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遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜

作者:ざびー
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エピソード31 〜盗まれたデッキ 後編〜

「おーおー、やってるね〜。」

紫苑とラー・イエローの子ーー神楽坂だったかな?が決闘を繰り広げている崖から少し離れた岩場の隙間からコソコソとしながら観戦をしている。
ちなみに現在の戦況は

神楽坂君の残りライフは3300で、手札は残り一枚。そして、フィールドにはブラマジとブラマジガールの師弟コンビだ。
それに対する我が弟、紫苑はライフが6100で、手札は0枚。フィールドには『バトル・フェーダー』のみとなっている。

どちらかというと神楽坂君の方が有利なのだが、ここからどうなっていくか楽しみだ。

「魔法カード『天よりの宝札』を発動!」

天から光が差し、互いの頭上から六枚カードが降ってくるという演出がされる。まさしく天よりの宝札と言ったところだ。これにより、二人のハンドアドは並び、神楽坂君に至ってはメインフェイズ2が残されているため、もう少し動けるようになる……のだが。

「いや、それは悪手だよ。」

いくら布陣を整えられるからと言っても、紫苑にはバトルフェーダーのみ。その状況からブラマジコンビを倒せる確率はそうそう高くない。ここはどちらかというと今は発動させずに我慢する所だ。

ほら、同じ事を思ったのか紫苑も密かに笑ってるし……。

「俺は『ブラックマジシャン』と『ブラック・マジシャン・ガール』の二体を生贄に『黒の魔法神官』を特殊召喚する!」

『黒の魔法神官』
☆9 ATK3200

ブラマジコンビがありったけの魔力を使用し、二人の間に深紫に発光する魔法陣が浮かび上がり、黒の装束を着た魔導師が現れる。
ブラック・マジシャンが年老いた姿なのだろうか。姿や佇まいがよく似ている。だが、体に纏う魔力は衰えることなく、むしろ増しているような気がする。

「てか、『黒の魔法神官』ってどんな効果だっけ?」

「黒の魔法神官が存在する限り、罠カードの発動を無効にし、破壊できる!」

「なるほどね。」

知ってても知らなくてもあらかじめ効果の説明をしておくのは、マナー。神楽坂君もそこのところはちゃんとわきまえてるのかしっかりと説明をしてくれる。

たまにいるんだよ、攻撃が決まったら、「このカードを発動していた。」とか、後出しじゃんけんみたく効果を発動してきてドヤ顏をかましてくる輩が。観客は盛り上がるからいいのだが、こっちとしては不愉快極まりないので思わずオーバーキルしてしまうのだ。

おっと、思考が逸れた。『黒の魔法神官』の効果は罠カードの発動と効果を無効にできる『起動』効果。つまり、『王宮のお触れ』のように無闇矢鱈と罠カードの効果を無効にするわけではなく、自分にとって都合の悪い効果だけを止められる。つまり、紫苑のみ罠カードが使えない、という状況になったわけだ。

「まぁ、そんなの対して関係ないだろうね。」

紫苑が今使っているのは、いつもの『ナチュル』ではなく、『冥界軸最上級多用』。動きは『冥界の宝札』をドローエンジンとし、『終焉の焔』や『迷える仔羊』などで、生贄となるトークンを生み出したり、ソリティア誘発てんとう虫(レベル・スティーラー)を使い回したり、『帝王の烈旋』や『クロスソウル』で相手モンスターを餌食にしたりなどして、最上級モンスターを下級モンスターの如くポンポン出すデッキだ。
それこそ、このデッキにとって罠カードの制限など対して意味はなさない。それより一番止めておきたいのは、『冥界の宝札』の発動と『レベル・スティーラー』を墓地に逝かせない事なのだが……

「わかってるのかね?」

遠くからでは正確にはわからないが、ブラマジの派生モンスターを召喚し、「強いぞ、カッコイイーぞ!」とか思って舞い上がってるンじゃないのかね?
若干だがにやけてるのが見て取れる。

「永続魔法『凡骨の意地』を発動!そして、カードを二枚伏せてターンエンドだ。」

「俺のターンドロー!」

さて、紫苑のターンが回ってきたが紫苑は『黒の魔法神官』をどうやって対処するつもりなのだろうか。紫苑のデッキの特性上、最上級モンスターを毎ターン出せる代わりに攻撃力3000を越えられると戦闘で破壊するのに少々手こずる。まぁ、手段が限られるだけだが。
例えば、バルバロスの三体生贄召喚によるブッパ、や相手モンスターを生贄にできるカードでコストにしたりなどが有力候補だ。

