ハイスクール・DM
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22話
さて、先ほどの一誠と四季の構図を繰り返すように、今度は四季がボロボロにされていた。だが、先ほどの一誠の時と違うのは何度ボロボロにされようが、目を逸らす事無く相手を見据えながら立ち上がっている所だろう。
「やれやれ、単なる組み手なんだからそれほど無理することでも無いだろうが」
「悪いけど、そう言う訳には行かないぜ、キング」
赤き血を展開して目の前に立つカツキングを見据えながら……ボロボロになった全身とは反対に、彼の瞳に宿す意思は力強く輝いている。そんな四季の姿を見て、カツキングは微かに微笑む。
(やっぱり、そう言う所がテスタの奴にそっくりだな)
思い出すのはオラクルの策略で自分と拳を交えた時のアウトレイジの英雄の姿。
今の四季の力ではまだあの時のテスタにすら及ばない。性格も全然違う。だが、真っ直ぐに向けられる意思はアウトレイジの……あの時のテスタと同じ物だ。
「だが、これ以上は止めとけ、無理のしすぎは害にしかならねぇだろ」
そう言って無造作に四季の肩を叩いて横を通り過ぎていくカツキング。その姿を見て気が抜けたのか、四季はその場に座り込んでしまう。そのまま倒れそうになる体を慌てて駆け寄った詩乃に支えられる。
「お前、なんで其処まで無理するんだよ?」
「ん? お前な……これから先戦いが無いわけないだろ。オレ達が居るのはそう言う世界だ」
「そりゃ、レーディングゲームとかはぐれ悪魔退治の事か? ばぐれ悪魔退治とかは兎も角、部長がレーディングゲームに出れるのは成熟してから、数年後だろ?」
「強い力は厄介事を引き付ける。特に、お前やオレ達の力はな」
「か、考えすぎだぜ」
平和な日本で過ごしてきたがゆえか、現時点の一誠よりも強い仲間が多く居るためか……一誠の言葉には楽観が見て取れる。一応のアドバイス程度はしておいたが、それも無駄だろう。
はっきり言って今の一誠の抱いている仲間へのそれは信頼では無く、単なる甘えだ。寧ろ、これから先どんな形にせよ、仲間よりも強い相手と敵対したのなら……一誠はどうするのかと疑問に思う。仲間が倒される中で最後に立っているのが、自分だけと言う状況で……この程度の無理も必要ないなどと甘えている状況では、
「そう思いたきゃ思っとけば良い」
因縁からは決して逃れられない事は四季はイヤと言うほど知っている。己の持つアウトレイジの書と因縁の有るオラクルの書との関係がそれだ。
側に居る大切な相手の為にも、仲間に甘える事も、現状に妥協する事も四季は出来ない。……だからこそ、一誠のように楽観など出来るわけがない。
「特にお前は何れ『白いドラゴン』とイヤでも戦うことになるだろうに」
「白いドラゴン?」
「お前のところの赤い蜥蜴と一緒にキングにボコられたライバル」
四季の言葉に微妙な空気が流れる。……カツキングにボコられたと言う点で脅威かと疑問に思う一誠だが、キングに脅えているドライグの事を何処か低く見ている様子だ。哀れ、二天龍。
それ以前に……厄介事はオラクルとの因縁や詩乃を狙う敵との戦いだけで十分だ。サーゼクスが嫌いだという以前に、リアスと必要以上に関わるという事は悪魔や三大勢力の問題に巻き込まれると言う事を意味している。
それ以前に、悪魔の問題に巻き込まれたく無いと言うのが一番の理由だ。……本人にしてみれば無自覚な上に、自分の身を守る為とは言え力を暴走させた。その結果、詩乃は純潔の悪魔を一人殺している。
青い巨大な龍……ドラグハートの名の由来と言うべきドラゴン。その力を解放した結果、幼い少女であった当時の彼女でさえ、だ。
アリスの調べではその悪魔は上層部の身内に当たるらしく、今も殺した犯人を探していると言う話だ。幸いにもその悪魔は強力な神器を横取りされない為に身内にも情報を漏らさなかった為、殺した相手が誰か分かっていないらしい。……何処かレイナーレの時と状況が重なってしまうが、それは良いだろう。
要するにリアスを起点に悪魔に関わるという事は詩乃の事を気付かれる危険と背中合わせと言う事なのだ。だからこそ、必要以上にリアス達とは係わり合いになりたくない。……当然ながら、悪魔側の友人達には自分達の事は秘密にして貰っている。
(そもそも、嫌がる相手を無理矢理悪魔にするって奴も居るそうだろう。そいつもな)
その悪魔の眷属も無理矢理悪魔にされた者達だったらしく、全員が主の死後に逃走した物の、はぐれ悪魔として全員討伐されている。人を襲う者がいなかった為に四季は見逃していたが、一誠が眷属になる前にリアス達が討伐した者の中にもそれは含まれている。
一歩間違えればその中に詩乃が居たかもしれない。最悪……
(殺してたかもな……リアス・グレモリー)
兄への嫌悪とかつての仮想敵と大切な人を殺していたかも知れ無いと言う可能性……それが四季がリアスを嫌悪している理由だ。
「? どうしたの?」
「別に。あんたが嫌いだって再認識しただけだ」
そう言って手を振って四季は詩乃とカツキング達を伴って立去っていく。これ以上は用は無いと判断しての事だ。
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「「死ねぇ、五峰ぇ!!!」」
「オラぁ!!!」
一種の朝の登校の時間帯の日課になっている坊主頭と眼鏡の変態二人の撃退をこなす。
「まったく、朝から騒がしいわね」
「朝から何やってんだか、こいつら」
地面に倒れ付している変態二人を見下ろしながら呆れたように呟く四季と詩乃の二人。倒れ付しているのは眼鏡と坊主の元浜と松田、一誠を加えて変態三人組と呼ばれる二人だ。……序でに四季のクラスメイト。
「う、うるせー! クール・薄幸系美少女をものにしたリア充が!」
「しかも、此処最近毎朝一緒に登校しやがって!」
別に詩乃の事を悪く言っているわけではないが……どうも本能的に近づけたくないと思っている二人である。
「それの何処が問題だ? “恋人”で、“同じ屋根の下“で住んでいる訳だし」
そう言って尚も襲い掛かってきそうな変態二人の後頭部を踏みつけてアスファルトとキスさせて、さっさと登校する。
「「ちくしょー、誰か紹介くらいしろー」」
そんな呻き声を挙げている二人に内心ブルースの部下の『デスパペット』でも紹介してやろうかと思う四季だった。
なお、この後アーシアと一緒に登校しているイッセーと遭遇した二人は彼から『漢女』を紹介される事になるのだが……本編には一切関係に無いので省略しておく……。
……これだけは言っておこう、後に二人はこう語っている、と。『魔法少女のアニメを見ても野太い声に強制的に脳内変換される様になった』と。
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