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極短編集

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短編53「秘密の生活」

 僕の彼女が事故で亡くなった。冬の散歩道。荷馬車を引いた馬が急に暴れだし、彼女をはねた。即死だった。その後、遺体を見た。とっても綺麗だった。

「目を覚ませよ!」

 僕は泣いた。目の前には眠っている少女。決して現実を受け入れなれなかった。だから僕は……

 彼女を生き返らせる事にした。

◇◇◇

 葬儀が終わったあと、遺体が埋められるのを待って、深夜に行動した。

ザックザック、ザックザック

 掘り起こすと……

 眠ったままの彼女がいた。
 掘り起こした彼女を、僕は親父のトラックに乗せると家に帰った。部屋に戻ると、彼女の心臓の所に、ビリビリ石で作った(くい)を打ち込んだ。それからまたトラック乗せると雷岬(かみなりみさき)へと向かった。
 岬に着くと、そこは激しい雨と雷だった。僕はトラックから彼女を降ろすと、持って来た鉄パイプを置いて、家から持ってきた延長コードと彼女をつないだ。そして、落雷を待った。

ピカッ!ゴロゴロゴロ~

 その瞬間。

ビクンッ!

 と、彼女の身体が反応した。すぐに駆け寄り、装置を外す。彼女を抱きかかえるとトラックの助手席へ運んだ。そして家へと帰った。

ボスッ

 と、自分のベッドへ少女をおろす。胸を見ると息をしているのが分かった。しばらく待つと……

「うっ、う~ん」

 彼女は寝返りをし、そして目を覚ました。

「おはよう」

 僕は声をかけた。すると彼女はビックリした顔で僕を見た。

「私、死んだはず!?」

 聞くと彼女は、自分が馬にはねられたあと、身体から抜け出ていて、僕が見に来た事や葬儀の事を見ていたそうだ。埋められてからは、仕方がないので棺の中にもどり、眠っていたと言っていた。

「私、生き返ったんだよね?」

「そうだよ。でも、誰にも言ってないんだ。この事」

 親達には、内緒でした事について、その後はどうすればよいのか考えていなかった。なので、隠れての生活が始まった。

「息はしてるけど、お腹は減らないんだね」

 僕は彼女に言った。

「うん、そうなの。お腹も減らないし、寒くも暑くもないわ。眠くもないのよ」

 と、彼女は言った。親の目を盗んでの彼女との生活は楽しかった。でも、春が来て限界を告げた。

「私の身体。多分、腐ってきてるの……」

 彼女の身体からは、腐臭がしてきていた。僕らは、この先の結末に怖くなった。

「もうすぐ本格的な春ね?そうしたらきっと、私の体は腐ってなくなるわ。怖いよ~!また、お別れなんてやだよ~!!」

 と、彼女は言った。

『なんでこんな事をしたんだろう!?』

 僕は悲しくて悲しくてたまらなかった。そしてとうとう……

「お前、とんでもない事してたんだな!」

 親父とお袋に見つかってしまった。

◇◇◇

「ずっと寒い中でいられるから大丈夫!」

 彼女が今やっている仕事は、冷凍庫の管理だった。
 親父とお袋に見つかったあと、お互いの親が話し合い、彼女の生活の事を考えた。事情を懇意にしている業者に話し、夏場はずっと、職場の冷凍庫で過ごせるようになった。巨大な冷凍庫の中には、彼女の部屋も作られた。そうそう、身体の動きが良くなくなると、雷に打たれに岬に行った。僕らはそうやって、毎日を過ごしていった。そして……

「おめでとう!!」

 結婚式も冷蔵庫の中で行った。

「病める時も健やかなる時も、この者を愛し……」

 賛美歌が、巨大冷凍庫中に響き渡った。みんなが祝福してくれる中、僕らは夫婦になった。そうして、さらに幸せな毎日が始まったのだった。

 でも……この所、不安がひとつ生まれた。

「ねえ、子どもが出来たみたい」

「やったね!」

 と、喜んだものの、もし子どもが生まれたら……



 それは、生きているのだろうか?死んでいるのだろうか?

おしまい


 
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