遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜
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エピソード30 〜盗まれたデッキ 前編〜
前書き
もしかして、三沢君、初登場?
エアーマン()とか、言っちゃダメですよ?
授業も終わり、自室にてくつろいでいると、紫苑のPDAに着信が入る。お相手はどうやら、十代らしい。
依然も電話で呼び出されたと思ったらなんやかんや面倒事に巻き込まれたので、同じ轍を踏みたくないので通話を切ってやろうかと、思うがどうせ何度でもトライしてきそうなので、十コール目に入ったところで通話ボタンをプッシュする。
『おっ、やっと出た!出るならもっと早くでてくれよな〜』
機械からはややテンションの高めの声が響いてくる。
「……で?要件はなんだよ。」
極力不機嫌さを隠し、平静を装った声で先を促す。要約すると、「明日まで我慢できないから、今から武藤 遊戯さんのデッキを一緒に見に行かないか?」という事らしい。
そもそも、このデュエルアカデミアに明日デュエリストなら誰もが知っているであろうデュエルキング、武藤 遊戯さんのデッキが展示されるのだ。勿論、紫苑自身もそのことを知らなかったわけではないが、別に他人のデッキを見たところで……、とやや冷めた気持ちでいた。
十代の誘いに乗ろうかどうか迷っていると、ひょっこりと姉が姿を見せる。
「あれ?誰から?」
「十代から。今から展示場に忍び込んで、遊戯さんのデッキ見に行かないか?って誘い受けた。」
「へぇ〜、遊戯さんのデッキね〜……。って、それ校則違反どころか、不法侵入じゃん!?」
「それな……」
自分も同じ事を思い、同じリアクションを十代にしたところ、バレなきゃ罪じゃないとのたまりやがった。それに深夜に行けば、ガードマンも居ないはず、との事。
はっきり言って不安だし、正直めんどくさい。けど、ここで断ってあいつらだけが捕まり、いつか廃寮へと忍び込んだ時のようになるのも後味が悪い。
「……やっぱ止めるべきかね。」
「いいこと思いついた〜♪」
不意に姉が手のひらをうち、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。大抵こういう時は良からぬ事を考えている時がほとんどなのだが……今回は何を?
「ところでさ、紫苑はさ。遊戯さんのデッキはみたいの?」
「何を突然……。まぁ、見れるなら見てみたいけど。」
「そう。じゃあ、聡明なお姉さんから紫苑に提案があります。罪悪感も残らないし、遊戯さんのデッキも見れる一石二鳥な方法がっ!」
「へ?」
曰く、「十代たちを止める」という名目の下で行けばなんの問題もない!……らしい。問題だらけな気がするのは気のせいだろうか。
「まぁ、細かい事は気にしたら負けだよ〜。じゃあ、レッツ ゴー!」
「…………はぁぁ。わかったよ。行けばいいんでしょ、行けば。」
肩を竦めると、なぜかヤケにテンションの高い姉の後を追いかけて行く。
◆◇◆
「で、どうなっての…………これ?」
「……むしろこっちが聞きたいわ。」
あの後、展示場まで来たのはいいのだがそこには土下座をし、「わたしはやってないノーネ。無実ナノーネ。冤罪ナノーネ。」と懇願するクロノス教諭と、それに対し、「犯人は皆そう言うんだよ。」と冷ややかな視線を向ける十代達。そして、奥には割られたガラスケース。
……なんだこれ。
事情を聞くと十代たちが展示室へと乗り込んだ時にはすでにガラス製の展示ケースが割られ、そこに安置されていた遊戯さんのデッキが持ち去られていたとのこと。
「いや、とりあえずクロノス先生が犯人だとしたらショーケースをわざわざ割る必要ないだろ。多分、責任者としてケースの鍵持ってるでしょ。」
「そ、そうナノーネ!ワタシは犯人じゃないノーネ!」
土下座の状態からガバッと飛び上がり、足元に縋り付いてくる。気色悪いからやめて欲しい。
「てか、お前らわかってやってないか?」
ジト目で睨みを効かせつつ問いただすと十代がバレちゃったか。と頭を掻きながらのたまった。クロノス先生も疑いが晴れたとわかったのか、立ち上がり胸を撫で下ろし安堵している。