「『帝王の烈旋』発動!」

「……ほら、やっぱり。」

『帝王の烈旋』はこのターン、相手モンスター一体を生贄にできる魔法カード。対象を取らない点といい、バトルフェイズをスキップしない点といい、完全に『クロスソウル』の役目が奪われている。

「『黒の魔法神官』と『バトルフェーダー』を生贄にし、『堕天使アスモディウス』を召喚!」

黒の魔法神官とバトルフェーダーが次元の裂け目へと吸い込まれ、入れ替わりで黒い翼を生やした天使が姿を現す。
神官呆気ない。もっと仕事しろよ……。

『堕天使アスモディウス』
☆8 ATK3000

「バトル!アスモディウスでダイレクトアタック!ヘルパレード!」

「させるか!リバースカードオープン、『攻撃の無力化』!」

アスモディウスの攻撃は二人の間へと現れた渦に阻まれ、中断させられる。紫苑は「まぁ、このくらいやってくれないと。」みたいな表情をすると、カードを二枚伏せ、ターンエンドする。

「俺のターン、ドロー!よし、俺がドローしたのは『磁石の戦士 α』だ!『凡骨の意地』の効果によって、ドローフェイズ時に通常モンスターをドローした時、そのカードを見せる事によりさらにドローできる。よって、一枚ドロー。そして、ドローしたカードは『磁石の戦士 γ』だ。よってドロー!ドローカードは『クィーンズ・ナイト』!ドロー。っち、……。」

凡骨の意地による連続ドローによって手札を一気に三枚から、六枚へと増やす。しかも、その中に『磁石の戦士』が二種類もいるとか洒落にならない。

「リバースカードオープン、『強欲な甕』!効果で一枚ドロー!ドローしたカードは、『磁石の戦士 β』だ。よって、ドロー。『
エルフの剣士』を見せ、一枚ドロー!。これで終わりか。」

さらに追加で三枚のドローをする神楽坂。

「おいおい、待て待て……。『磁石の戦士』がドローフェイズだけで揃うとか洒落になんないでしょ。」

思わず神楽坂君のドロー力に呻き声をあげてしまう。

「俺は手札の磁石の戦士α、β、γを生贄に『磁石の戦士 マグネット・バルキリオン』を特殊召喚する!」

磁石の戦士達が変形、合体し、最後に背中から鋼鉄の翼を生やす。中二男子なら誰もが喜びそうな演出に「おぉ、カッケー!」と離れた所にいる私の場所まで歓声が聞こえてくる。

『磁石の戦士 マグネット・バルキリオン』
☆8 ATK3500

「『クィーンズ・ナイト』を召喚し、バトルだ!マグネット・バルキリオンでアスモディウスを攻撃!電磁剣!」

「くうっ…。だけど、アスモディウスは破壊された時、アスモトークンとディウストークンの二体を特殊召喚する!」

紫苑:6100→5600

アスモディウスが消えるのと入れ替わりで赤と青をした天使が二体現れる。
赤い方が戦闘破壊耐性を持つディウストークン、青い方が効果破壊耐性を持つアスモトークンだ。

『アスモトークン』
ATK1800
『ディウストークン』
DEF1200

「クィーンズ・ナイトの攻撃力より上だと!?」

クィーンズ・ナイトの攻撃力は1500なのに対し、戦闘破壊が可能な方のアスモトークンは攻撃力1800。紫苑のライフを大きく削ろうと思っただろうが、むしろ的を作ってしまう事になってしまう。記憶力が極めて良いらしい彼なら、恐らくしないミスだろうが、攻め急いだか?


「カードを一枚伏せ、エンドだ。」

少々悔しそうにしながら、エンド宣言をする神楽坂君。

「俺のターン、ドロー。このスタンバイフェイズ時に『黄金の封印櫃』によって除外されている『冥界の宝札』が手札に加わる。」

地面から黄金色の櫃が浮上し、蓋が開けられると中に入っていたカードが紫苑の手札へと加わる。

「まずは、『冥界の宝札』を発動。そして、二体のトークンを生贄に『堕天使ディザイア』を召喚する。」

黒い翼を生やした堕天使が降り立つ。その黒い天使が象徴するのは、『欲望』。
ディザイアは特殊召喚ができない代わりに、天使族一体で生贄召喚が行えるモンスターだが、今回は『冥界の宝札』のドロー効果を発動させる為にわざわざ二体を生贄にしたらしい、

