マニトー
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3部分:第三章
第三章
「ただな。そいつがな」
「そいつが?」
「どうかしたのか」
「ネイティブでな」
所謂インディアンである。この国の原住民である。
「言葉がわかりにくいんだがな」
「英語は喋れるんだな」
「それはいけるな」
二人はとりあえず言葉がわかりにくいのは無視した。そうしてそのうえでまたマスターに対して問うた。英語が喋れるかどうかをだ。
「それか英語読めるか?」
「どっちだ?」
「一応話せるし読めるさ」
マスターはどちらもいけるのだという。
「しかしな。わかりにくいんだよ、これが」
「わかりにくいならいいさ」
「意味が通るんならな」
二人はそれでいいというのだった。それについてはだった。
「それでいい」
「じゃあ紹介してくれ」
「わかったよ、じゃあここに行ってくれ」
さっとペンとメモ用紙を出して書いてだった。それを差し出してきた。
そこには住所があった。二人はそのブラッディマリーを飲み終えるとそこに向かった。そこはスラムの裏手だった。そこに入ったのである。
スラムは寂れていた。そして荒れた雰囲気に満ちていた。二人はその中を進んでいく。やはり誰もが彼等を見てすぐに逃げていく。
しかし二人はここでもそうしたことを意に介さずその書かれている住所に向かう。辿り着いたそこはある廃墟に近いビルの二階だった。そこはマンションだった。
そのマンションの二階の扉をノックする。すると非常に訛りの強い言葉が返って来た。
「誰じゃ?」
「デトロイト市警の刑事だ」
「いいか」
こう扉の向こうのその訛りの強い声の主に告げる。扉の周りはあちこちひび割れていてしかも階段もその手すりもぼろぼろだった。その中に今いるのだった。
そしてそこにいてだ。あらためて告げたのである。
「話を聞きたい」
「是非共だ」
「あのことかのう」
よく聞けば老婆の声だった。かなり皺がれたものだった。
「やはり」
「おい、今の言葉はだ」
「まさかあんた」
「中に入るかい?」
二人に対しての言葉になっていた。
「それだったら」
「こっちからそうさせてもらう」
「その為に来たからな」
グリーンとブルーはすぐに応えた。
「むしろだ。無理にでも話を聞かせてもらう」
「いいな」
「わかっておる。それではじゃ」
扉が開いた。そうしてだった。
二人はその部屋に案内された。するとそこには赤い顔で彫の浅い顔の黒い髪の老婆がいた。その服はみすぼらしく背中は曲がっていた。その彼女だった。
「さて、わしのことは聞いておるようじゃな」
「インディアンの婆さんだな」
グリーンがその老婆をじろりと見ながら言った。
「そうだったな」
「その通りじゃ。名前はマゾロカという。姓は適当なものでな」
「適当?」
「わしの部族には名前だけがあった」
それだけだというのだ。
「姓はあんた達に適当に貰ったものじゃ」
「適当か」
「そうじゃ、適当じゃ」
こうブルーに返すのだった。
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