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シャンタウゼー

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4部分:第四章


第四章

「貴方の息吹を感じると。何か身体が」
「よくなってきたのかい?」
「はい」
 こくりと頷いて答える。
「どうしてでしょう。これは」
「どうして・・・・・・それは」
 恋人の言葉を聞いて考える。それはすぐに答えが出た。
「そうか」
 納得がいき顔をあげる。
「僕の力のせいだ」
「貴方の!?」
「僕は。南風の神だから」
 暖かい風を司る神だ。つまり春の暖かさを皆に送るのが彼の仕事なのだ。親である全ての風を司る神から与えられた尊い力である。
「それなのか。まさか」
「では貴方の力で私は」
「うん、ひょっとすると」
 彼はまだ困惑した顔だが述べた。
「元に戻れるかもしれない。じゃあ」
「試して下さい」
 顔を上げてシャンタウゼーに言う。全てを彼に任せる顔であった。
「是非。そうすれば私は」
「うん。きっと元に戻れる」
「貴方と一緒にいられます」
 二人は言い合った。お互いの顔をじっと見詰め合いながら。
「ではやるか」
 シャンタウゼーは自分の力を使った。自分の南風の力を。野原に暖かい風が吹く。そうするとポイゾナの灰色になってしまっていた髪が見る間に元の黄色になっていった。
「あ・・・・・・」
「戻った・・・・・・」
 二人はその髪を見て言った。本当に戻ったのだった。
「シャンタウゼー様、私は」
「上手くいった。いや」
 彼は気付いた。どうしてポイゾナの髪が元に戻ったのかを。今気付いたのだった。
「これは春の力だ」
「春の?」
「そうだ。私の力」
 まだ吹き続けている南風を身体で感じながら言う。自分の力を。
「それがそなたを元に戻したのだ」
「どういうことですか?」
「タンポポだったな」
 シャンタウゼーはポイゾナに問うた。
「そなたの花は」
「そうです。この花達こそが私自身」
 ポイゾナの周りにタンポポが戻っていた。黄色い彼女自身が。
「そうなのですね。だからこそ」
「タンポポは春の花」
 シャンタウゼーはまた言った。
「だから。春の風を司る私の手によって」
「戻るものだったのですね」
「そうだ」
 シャンタウゼーはにこりと笑っていた。そうしてポイゾナの顔を見ていた。
「だから私は」
「私は?」
「そなたにずっと側にいて欲しい」
 今自分の心を素直に述べた。心の中にある偽らざる本音を。
「いいか?春と共に」
「勿論です」
 ポイゾナはシャンタウゼーの顔を見て答えた。
「私は春に生きる者。ですから」
「永遠に」
「二人で」
 二人は抱き合う。そうして心から結ばれた。こうしてタンポポは春に生きるようになり暖かい南風を受けて静かに咲くようになったのだった。
 
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