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マニトー

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4部分:第四章


第四章

「わしの姓は確かリーとかいったな」
「リー婆さんか」
「まあマゾロカでもリーでもどっちでもよい」
 老婆は呼ばれ方についてはどうでもいいというのだった。
「それではじゃ。まあ話じゃな」
「それだ、話がわかっているならだ」
「聞かせてもらうからな」
 二人は少し強引に言った。そしてだった。
 老婆が勧めた席にそれぞれ座って話を聞くのだった。勧められてそれに応えたのは席だけだった。出されたコーヒーには手をつけようとはしなかった。
 老婆はそれを見てだ。表情を変えずに言ってきた。
「コーヒーは飲まんのか」
「食い物や飲み物は受け取らん」
「そうしたものはな」
「では御礼とかもか」
「それもいい」
「そうしたものは絶対に受け取らないことにしている」
 厳しい声で言う二人だった。
「そういうことだ」
「わかったな」
「では後でわしが飲むとしよう。それでじゃ」
 老婆は二人のその話を聞いてだ。そのうえで言うのだった。
「話はあれじゃな。最近起こっている事件のことじゃな」
「誰もが自分が一番嫌いなものに襲われている」
「そのことだ」
 まさにそれだった。そのことについて問うののだった。
「何だ、あれは」
「知っている様だが」
「マニトーじゃ」
 それだと。老婆は言った。
「あれはマニトーじゃな」
「マニトー!?」
「何だそれは」
 二人の刑事はそのマニトーという言葉を聞いてだ。怪訝な顔になって問い返した。
「妖怪か、それとも悪魔か」
「何だ?妖精か?」
「強いて言うなら悪霊じゃな」
 それだと言う老婆だった。
「言うならな」
「悪霊か」
「それなのか」
「そうじゃ、それじゃな」
 二人に対して話を続ける。
「わし等の中に伝わる悪霊でじゃ。人の心を読む」
「そしてか」
「そして人の心を読んでか」
「それで襲うのじゃよ」
 こう話すのだった。
「酷いものになるとそれで殺すこともある」
「殺すだと!?」
「それは許せんな」
 殺しという言葉が出るとだった。二人の顔色が一変した。只でさえ怖いその二つの顔がだ。さらに恐ろしいものになってしまったのである。
「だとすれば余計にだ」
「すぐに捕まえるぞ」
「ふむ。左様か」
「当たり前だ、俺達は刑事だ」
「悪党を捕まえるのが仕事だ」
 怒った声で返したのだった。
「それもだ」
「だからだ、いいな」
「そうか。刑事だったのか」
 老婆は話を聞いてまた頷くのだった。
「そういえばそう見えんこともないのう」
「他の何に見える?」
「俺達は刑事以外の何に見える」
「最初はタチの悪い探偵かと思ったがのう」
 そうだというのだった。老婆の顔はここでは少し笑っていた。
「違ったのじゃな」
「当たり前だ、俺達は刑事だ」
「探偵とはまた違う」
 二人は胸を張って言うのだった。
 
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