「てか、いつデッキは盗まれたんだ?」
「えと……ガードマンが鍵を閉めてか〜ら、少し経って戻ってきたノーネ。そうした〜ラ、なん〜と、デッキが無くなっていたノーネ!ペペロンチーノ!」
「巫山戯てんすか?」
「仕方ないノーネ!これは、わたし〜の、アイデンティティーなノーネ!」
今さっき犯人扱いされていたのにまだふざけていると思い、殺気を込めて睨みつけるとふるふると首を横に振って否定する。
いくら何でも、キャラ立て過ぎだろ。まぁ、今はそれどころじゃないか……。
「デッキが盗まれてからそう経ってはないか……。多分、容疑者は付近にいるはずだ!探すぞ!」
「「「おぉっ!」」」
紫苑の声の後に威勢の良い掛け声が続き、デッキを盗んだ犯人を探すため四方へと散った。
◆◇◆
「見つかったか?」
「いや、ダメだった。」
「こっちもなんだな。」
「こっちもハズレだな。」
紫苑、十代、デスコアラ……じゃなくて隼人、三沢の四人は桟橋で一度落ち合い、成果を報告しあうが全員見つけられていないらしい。はぁとため息を吐き諦めかけた時、
「ーーーうわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
崖の方から悲鳴と地面へと落ちた時の落下音が聴こえてくる。
さっきの声って、まさか
「っ!翔!?」
十代がいち早く反応を示し、声の主であろう者の名前を叫ぶ。
「あっちからだ!急ごう!」
悲鳴が聴こえた方角へと駆け出す。すると、そこには決闘盤を装着し、岩場の下側でのびている翔の姿があった。さっき会った時にはつけていなかった決闘盤が今は装着されているのを見る限り、決闘の際の衝撃でバランスを崩し、岩から落っこちたのだろう。
「翔!大丈夫か!」
十代がすぐさま駆け寄り安否を確認する。どこか打ったのか痛そうにしているが問題は無さそうだ。
ひとまず安心すると、翔たちがいるのとは反対側、崖側の岩場に立つ男へと視線を向ける。月夜をバックに高笑いをして満足げな笑みを浮かべているその男はラー・イエローの制服を着ているため、ここの生徒だろう。そして、状況的に鑑みてあいつが黒確定だ。
「神楽坂!」
同じくラー・イエローの制服を着た生徒、ーー三沢と言うらしい、が名前を叫ぶ。だが、全く反応を示さない。
「神楽坂!今すぐ、そのデッキを返せ!」
三沢が声を荒げ、そう言うとようやく笑いを止めこちらへと向き直る。
「三沢か……。残念だが、それはできない相談だ!」
「っ!?なぜだ!」
「なぜ?……簡単な事だ。なぜなら、これこそが、俺が求めていた最強のデッキだからだ!武藤 遊戯の決闘を徹底的に研究し尽くした俺なら、このデッキを100%扱う事ができる!これさえ、あれば俺はもう誰にも負けやしない!クロノスだろうが!カイザーだろうがな!」
「……そうだな、確かにお前がもう負ける事はないだろうな。」
より一層高く笑い声を上げる神楽坂。膠着状態の中、紫苑が一歩前へと進み、『呆れ』を表情にだしながら、口を開く。その言葉を良い意味で受け取ったのか口角を上げ、笑みを深くする神楽坂。
「あぁ、お前の言う通りだ。俺はもう誰もにも……「いや、少し違うぞ?」なにっ!?」
台詞の途中に口を挟んだ事で鋭い視線を紫苑へと向ける。だが、当の本人は逆に笑みを浮かべ言葉を続ける。
「お前はもう決闘をすることはないんだからな。誰も決闘しなきゃ負ける事はないだろう?な?」
「「「は?」」」
ニヤリと笑いそう言い放つ紫苑に対し、神楽坂は疎か、十代達までハテナを浮かべる。
「展示室への『不法進入』に、ガラスケースを破壊したから、『器物破損』だろ?それに、遊戯さんのデッキを盗んだ事で『窃盗』だ。これだけあれば有罪だろ?」
「な、な……。」
勝ち誇っていたところにいきなり刑務所行きを宣告され、言葉が続かなくなる。
「くっ、こうなったら……。なら俺と決闘しろ!」
「だが断る!」
紫苑はバッサリと切り捨てる。
「お前、デュエリストじゃないのか!?」
「リアリスト、だっ!って言いたいところだけどな。第一、俺に決闘するメリットなんてないだろ。」
はぁ〜、とため息混じりに答える。いつもの十代なら「なら俺が代わりに決闘するぜ!」と名乗り出てきそうなものだが、空気を読んでか後ろでおとなしくしている。そんな状況の中で、三沢が声を上げる。
