ハイスクール・DM
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20話
さて、四季と詩乃の二人の主な師はブルースである。
カツキング、テスタ・ロッサの前のアウトレイジクリスタルの所持者であり、カツキングの話ではテスタ・ロッサがアウトレイジクリスタルの所持者足りえる器を作りあげた存在でもある。
そんな訳で師匠には向いている人物で有るが、当然厳しい。
……以前から鍛えられている四季にとっては熟れているし、四季に守られているばかりでは駄目だと思っている詩乃も必死についていっている。その為、問題は無いだろう。
そもそも、四季は大切な相手……詩乃の為には妥協はしないタイプだ。当然、一番は己自身に向けられている。
「「はぁ……はぁ……」」
スポーツドリンクを飲んで呼吸を整えながら四季は詩乃へと視線を向ける。何時もなら見惚れている所だが、今回は彼女の感じている焦りの方に意識は向いてしまう。
「焦ってるのか?」
「……うん」
詩乃は未だにドラグハート・ウェポンを自由に扱えない。そもそも、普通の少女であった彼女に行き成り武器を使えと言っても無理だろうし……一番向いているであろう武器は武器の意思と彼女の無意識の二つの面から封印されている。
その為にハンマーや鎌、大剣は槍を扱えるようにならなければならない。
ドラグハート・ウェポン達は重さを感じる事無く、大きさや形状に反して羽の様な軽さで扱える。それはガイアールを持った四季の感想でも有る。だが、扱い易いといっても、それは戦いなれている四季だから言えることであり、詩乃には当てはまらない。四季がガイアールを使うには彼女の存在が不可欠だが……詩乃にとっては守られているだけと言う今の状況がイヤだったのだ。
……まあ、当の四季は迷惑など感じず、寧ろ彼女を守る状況は喜んでいるかもしれない……。
「さて、休憩だが……分かってるな、四季?」
「当然」
「?」
ブルースの言葉に何時もの事と言う様に言葉を返す。そんな二人のやり取りに疑問を覚える詩乃を他所に、四季はクロックの神器モードを起動させる。時計の埋め込まれた手袋と言った外見のそれを出現させると、
「……時間、停止……」
師機駕そう呟くと、四季達三人を除いて時が停止する。強力だがシンプルな能力を持ったクロスファイヤやカツキングと違いクロックの神器モードは強力であるが最も複雑で扱い難い。
特にその複雑さから戦闘中には四季はクロックの力は使えず、こうして扱えるのは移動にのみ限定されている。同時にクロック並みの複雑さを持つブルース、ジャッキー、コンコルドの神器モードも今の四季には扱えない。
「そうだ。休憩中はクロックの時間停止の訓練も平行してやれ。お前の場合、あの二人の力は扱えるが、複雑な能力は扱えない。最終的にはある程度なら眠りながらでも時間停止を維持できるようになれ」
「はいっ」
休憩しながらの時間停止の維持は出来るようになっている。実際、コツを掴めば維持も容易いのだ。
「四季は凄いね」
「凄くないさ、まだまだ弱いよ、オレは」
だからこそ、今回の堕天使達に詩乃が二度も襲われてしまった。と、言う言葉を飲み込む。
離れていたから仕方ない、そんな言葉で自分を許したくないと言うのが四季の気持ちだ。彼女が一度とは言え堕天使に襲われたのだから……一誠を襲った堕天使の存在も知っていたのだから、それで油断してしまったのは、完全に四季のミスだ。
(オレは迷わない……詩乃を守る為に)
ゆっくりと握る手には神器モードのクロック。少しずつ時計に刻まれている時間は0に近付いている。
「先ずは基礎的な力を常に扱えるようになれ、でなきゃ禁手やアウトレイジクリスタルの力、そして……キングやテスタの最大の力は……夢ですらない」
「「テスタ?」」
キングの前のアウトレイジクリスタルの所持者と聞いているが、『テスタ』と言う名を話す時の仲間達の顔は常に嬉しそうな表情をしている。
「ああ、奴はオレ達アウトレイジの“誇り”だ」
そう言うと微かにブルースが笑みを浮かべ、
「ま、あいつの事は、テメェがせめて禁手まで至れたら改めて話してやろう」
「禁手ね……」
神器の持つ『本来の姿』と言う可能性があると、アリスが言っていた事を思い出す。通常発現している神器は扱い易い制限が掛けられた姿であり、制限を外した姿こそが本来の神器の姿である、と。
また、亜種が存在しているのは制限状態で所持者の能力などを集め、その情報を元に所持者に本来の形を最も適した形へと改良させた物が、禁手の亜種の可能性がある。との事だ。
「有るのかな……こいつに」
だが、四季の所有しているアウトレイジの書はクリーチャー世界由来の神器。故に書の姿が最初から本来の物と思っている。
「分からない。でも、私達のにもあると思うわよ」
「え?」
隣に座っている詩乃の言葉に思わず聞き返してしまう。
「開放されたがってる、ナニカが居るのが私には分かるから」
己の内に封じられたドラグハート・ウェポン達へと思いを向ける詩乃。そんな彼女の手に微かに触れた瞬間、
「っ!?」
四季の中に一つの映像が浮かぶ。……ドラゴンを思わせる巨大な城塞……そして、強大な力を持ったドラゴン達の姿と、それと共に戦う戦士達の姿が。
「……ガイ……ギンガ……?」
まるで四季に何かを語りかけてくる様に佇む青いドラゴン。自然と零れたその名が、そのドラゴンの物だと……何故かそう思ってしまう。
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