ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~
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神風と流星
Chapter2:龍の帰還
Data.24 退屈で人は死ぬ
俺とシズクがここ、赤黒龍の渓谷に来て早三日。
今日も今日とて特にやることも無い俺達は、最初に落ちてきた大きな空間の隣の小部屋(暇つぶしに探索してみたら見つけた)で、だらーっと過ごしていた。
集めてきた干草で作った粗末なベッドもどきに横になっていると、シズクが気だるそうに声を掛けてくる。
「……ねぇルリくん。しりとりでもしない?」
「いいぞー」
「じゃあ『しりとり』の『り』で『りんご』」
「『拷問』」
「……」
しりとり終了。開始から僅か十秒後のことだった。
「ひーまー!やること無さ過ぎて溶けそうなんだけど!」
「剣でも振ってろ」
「もう飽きたよ!相手がいるならともかく、延々素振りなんてやっても全然面白くないよ!」
そりゃそうだ。俺だってそんな反復ばっかやってたらすぐに飽きる。持ってきたナイフで的当てやるわけにもいかないしな。
「ここから出る方法とかないのー?」
「ない。三日前にも言ったろ?ここは本来クエスト専用の特別なエリアなんだって。だからクエストを受けてない今は出入りが出来ない……はずなんだよ。普通は」
「でもあたしたち入れたよね。出れないけど」
「そうなんだよなー」
そこが疑問なのだ。ただのバグだったりしたらずっとここから出られない可能性もある。が、もしこの状況が意図的に設定されたものなら何らかのアクションがあるはず。
「せめてあの時のドラゴンが出てきてくれればなー。暇つぶしになるのに」
「暇をつぶす前にお前が潰されるぞ」
道化龍は言わずもがな、他の四龍ですら今の状態じゃ勝てるかどうか怪しい。あの時は全力で準備したから何とかなったのだ。それに、クエストを受けていない今の状況で前回と同じスペックで来てくれるかどうかという問題も存在する。
「はぁ~仕方ない。何か面白そうなものないか探してくるね~」
「おー。見つけたら俺にも教えてくれ」
「あいあーい――――」
シズクがおどけて手を振りながら部屋から出ようとドアに手をかけた瞬間。
ドスンッ。
何やら重いものが落ちてきた音が聞こえた。それも、すぐ隣の空間から。
「ルリくん」
「分かってる」
この場合の落ちてきたものにはいくつかの可能性がある。まず一つ目は俺たちと同じように罠に引っ掛かってきて落ちてきたプレイヤー。もしくは罠を警戒したプレイヤーが放ったアイテム。そして最後の一つは……なんらかの理由で出現した、モンスター。
「どうする?」
「どうする……って」
プレイヤーなら、まぁ会わないわけにはいかないだろう。例え相手が俺のことを蛇蝎の如く嫌っている(であろう)攻略組の奴らだったとしても助けない必要性は無い。他の一般プレイヤーならなおさらだ。
アイテムなら割とどうでもいいが、もしかしたらこの状況を打破できるものかもしれない。違ったところで暇つぶし程度にはなる可能性は無きにしも非ず。
で、モンスターだった場合は……
「……♪」
さっきからニヤけそうになるのを必死に堪えようとしてるけど全然堪え切れてない戦闘狂が大喜びだ。まさに狂喜乱舞というヤツだ。
というわけで最初から選択肢なんて一つしかなかったわけで。
「出よう」
「さっすがルリくん!あたしも全面的に賛成D☆A☆Z☆E」
「……その☆うざいからやめろ」
「あうあっ!」
脳天にダメージ認定されない程度の強さで拳骨を入れてから、俺はドアを開けた。するとそこにいたのは――――
「……」
敷き詰められた干草に突き刺さった、数人分の甲冑らしきものを纏っているであろうプレイヤーの下半身だった。
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