「待ってくれ!あいつに……、神楽坂にチャンスをやってくれないか!」
「別に……チャンスも何もあいつはレプリカとは言え、デッキを盗んだ屑だぞ?そこのどこに温情をかけろと?俺はそこまで心は広くないぞ?」
冷たく返すが、三沢は一歩も引かず寧ろ頭を下げて頼み込んでくる。
「あいつは……本当はこんな事するやつじゃないんだ!ただ思うようなデッキが組めなくて焦ってたんだ。」
「は?」
「神楽坂は異様な記憶力が取り柄で、ありとあらゆるデュエリストを研究し尽くしてついには言動だけじゃなく、プレイングや感性までコピーできるようになったんだ。だが記憶が良すぎる故に作るデッキが毎回誰かのデッキに似てしまい、あいつが作りたいデッキにならないんだ。」
「そりゃ凄いな。けど、それと今は関係ないよな?」
「あぁ。だが、あいつにも悩みがあった、ということは汲んでもらいたい。頼む、この通りだ。」
「……三沢。」
深々頭を下げ、請いてくる三沢に流石に紫苑もやりすぎたと思ったのか苦笑いを浮かべる。
流石に、俺も頭下げられてそれを足蹴にできるほど歪んではないぞ……。
「はぁ……お前もいい友達持ったな。三沢に免じてチャンスくらいは与えてやる。その代わりに、負けたら潔くデッキを返せ。」
「っ……あぁ、わかった。」
神楽坂も友人がわざわざ頭を下げた事は堪えたのか、了解の意を示す。
「さて、結局決闘する事になったわけだが……。十代、代わりたければ代わるぞ?」
「いや、今俺に振るなよな……。今回は紫苑に譲るぜ。その代わり、今度決闘しような!」
「ん、その時は嫌と言うほど虐めてやるよ。」
軽く勢いをつけて近くの岩場へと飛び乗ると翔から決闘盤を投げ渡してもらい片手でキャッチすると左腕へと装着する。そして、デッキケースからデッキを取り出す際にふと手が止まる。何のデッキを使おうか、と。
いつものようにナチュルでもいいけどな。偶には、使ってやらないとこいつら、不機嫌になるからな。それに相手は遊戯さんのデッキ。しかも、その実力を100%引き出せるって言うなら申し分ないだろ。
ーーー久々に暴れさせるか。
サディスティクな微笑を浮かべ、ナチュルとは違う別のデッキを掴み、セッティングする。
そして、今一度神楽坂へと向き直ると向こうは既に準備が完了しているらしい。
「さて、お前の友人が頭を下げてまでもらったチャンスだ。簡単には負けてくれるなよ?」
「っ!?その言葉そのまま返してやる!この武藤 遊戯のデッキを使ってな!」
互いに啖呵を切り、交差した視線が火花を散らす。
「「決闘!!」」
神楽坂:LP4000 紫苑:LP4000
◆◇◆
side三沢
神楽坂にチャンスをやってくれと頼み込んだのは俺だが、二人は一体どんな闘いを見せてくれるのか……こう言っては不謹慎かもしれないが楽しみだ。
神楽坂はさっきも言った通り持ち前の記憶力を活かし、コピー先の相手のプレイングを100%真似る事ができる。つまり、今のあいつは武藤 遊戯と同等という事になる。
それに対するのが叢雲 紫苑。一見女子らしい外見だが男らしい……。まぁ、そのことは置いておいて、あいつは一度、月一試験に置いてカイザーを倒している。つまり、この学園のナンバーワンと言ってもいいほどの実力者だ。もっとも評判はあまりよくないがな。理由はあいつのプレイングにあるらしい。決闘した者のほとんどが卑怯だ、狡だと言っていると聞く。だが、そんな噂を差し引いてもカイザーを倒したという事実は揺るがない。一体どんなプレイングを見せてくれるのか楽しみでならない。
「先行は俺が貰う!ドロー!」
お、どうやら先行は神楽坂が取ったみたいだな。
「俺は魔法カード『融合』を発動するぜ。手札の『幻獣王ガゼル』と『バフォメット』を融合し、『有翼幻獣キマイラ』を融合召喚する!」
『有翼幻獣キマイラ』
☆6 ATK2100
背中に翼を生やした獅子がフィールドへと降り立つ。
おおっ、いきなり融合召喚か。1ターン目にしては手札消費が激しい気がするがキマイラは高い攻撃力と破壊された時にバフォメットか、ガゼルを蘇生できるモンスターだったはずだ。相手の出方を伺うにはちょうどいいか。
「カードを一枚伏せてターンエンドだ。」
神楽坂
LP4000
