| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン 蒼藍の剣閃 The Original Stories

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ALO編 Running through in Alfheim
Chapter-15 紡ぐ未来のその先へ
  Story15-9 ようやく会えた二人

キリトside

セイが引き受けてくれたおかげで、俺はアスナの元へ行くことが出来た。


正面エントランス前まで出てきて、自動ドアの前に立つ。全く開く気配がない。

ガラス越しに中の様子を見ると、メインロビーの照明は落ちているが奥の受付カウンターの灯りが灯っていた。

左奥のスイングドアを見つけてそこから中に入る。



静寂に満ちたロビーのベンチの横を通り抜ると、奥のナースステーションからは談笑する声が洩れていた。届け、と思いつつ俺は口を開いた。

「あの……すみません!」

数秒後、薄いグリーンの制服を来た女性看護師が二人現れた。

「どうしたんですか?」

「駐車場で、ナイフを持った二人組の男に襲われました。今も友達が戦ってます」

二人の顔に緊張が走った。年配の看護師がカウンター内の機械を操作し、細いマイクに顔を寄せる。

「警備員、至急一階ナースステーションまで来てください」


巡回中のガードマンが近くにいたらしく、紺色の制服を来た男がすぐに現れた。看護師の説明を聞くとガードマンの顔も厳しくなった。小さい通信機に呼びかけ、ガードマンと二人の看護師はエントランスへと向かった。


俺は誰もいないのを確認すると、カウンター内のパスカードを掴み取ってエレベーターへと向かう。

エレベーターは一階に停止しており、ボタンを押すとすぐに開いた。病院なので加速は緩やかだが、その時間が永遠にも感じられる。


エレベーターが停止し、ドアが開くと、転がり出るように飛び出してアスナの部屋への数十メートルを歩き出す。

長い時間……それこそ永遠にも感じられる時間と距離……必死に進むと、正面に白いドアが見えた。


夕焼けに包まれた仮想世界の終焉から、現実に帰還してからも……再び別の仮想世界に飛び込んでからも……俺はずっとアスナを探していた。

ようやく……会える。その時が来る。俺の旅路はここで完結する。

残りの距離が縮まると共に、俺の胸に詰まる様々な感情が恐ろしい勢いで高まっていく。呼吸が速くなる。視界が白く染まる。

でも……ここで倒れるわけにはいかない。今は……アイツのためにも歩くだけだ。

白いドアとあと数センチ……数ミリ……この向こうにアスナが…………

ポケットからパスカードを取り出してスライドさせようとするが、汗で滑り落ちる。

あわてて拾い、再びパスカードを持ってメタルプレートのスリットに差し込み、一気に滑らせる。

インジケータの色が変わり、モーター音と共にドアが開いた。ふわりと花の香りが流れ出した。

室内の照明は落ちている。窓から差し込む雪明かりがほのかに白く光っている。中央は大きなカーテンで仕切られており、その向こうにジェルベッドがある。

動けない……あと一歩が出ない。

『ほら……待ってるよ』

そっと肩を押す感触。誰のものなのか分からないが、俺はさらに足を進めて、カーテンを開ける。

「ああ……」

純白のドレスにも似通った診察衣を纏った少女が上体を起こしてこちらを見ている。両手の中に……ナーヴギアがあった。

「アスナ…………」

俺は音にならない声で呼び掛けた。少女は花の香りに満ちた空気を揺らしてこちらに振り向いた。夢から覚めたばかりの瞳はまっすぐにこちらを見ている。

「キリト君……」

初めて聴くその声は……あのときよりもすごく素晴らしい。何倍も……何十倍も…………

アスナの手が俺に向けて差し伸べられた。それだけで力を使うのか、わずかに震えていた。俺はそっと……その手を取った。不意に脚の力が抜け、ベッドの端に体を預けた。

「最後の……最後の戦いが、さっき……終わったんだ…………終わったんだよ…………!」

言い終わると同時に涙が溢れ出す。雫が頬を伝う。

「ごめんね……まだちゃんと音が聞こえないの。でも……解るよ、キリト君の言葉。

終わったんだね……ようやく……ようやく君に会えた」

アスナの頬にも涙が伝い、零れ落ちた。その瞳で俺を見つめ、言葉を紡ぎ出そうとする。

「はじめまして、結城明日奈です。ただいま……キリト君」

「桐ヶ谷和人です。お帰り……アスナ」

どちらともなく顔が近づき、唇が触れ合った。軽く……もう一度……強く。

仮想世界で出会った本物の心は、時を越えて、今ここで再び巡り合った。

背に二本の剣を背負った、黒コートの少年。
腰に銀の細剣を吊った、白地に赤の騎士装の少女。

二人の心が結ばれたのを見届けると……手を繋いで、遠ざかっていった。















Story15-9 END 
 

 
後書き
キリトはついに出会えました。長い長い旅路はここで一度完結します。
でも終わらない物語……彼らの物語は始まったばかりです。

さてさて……キリトは出会えたわけですが手負いのシャオンはどうなったのか……次回衝撃の展開!

Don't miss it!

ではでは
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