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戦国異伝

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第二百六話 陥ちぬ城その四

「それならばな」
「その後で」
「戦が終われば」
「楽しく飲もうぞ」
 家康とそうすることをだ、氏規は楽しみにしていた。
 そのうえで今は城の外を警戒しつつも籠城を続けた。韮山城は旧友達が対峙しながらも刃を交えることはなかった。
 しかし忍城は違っていた、石田は城に向かう前からだった。
 共に兵を率いている大谷や島達に意気込んで言っていた。
「必ずじゃ」
「忍城とか」
「攻め落とすというのですな」
「そうじゃ」
 強い声で言った言葉だ。
「無論我等の勧めに従い降ればよし」
 それなら、というのだ。石田も決して刃を交えることを第一とはしていない。
「戦わずして勝つのならな」
「それでよいのじゃな」
「それで済めばな」
 大谷にも言うのだった。
「それに越したことはない」
「しかしじゃな」
「降らぬのなら」
 その時はというのだ。
「容赦せずにじゃ」
「攻めるのじゃな」
「うむ、攻め落とす」
 こう強い声で言うのだった。
「必ずな」
「わしは勧めぬ」 
 城攻めをとだ、大谷は石田に顔を向けて言った。彼等は忍城に向かう途中馬に乗っており馬上で話をしている。
「あの城を攻めることはな」
「またそう言うのか」
「確かにあの城は平城でな」
「比較的攻めやすい城じゃな」
「そうじゃ、しかしじゃ」
 それでもだというのだった、大谷は。
「それは相手もわかっておる」
「守る方もか」
「そうじゃ、むしろ攻める我等よりもな」
 守る彼等の方がというのだ。
「わかっておる」
「だからか」
「あの城を攻めることは用意ではない」
「それがしもそう思いまする」
 島も石田に言って来た。
「あの城はです」
「攻めるに難しか」
「はい」
「平城ではあるがか」
「平城であろうとも守る兵達が強ければ」
 それで、というのだ。
「その城は堅城となります」
「だからか」
「あの城は攻めるよりもです」
 若し降らなかった時はというのだ、彼等の誘いに応じて。
「囲みです」
「そしてか」
「北条が降るまで待つべきです」
 それがよいとだ、島も言うのだった。
「迂闊に攻められる城ではありませぬ」
「ではやはり」
「はい、あの城は囲むだけにすべきです」
 攻めずに、というのだ。
「それがよいかと」
「しかしわしはじゃ」
 性急で回り道を嫌うのが石田の気質だ、それで二人に言うのだった。
「ここはな」
「攻めるべきというのじゃな」
「降らぬのならし方がない」
「力攻めにするのか」
「攻め方まではまだ考えておらぬが」
 それでも、というのだ。 
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