『堕天使ディザイア』
☆10 ATK3000

「また最上級モンスター……。だが、そのモンスターじゃ、マグネット・バルキリオンは倒せない!」

「それは、どうかな。」

「なにっ!?」

紫苑の強げな発言に訝しげな視線を送る神楽坂。

「ディザイアの効果発動!攻撃力を1000ポイント下げる事により、相手モンスター一体を墓地に送る!」

ディザイアから放たれた闇があっという間にマグネット・バルキリオンを覆い包み、消滅させる。あまりの呆気なさに神楽坂君は目を大きく見開き驚いてしまっている。

「さて、バトルだ。ディザイアでクィーンズ・ナイトを攻撃!」

「くぅ……」

ディザイアの攻撃によって、神楽坂君のライフを2800まで削る。ダメージ量は微々たるものだが、残りライフ3000をきったということは、最上級モンスターの直接攻撃を受けたら、即ゲームオーバーだ。気が抜けない。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド。」


「俺のターン、ドロー!『ブラックホール』発動!」

「『魔宮の賄賂』発動!『ブラックホール』を無効にする!」

「ちっ……効果で一枚ドローす……るっ!?」

商人の格好をしたゴブリンが現れ、神楽坂くんの『ブラックホール』をひったくり代わりにカードを一枚渡す。
手札へと加わった直後、身の毛もよだつ咆哮が響き渡る。

……まさか?

「現れよ、冥界をすべし龍王よ!『冥界龍 ヴァンダルギオン』!!」

出てきたのは、強大なドラゴンーーヴァンダルギオン。召喚条件がカウンター罠で相手のカードを無効にする事と変わっているが効果は強力。

「相手の魔法カードの効果を無効にしたことによって、1500のダメージを与える!冥王咆哮!」

「っ!?ぐわぁぁぁぁぁ!」

ヴァンダルギオンの攻撃が直撃し、神楽坂くんのライフを1300、と半分以上減らす。

紫苑除きいきなり現れた悪魔のごときモンスターに驚き、翔くんにいたってはビクビクと震えている。
そりゃそうだろう。パーミッションされたと思ったら、最上級モンスターが出張してきてしかも強力な効果持ちとか笑えない。もっとも今の神楽坂くんはまだ諦めてない様子だが。

「俺は『天使の施し』を発動!カードを3枚ドローし、二枚捨てる。」

ここでドローカードか。まさかさっきのドローで引いた?

神楽坂くんはドローした三枚のうち一枚を見ると驚愕とも、歓喜とも取れる表情を露わにする。

「いくぞ、俺は墓地の光属性モンスター、『クィーンズ・ナイト』と闇属性モンスター、『黒の魔法神官』を除外し、現れよ!混沌の力得し、歴戦の英雄よ!『カオス・ソルジャー 開闢の使者』!!」

「っ!?」

遊戯さんの最強のモンスター、カオスソルジャーが新たな力を得て生まれ変わった姿。今まで召喚されてきたどのモンスターよりも強い、圧倒的な強者のオーラを身に纏っている。
さすがに紫苑もヤバイと思ってるのか表情に余り余裕がない。

「装備魔法『稲妻の剣』をカオスソルジャーに装備する。
バトル!カオスソルジャー 開闢の使者でヴァンダルギオンを攻撃!開闢双破斬!」

「くっ……」

「さらにカオスソルジャー 開闢の使者の効果発動!さらにもう一度攻撃することができる!やれ、カオスソルジャー。ディザイアを斬り裂け!時空突刃 開闢双破斬!」

『カオスソルジャー 開闢の使者』
☆8 ATK3000→3800

雷を纏わせた大剣でヴァンダルギオンを切り裂き、返す刃でディザイアを一刀両断し、爆発四散。
紫苑の場に並んでいたモンスター達が瞬く間に破壊され、残りライフは2800と大きく開いているも戦況をひっくり返され驚きを露わにしている。

「ターンエンドだ。」

既に何度目かわからない紫苑のターン。恐らくこのターンで終わらせるつもりなのだろう。目の前へと立ちふさがるカオス・ソルジャーを鋭く睨みつけている。

「俺の、ターン、ドロー!」

ドローカードを確認した紫苑は口角をあげ、

「ラストターンだ!」

「「「「なにっ!?」」」」

あろうことか、このターンで終わらせる宣言をする。しかし、神楽坂くんの場には、『稲妻の剣』を装備し、パワーアップしている『カオスソルジャー開闢の使者』が居る。

紫苑は今度はどうやってあのモンスターを倒してくれるのかね?

