければ総合的な力負けも確実だ。
 一回しか強化できないが最高で百万倍の倍加とその反動に耐えるだけ強度を与えるクロスファイヤの神器モードに対抗するには二回や三回の強化では足りないのは明白。

「くそ……オレとあいつの何がそんなに違うんだよ」

「いや、全部だろ?」

 百万超邪の右籠手(クロスファイヤ・デストラクション)を装着した右手の開閉を繰り返しながら、地面に倒れ付している一誠へと返事をする。一誠は倍加をしているが四季は一度も神器の力は使っていない。

「くっそ! オレに力を貸しやがれ、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!!!」


《Boost!》


 一誠の左腕に顕現している赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の甲の部分の宝玉が光を放ち、電子音がなり一誠の力が再度倍化される。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

「たあ」

「あじゃぱー!!!」

「「イッセー(さん)!?」」

 四季の一撃で舞い上がる一誠と吹飛ばされた一誠に悲鳴を上げるリアスとアーシアの二人。

「いや、オレとお前の力の差って強化無しでも四倍以上だろ?」

 そんなグレモリー勢を他所に、四季は地面とキスをする破目になった一誠に呆れたように呟く。

「ちくしょー。オレは悪魔に転生したのに何で其処まで差が有るんだよ……」

「はっ、オレはアウトレイジだ。悪魔程度に負けるか、神にでも転生してから自慢しろ」

 『アウトレイジ/ヒューマノイド』と言うべき新参者のアウトレイジの四季だが、オラクリオンと言う『ゼロの人造神』や『神人類』と言った神の域に入った者達と戦ってきたアウトレイジなのだ。若葉マーク付きの転生悪魔に種族特性だけでも負けはしない。追記しておくと『ドラグナー/ヒューマノイド』が詩乃だろう。

「大丈夫ですか、イッセーさん!?」

「シキ、やり過ぎよ!」

「おーおー、随分と甘い事で」

 アーシアの治療を受けながらヨロヨロとした様子で立ち上がる一誠。

「甘いって……あんな事はそう何度も」

「いや、お前の場合は確実に戦わなきゃいけない強敵が要るだろ?」

 当然ながら、カツキングにカレーパンの恨みで一緒にボコられた白龍皇である。
 もう一体の神さえも殺す力を秘めたドラゴン、アウトレイジとオラクルの関係にもにた……己の力を『無限』に限界まで倍加する赤龍帝ドライグと対になる相手の力を『零』に近付ける『白龍皇アルビオン』を宿した神器……一誠が当代の赤龍帝ならば必ず彼の前に現れる当代の白龍皇。

「誰だよ、それ?」

「知らなきゃ良い、その内勝手に知る事だ」

 態々丁寧に説明する事ではない。そう言って一誠の疑問をはぐらかす。

「お前のそれは力に耐えられる防御までは与えてくれない……オレは始めて使っても、キングとクロスの神器モードのパワーには一撃だけなら耐えられるけど、お前の強化には限界がある」

 一誠に背中を向けながら一瞥し、

「せめて十回は強化できないと、折角の神殺しの力が泣くぜ」

 一誠にそう忠告しておく。……だが、四季にとって考えなければならないのは、別にある。一誠の白龍皇だけでなく、四季と詩乃にも戦わなければならない相手が居る……レイナーレにドラグハートの存在を教えた存在が。

(何時か必ず炙り出してやる)

 その上で叩き潰すと心の仲で誓う。 
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