手札二枚
魔法・罠伏せ一枚
場
『有翼幻獣キマイラ』
「おおっ、すげーな。いきなり上級モンスターだぜ!」
「うげっ、キマイラっすか……。」
自身の得意とする融合召喚が行われてた上機嫌な十代に対し、翔はキマイラの召喚に苦い表情をする。
「ん?……どうかしたのか、翔?」
「いや、ボク、あのモンスターだけに完封されちゃって……。」
「……それは、ドンマイなんだな。」
……おいおい。
「俺のターン、ドロー!手札から『神獣王バルバロス』を妥協召喚!こいつは元々の攻撃力を1900にすることによって生贄無しで召喚ができる。来い、バルバロス!」
王の名を持った屈強なモンスターが大槍を携え、紫苑の目の前へと現れる。
バルバロスか。優秀なモンスターだな。妥協召喚したとしてもその辺のレベル4モンスターより攻撃力が高く、『禁じられた聖杯』のような効果を無効にするカードでバルハロスの効果を無効にすれば、攻撃力は3000へと戻り、戦闘に相当強くなる。
「……え?」
分析を行っていると隣にいる十代が疑問の声を上げる。
「どうした……?」
「いや、なんかな変だなと思ってよ。」
「変?どこがだ?至って普通なプレイングだし、ミスなどないと思うが。」
「いや、そうじゃなくてだな。なんと言うか、紫苑っていつもは『ナチュル』っていうカテゴリを使ってだな。あまり自分から仕掛けるというより相手の出方を伺ってカウンターを仕掛けるようなデュエルだったはずなんだよ。けど、今は脳筋モンスターだろ?なんかあいつが攻撃に積極的な姿勢をみせるのが珍しいな、と思ってさ。」
なるほど。つまりは闘い方が真逆という事か。だが、なぜプレイングを変える必要があるのだ?
「バトルだ!バルバロスでキマイラを攻撃!」
「ええっ!?バルバロスのが攻撃力は低いっすよ!?」
驚きの声をあげる翔をちらっと一瞥すると手札からカードを一枚抜き取る。
「この時、速攻魔法『禁じられた聖杯』を発動!モンスター一体の効果を無効にし、攻撃力を400ポイントアップさせる。俺はバルバロスを選択だ!
さらにバルバロスの効果が無効になったことで攻撃力は3000へと戻り、さらに攻撃力が上昇する!」
『神獣王バルバロス』
☆8 ATK3400
やはり、持っていたか。だが、カードの研究をし尽くしている神楽坂がそれを読んでいないわけがない。
「それくらい予想済みだ!リバースカードオープン!『聖なるバリア–ミラーフォース』!」
神楽坂は紫苑の攻撃を最強の攻撃反応系トラップで回避し、バルバロスを破壊する。おそらく紫苑の方もバルバロスが破壊されるのは折り込み済みの様子で破壊されても表情に一切の焦りが見えない。そして、カードを一枚伏せるとそのままターンエンドんをする。
紫苑
LP4000
手札三枚
魔法・罠伏せ一枚
場
「俺のターン、ドロー!手札から『魔導戦士ブレイカー』を召喚。そして、このモンスターが召喚に成功した時、魔力カウンターを一つ置く。」
紅い騎士風の鎧を着込んだ魔導士が召喚され、剣の柄へと埋め込まれた宝石に緑色の光が灯る。
魔導戦士ブレイカーは魔力カウンターを有してる状態だと、攻撃力が300ポイントアップし優秀なアタッカーになり、さらに魔力カウンターを一つ使う事で魔法・罠カードを一枚破壊する事ができる汎用性の高いモンスターだ。
「『魔導戦士ブレイカー』の効果発動!魔力カウンター一つを使い、その伏せカードを破壊する!」
魔力を纏わせ、一閃。緑色の斬撃が紫苑の伏せカードを真っ二つにする。
さらに、紫苑の場には伏せカード一枚のみ。通常は通常召喚に一枚、バックの破壊に一枚……計二枚を消費するところをブレイカーの一枚で代用したか。
「おっと、チェーンして、『終焉の焔』を発動する。フィールドに二体の『黒焔トークン』を守備表示で特殊召喚する。」
斬り裂かれたカードが燃え上がると、そこから二つの黒い火の玉が出てきて、人型をとる。
おっと、紫苑のはフリーチェーンのカードだったのか。神楽坂の奴に魔力カウンターを消費させ、さらに壁まで用意したか。こちらも無駄がないな。
「くっ、壁を増やしたか。バトルだ!ブレイカーとキマイラで黒焔トークン二体を攻撃!」
かぎ爪と剣によって、黒焔は薙ぎ払われ呆気なく消滅する。
「……ターンエンドだ。」
