ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories
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ALO編 Running through in Alfheim
Chapter-15 紡ぐ未来のその先へ
Story15-8 迎えに
聖音side
ベッドの上で覚醒した俺は、急いで支度をした。
早く桜華に会いたい……その気持ちが抑えられなかった。
「セイ兄…………」
「……悠海、助けてきたよ、桜華を」
「そうなんだ。よかったね、セイ兄」
「ああ……ってお前なんで泣いてるんだ?」
悠海の目から涙が出ていた。これに驚かずにはいられない。
「……だって…………セイ兄……助けられたんでしょ? よかった……って」
「……そっか…………心配かけてごめんな」
「ううん、大丈夫。私はセイ兄の幸せを願ってる。
はいこれ、お弁当。早く行ってあげなよ」
「サンキュー」
俺は玄関を開けた。
「さ、寒っ…………雪降ってるのか」
「気をつけてね」
「ああ、行ってくる」
俺は自転車にまたがると、病院への道を進んでいった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
どんどん降ってくる雪の中を運転をちょっとでもミスったら転んでしまうほどのスピードで失踪させ病院へと向かう。
「セイ!」
「カズか! 速く行くぞ!」
「ああ!」
途中で和人と合流した俺は自転車をさらに走らせた。雪のおかげで交通量も少なく、ありがたいほどに進みやすかった。信号無視をしたりと危ないこともしたが、そんなのは気にしない。
そのまましばらく走ると高度医療機関である例の病院が見えてきたので駐車場のさらに奥の端に自転車を止めて、和人とともにナトリウム灯がぼんやりと光る道を走る。
ナトリウム灯がぼんやりとしたオレンジ色の光を投げかける夜の駐車場は一見、全くの無人に見える。が、気配がする。
恐ろしいほど広大なパーキングを半分ほど横切り、背の高い濃い色のバンと、白いセダンの間を通り抜けようとした、その時だった。
そのバンの後ろからスッと走り込んできた人影と、和人が衝突しそうになり思わず和人の腕を引いて庇った。
「っ………!」
俺の左手の二の腕から赤い液体が流れでた。
血と痛みは問題ない……いや大有りだけどね。
和人はいまだに状況が理解できずにいるようで、腕から血を流す俺を唖然としながら見ている。
2mほど離れた場所に立つ黒い人影たちを見て、一瞬で理解したようだった。
その人影はどちらも男で、どちらも黒に近い色のスーツに身を包んでいる。
その手には白く細長いものを握っていて、俺の血によりオレンジ色の光を受けて、赤く鈍い色で輝いていた。
サバイバルナイフか……結構大きい。
眉間にシワを寄せ、溜息を吐いた。
男の口元が動き、殆ど囁きのような、嗄れた声が流れる。
「僕らを無視して何2人でごちゃごちゃしてるのさ。
その余裕綽々な態度……ムカつくなぁ……
それに来るのが遅いよ。僕が風邪引いちゃったらどうするんだよ」
「さて……俺たちは君たちを裁かせてもらおう。代償は命。それ以外にはあり得ない」
「お前らの事情なんか知ったことか」
俺が心底うっとおしそうにそう答えると、須郷兄弟は顔を引きつらせて、一歩進み出た。
ナトリウム灯が放つ光が、顔を照らし出す。
兄の方は、数日前に相対した時は丁寧に撫で付けられていた髪も今では激しく乱れている。
尖った顎には無精髭が浮き、ネクタイなど殆ど解けて首にぶら下がっているにすぎない。
そして、弟の方のメンタルフレームの眼鏡の下から俺たちに注がれる、異様な視線。その理由は直ぐに解った。
細い眼は極限まで見開かれ、闇夜の中で散大したのか左の瞳孔が細かく震えている。
しかし、右眼は小さく収縮したままで、何かによる後遺症が残っているようだった。
「酷いことするよねぇ、キリト君。まだ痛覚が消えないよ。
まあ、いい薬が色々あるから、構わないけどさ」
「シャオン君……お前には償ってもらうぞ」
弟が右手をスーツのポケットに突っ込み、カプセルを幾つか掴み出して口に放り込みながらそう呟く。
こりこりと音をさせて咀嚼しながら、須郷弟は更に一歩踏み出した。
「僕たちはアメリカに行くよ。
欲しいっていう企業は山ほどあるからね。
僕たちには今までの実験で蓄積した膨大なデータのバックアップがあるし、あれを使って研究を完成させれば、僕は本物の王に、神に、この現実世界の神になれる。
その前に、幾つか片付けることはあるけどね。
とりあえず、君たちは殺すよ。
お前たちみたいなゲームしか能の無い奴らは、本当の力は何も持っちゃいないんだよ。全てにおいて劣ったクズなんだよ。
なのに僕の、この僕の足を引っ張りやがって…………その罪に対する罰は当然死だ。死以外有り得ない」
表情を変えず、ボソボソと喋り終えると、須郷兄もすたすたと歩み寄ってきた。
「和人、行け。こいつらの相手は俺がやる」
「し、しかし…………!」
「安心しろ。何とかして倒したらお前に追い付く。大したことはない。お前は早く、行け!!」
「くくく……お前の計算は狂うな。俺たちはナイフ持ってるんだぜぇ」
須郷兄は不敵な笑みを浮かべながらナイフを取り出した。
「じゃあ……相手になってやる。和人早く行け」
和人もしぶしぶだが、頷いて病院のエントランスへ走った。
「さあ、こい!」
須郷兄弟が一斉に飛びかかってくる。俺は腰の伸縮可能スティックを2本取り出してナイフを弾く。
「さて……俺を殺れるかな?」
「貴様……殺すっ!!」
兄を回し蹴りで吹き飛ばすと弟のナイフを鉄製スティックで弾いて腹部にスティックの二刀流をぶちこむ。
「かばっ…………」
「そんなもんで俺を殺れると思うなよ。なぁ!」
スティックで滅多うちにすると、二刀流の技でもう一度ぶっ飛ばす。
そして、ナイフを拾う。
「さぁて……とどめだ」
ナイフを須郷弟の首筋に当てる。
「ひぃぃぃぃ…………!!」
へぇ……怖いのか。まぁ、こんなもんでいいだろ。
「よし……こいつをこうして…………がはっ!!」
下をみると、腹部から切っ先が出ていた。須郷弟を動けなくしたあと、兄は俺が弟を倒すのを待っていたかのように攻撃してきたのだ。
「くそ野郎…………うらぁっ!!」
スティックを顔面にぶちこむ。須郷兄はのけぞるも踏みとどまり、俺が放り投げた弟のナイフを投げつける。
「がっ!!」
右膝を掠めて後ろに行く。俺は気にせず顔に回し蹴りを打ち込み、そのままスティックで脇腹へ攻撃を入れた。
「そろそろ終わらさせてもらうぜ…………!!」
片方のスティックを相手の顔面に打ち込んで怯ませ、飛び蹴りともう一方のスティックで須郷兄を倒れこませる。
「ったく……手間かけさせんなっての……がはっ…………」
俺は須郷兄も動けなくすると、そのまま歩いていった。
速く……行かねぇと!!
Story15-8 END
後書き
聖音もちろん大ケガです。そうは問屋が下ろさないのはそういうことです。
とりあえず和人は会わせよう。でも聖音には少し不憫な思いしてもらうつもりです。
さて……ALO編も残り僅かです。皆さま、お付き合いくださいませ。
じゃあ……
和人「次回も、俺たちの物語に!」
聖音「ひとっ走り……付き合えよな♪」
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