「いくぞ、手札から『フォトン・スラッシャー』を特殊召喚!こいつは自分の場にモンスターが存在しないとき、特殊召喚できる。
さらに『死者蘇生』発動!蘇れ、バルバロス!」

「っ!?一気にモンスターが二体!だが、カオスソルジャーには勝てないっす。」

翔の落胆したような声が聞こえてくる。だがね、翔くん、あいつらはただの布石。本命は次だよ。

「バルバロスとスラッシャーを供物とし君臨せよ!冷たき暴君、『The tyrant NEPTUNE』!!」

「なっ!?」

二体のモンスターを喰らい、強靭な肉体にワニのような頭部をしたモンスターが君臨する。そして、両手には暴君に相応しい大鎌が握られ、爛々と光る両眼で獲物を睨み据えるている。

「ぷ、プラネットシリーズ……!?」

場に君臨する暴君を目にした三沢が声をあげる。

三沢君が口にしたプラネットシリーズは惑星の力を得たモンスター。私の持つ『The splendid VENUS』然り、紫苑が召喚した『The tyrant NEPTUNE』然り強力無比な効果を持ったモンスター群だ。

そして、NEPTUNEの効果は生贄にしたモンスターの元々の攻撃力、守備力の数値分アップし、さらには生贄としたモンスター一体の名前と効果を奪い去る、というまさしく暴力のままに権力を振りかざす暴君そのものだ。

「NEPTUNEの攻撃力は生贄としたモンスターの攻撃力の合計……よって、5100となる。」

その攻撃力はパワーアップされたカオスソルジャーすら易々と上回る。

「バトル!NEPTUNEで攻撃!Sickle of ruin!」

「っ!?ぐぁぁぁぁぁぁ!」

大鎌による横薙ぎの一閃はカオスソルジャーが纏う鎧すらスッパリと斬り裂き、分断。、そして、その余波が神楽坂を襲い、残りライフを0にする。


◆◇◆

「……くっ、遊戯さんのデッキを使っても勝てないのか。やっぱり、俺には才能なんて……。」

悔しそうに地に手をつき、気持ちを吐露する神楽坂。

「はぁ……なんでそうなる。」

見上げると、呆れた表情をしこちらを伺う紫苑の姿があった。

「なぜって……。俺はあのキングオブデュエリスト、武藤 遊戯さんのデッキを使っても負けたんだぞ。」

「だから?」

「えっ?」

それがどうした?と言わんばかりの表情で見下ろしてくる。

「むしろ、他人のデッキを使ってよくあれだけやれたと思ったよ。お前……神楽坂がコピーデッキ使いだったとしてもね。」

そこまで言うと、バツの悪そうな顔をして、「なんか上から目線になっちゃっうけど。」と断りを入れた後に言葉を続ける。

「デッキって作った人の個性みたいなものだろ。同じようなテーマでデッキを組んだとしても構成は微妙に変わってくる。
他人がそれをいくら使え熟て、100%力を引き出せたとしても、120%の力は引き出せない。」

その言葉を聞き、下を向いて俯いてしまう神楽坂。

「……薄々気付いてはいたんだ。いくら完璧に模倣(コピー)したところで勝てないんじゃないかって。
だから、自分で組もうとしても上手くいかないんだ!」

「だから? 一人でできないなら、手伝ってもらえよ。仲間の為に頭下げて頼んでくれるやつがいるんだからさ。」

「あぁ、もちろんだとも。」

いつの間にか三沢達はこちらへと来ていた。

「あ、三沢居たのか。」

「結構前から居たんだがな!?
ま、まぁそこは置いといて……。
神楽坂、見事なプレイングだったぞ。あそこまで遊戯さんのデッキを使えこなせる人は本人を除いてお前くらいだと思う。それだけ、お前には実力があるんだ。他人の模倣なんてしなくててもな。
だから、今度はお前自身の決闘を見てみたい。だから、俺にもお前のデッキ作り、手伝わせてくれないか?お前だけのデッキを作る為に。」

「……ありがとう、三沢。」

がっちりと固い握手を交わす二人。

こうして、深夜に起きたデッキ盗難事件は終局を迎えた。 
 

 
後書き
前回から更新がだいぶ遅れてしまいましたo(_ _)o ペコッ♪

今回はパワァとパワァのノーガードの殴り合いでした。
作中でも言いましたが、本来の紫苑君のプレイングとは真逆。まさしく暴君の如く相手を力で捩伏せる闘いでした。
懐かしいカードを多めに採用したつもりなのでDM期の懐かしい思い出に浸ってくれたらなー、と思ってます。

さてさてもう少しで学生にも、社会人にとっても嬉しいGWに入るわけですが本編書いてばっかだったので短編あげたいなー、と考えてます。
「お気に入りのTFキャラとの絡みがみたい」や「またショタコン登場させ(殴。」とかアイデアやご要望を募集しまふ。
また遊戯王二次書いている方でうちのキャラ使っていいですよ。という寛大な方がいらっしゃいましたら、そちらを優先させていただきます。
書けるのは精々頑張ったところで1話、良くて二話ですが感想やメッセ等々案を送ってくださいまし。

それでは感想待ってます。 
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