神楽坂
LP4000
手札二枚
魔法・罠なし
場
『有翼幻獣キマイラ』
『魔導戦士ブレイカー』
「なぁ、三沢。今ってどっちが優勢なんだ?」
3ターン目が経過し、紫苑へとターンが移る時ふと十代が尋ねてくる。
フィールドは神楽坂が二体のモンスターを並ばせているがこれはあまり関係ない。むしろ重要なのは手札の方だ。手札が多ければできる事が多くなる。モンスターなぞ幾ら並べても『ブラックホール』一枚で壊滅なんて事はざらにある。
そして、両者の手札はというと、紫苑はこのターンにドローして四枚、神楽坂は二枚だ。どちらかと言うと紫苑の方が若干有利だと思う。
「まぁ、若干紫苑の方が有利だとは思うが……。互いに腹の探り合いみたいな感じだろう。もう少しみないと判別はつけられないな。」
「そっか〜……。」
なにやら納得したようなしてないな感じな十代。まぁそんなものだろう。
「ドロー!手札から通常魔法『フォトン・サンクチュアリ』発動!場に二体の『フォトントークン』を特殊召喚する。但し、このターン俺は光属性モンスター以外の召喚、反転召喚、特殊召喚を行う事ができなくなるがな。」
キラキラと輝く光球が紫苑の目の前へと浮び上がりあたりを照らす。
「さらに永続魔法『冥界の宝札』を発動!そして、『フォトン・トークン』二体を生贄に『守護天使ジャンヌ』を召喚!」
『守護天使ジャンヌ』
☆7 ATK2800
「凄いっ!いきなり最上級モンスターを召喚したっす!?」
「あぁ……だがそれだけじゃないぞ。」
「『冥界の宝札』の効果発動!二体以上の生贄を必要とする召喚を行った時、デッキから二枚ドローする。」
これで、最上級モンスターの召喚に消費した手札分を回復したか。
「通常魔法『封印の黄金櫃』発動。デッキから『冥界の宝札』を除外し、発動後二回目の自分のスタンバイフェイズ時に除外したカードを手札へと加える。」
黄金色の棺桶が地面からせりあがると、その中にカードを収納されまた地面へと戻っていく。
「さて、バトルだ!ジャンヌでキマイラを攻撃!喰らえ、セイクリッド・ディシジョン!」
ジャンヌが両手から光をキマイラへと照射し、蒸発させる。それと同時にジャンヌから暖かな光が放たれ、紫苑を包み込む。
「ジャンヌの効果により、戦闘によって破壊した相手モンスターの元々の攻撃力分、ライフを回復する。」
「キマイラの効果を発動だ!破壊された時、ガゼルか、バフォメットのどちらかを蘇生する事ができる。俺はバホメットを選択。甦れ、バホメット!」
紫苑:LP4000→6100
神楽坂:LP4000→3300
唸りを上げ墓地から蘇るバホメット。
ジャンヌのライフゲインエフェクトによって、紫苑が大きく差をつけたが、モンスターの総数を減らす事はできていない。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド。」
紫苑
LP6100
手札一枚
魔法・罠伏せ一枚
『冥界の宝札』
場
『守護天使ジャンヌ』
さて、紫苑のフィールドには最上級モンスターのジャンヌが一体。ライフゲイン効果を持っているからな、後々厄介になるぞ。
「俺のターンドロー!魔法カード『強欲な壺』発動!デッキから二枚ドローする。」
おっと、いきなりのドローカードか。神楽坂の手札は今ので二枚ドローしたことによって手札を四枚まで増やしたか。
「俺はブレイカーを生贄にし、こいつを召喚するぜ!来い、『ブラック・マジシャン・ガール』!!」
地面から魔法陣が浮き出し、その中から胸元が大胆に開かれた水色の衣装を着た金髪ロングヘアーの女子が姿を現すとテヘッと俺らに向かってウィンクをし、おおっと歓声が上がる。
「か、可愛いっす……。僕、初めて生でブラック・マジシャン・ガール見たっす。」
「か、感激……なんだなぁ。」
翔は一目惚れしたかのように目をハートマークにし、隼人はデザインに関心する。そして、十代は単純に新たなモンスターの登場に「おおっ、すげーな」と呟いている。
俺もブラック・マジシャン・ガールは雑誌などで見かけた事しかなかったが、確かに……
「可愛いな。」
「「「えっ……!?」」」
呟きが耳に入ったのか、三人共がこちらを向き目を見開いて驚く。
若干だが、お前らとの距離が遠くなった気がするぞ!?
「えっ……三沢くんって、アイドルとかに興味ない人かと思っていたっす。」
「いや、翔……それは幾ら何でも、あんまりじゃないか?」
必死に弁論しようと考えが、駄目だ。話せば話すほど深みにはまるぞ、コレは。
「知らなかったのか、案外三沢ってそんな奴だぞ?」
俺らの会話が聴こえていたのか、神楽坂が割り込んでくる。そして、紫苑がなにやら不満げな視線を送ってくる。
「この前だって、机の上に火霊つか、「待て、それ以上は言うな!」……っち。」
なんとか言い切る前に止めた事によって、被害を抑える事ができた。のだが、紫苑が俺に対して、汚物を見るような目で見ているのはなぜだ!?
「…………まぁ、いいや。神楽坂、お前のターンだろ。」
「あぁ、そうだったな。」
紫苑がなんとか流れを元どおりにしてくれる。助かった、正直あのままだったらもっと酷い被害を負う事になりそうだったからな。
「いくぞ、おれは魔法カード『賢者の宝石』発動!俺の場に『ブラック・マジシャン・ガール』が存在するとき、デッキ・手札から『ブラック・マジシャン』を特殊召喚する。来い、『ブラック・マジシャン』!!」
空中へと放り投げられた宝石が強烈な光を放ち、その中から武藤 遊戯のエースモンスター、ブラック・マジシャンが姿を現す。師弟揃った姿は圧巻の一言に尽きる。
「やっぱり出てきたか……。だけど、それでも俺のモンスターは倒せないが、どうする?」
紫苑がニヤリと笑って挑発的な笑みを浮かべる。
「なら、こうするまでだ!『黒・爆・裂・破・魔・導』発動!相手の場のカード全てを破壊するぜ!」
もし、これが決まれば紫苑を守るカードが無くなる。今神楽坂のフィールドには、バホメット、ブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールの三体。そして、この三体の合計攻撃力は紫苑の残りライフを上回る!?
「っち、リバースカードオープン!『無力の証明』!俺の場にレベル7以上のモンスターが存在するとき、相手の場に存在するレベル5以下のモンスター全てを破壊する!よって、バホメットを破壊だ!」
ジャンヌが放った光線がバホメットを貫き、爆発四散させる。
「くっ、だが『黒・爆・裂・破・魔・導』の効果で、ジャンヌを破壊だ!」
ブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールの魔力が増幅される。莫大な魔力の奔流がジャンヌを呑み込み、消滅させる。
「ブラック・マジシャン、『黒・魔・導』!ブラック・マジシャン・ガール、『黒・魔・導・爆・裂・波』!二体でダイレクトアタックだ!」
二つの黒い魔力弾が紫苑へと迫り、着弾。激しい爆音と共に土煙が巻き上がる。そして、リーンゴーンと金の音が響き、視界が晴れると全くの無傷で、立っている紫苑の姿が。
完全に決まった、と思っていたであろう神楽坂の表情からは驚愕している事が読み取れる。
「なにっ!?」
「『バトルフェーダー』の効果発動。直接攻撃宣言時、このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを強制終了させる。惜しかったな。」
『バトルフェーダー』
☆1 DEF0
二人のデュエルはまだまだ続きそうである。
後書き
紫苑君の今回のデッキは、『冥界軸最上級混沌軸』です。
攻撃力3000のモンスターが、ポンポン出てきて楽しいです。もちろん邪神降臨も容易ですね、はい。
次回、遊戯デッキ(神楽坂)vs紫苑、決着!……多分
【速報】
元キンもといNEET、ことジャック・アトラスががっつりとOPに出演!そして、しっかりレモン召喚してることから、シンクロ次元の決闘者としてストーリーに関わってくるか、などと様々な憶測が飛び交っています。
まぁ、あれでも……デュエルキングてすから、プロデュエリストを目指すトマトの師匠的な感じで出てきたりするのですかね?
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