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遊戯王GX 〜プロデュエリストの歩き方〜

作者:ざびー
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エピソード32 〜代表決めバトルロワイヤル〜

 
前書き
今回は割と早め……かな?


ルールを守って楽しくデュエル!
それでは、本編をどうぞ〜。

 

 
「えぇと……あなた達三人に明日バトルロイヤル形式で決闘を行ってもらいます。」

「……は?」

「ほう、それは……。」

「面白そうじゃん!」

上から、俺、三沢。そして、十代だ。
突然校長室に呼び出されたかと思ったら、校長からこのカミングアウトだ。驚く方が普通だと思うが……。

「また、どうして急に……。」

「えぇ、それがですね……今朝の職員会議まで遡るのです。」


ーーーーー
ーーー



「いやはや。ノース校との親善試合の代表生徒は一体誰にしたものですかね……。」

鮫島校長含め、アカデミアの教員たちによる会議は難航していた。本来なら昨年と同じようにこの学園最強の称号を持つ丸藤 亮が選ばれるはずだった。しかし、既に伝えられた情報によると相手のノース校の代表生徒はどうやら一年生らしい。
だったら、「こちらも一年生にしよう。」というところまではスムーズに決まったのだが、その次ーー誰を代表生徒にするかという議題で大いに揉めた。

親善試合というだけあって互いの高校の代表生徒同士で決闘を行う。よって、代表生徒となる者にはそれなりの実力が求められる。
そして、最終選考まで残ったのが三人。
一人目は遊城 十代。『落ちこぼれ』と評されるオシリス・レッドの生徒でありながらもエリートであるオベリスク・ブルーの生徒を凌ぐほどの実力が評価されたからだ。
二人目は三沢 大地。ラー・イエローに所属しており、成績優秀、実技もトップクラスのいわゆる秀才だ。
残る一人は、叢雲 紫苑。『ナチュル』というカテゴリを巧みに使い熟すプレイングは教員達からの評価が高い。

ーーちなみにオベリスク・ブルー女子で、女帝と称される天上院 明日香も候補へと上がったのだが遊城 十代に敗北しているという理由で却下された。

「さて……困ったものですね……。」

あーだーこーだー、と言い合う教員たちを目の前にしそのまとめ役である鮫島校長はほとほと困った表情をし、ため息を吐く。そんな状況下で、大徳寺先生が「そうですにゃ。」と明暗が思い浮かんだようで手のひらを打つ。

「いっそのこと、三人を闘わせてみたらどうですかにゃ?」

「なるほど、バトルロワイヤルという事ですか。デュエリストなら、デュエリストらしくデュエルで決めるということですね。」

校長が他教員へと意見を求めると満場一致で可決される。


◆◇◆

「ーーーーと、言う訳なんですよ。わかってくれましたか?」

「いや、『わかってくれましたか?』じゃないだろ!?本人たちの了承もなしで勝手に決めて!」

悪びれもせず、そうぬかす校長の態度に紫苑が珍しく声を荒げる。だが、そんな紫苑が十代と、三沢が、どーどー、と宥める。

「いいじゃん、紫苑。バトルロワイヤル楽しそうじゃん!」
と、無邪気な笑みを浮かべる十代。

「俺も賛成だな。それに前からお前ら二人とはぜひ手合わせをしておきたかったところだ。バトルロワイヤルなら、二人同時にデュエルができ、さらに勝てば代表生徒か。まさしく一石三鳥という奴だな。悪くない提案じゃないか。」
と、言うのは早くも闘志を漲らせている三沢だ。

「…………お前らなぁ。」
そして、紫苑は二人の戦闘狂っぷりに頭を抱えて呻く。

「二対一ですね……。紫苑くんもいいですよね?」

「……もうどうとでもなれ。」


◆◇◆

昨日の校長の話の翌日。
デュエルアカデミアの決闘場に呼ばれたのは、紫苑、十代、三沢の三人だけではなく、その他生徒教員も観客席へと座り、三人の決闘が始まるのは今かと待っている。

斯くいう私もその一人だけどね。

「あっ、紫苑さんのお姉さんっす!」

と言う声が聞こえたと思ったら、此方側へと向かって歩いてくる足音が5つ。
ついでに声の主は十代君の義弟、翔くんだろ。

「どうも、翠さん。隣いいですか?」

「ん?いいよいいよ。遠慮せずに」

そう言うと私の右隣へ明日香とその取り巻き二人ーーモモエとジュンコが座り、左隣へは翔くんと、デスコアラ……もとい隼人君が席に着く。

「ところで翠さん。この決闘って誰が勝つと思いますか?」

「また突然だね……。始まってすらないからわからないけど、勝つチャンスは全員にあると思うよ。」

「どーゆーことっすか?」

すかさず翔君が尋ねてくる。
自分で考えてほしいものだが、先輩という立場上答えないわけにもいかない。

「そうだね〜。バトルロワイヤルにあって、通常の決闘ではない要素ってなんだと思う?」

「えぇ……」

「集中攻撃を受ける……ことなんだな。」

翔君が「うぅ〜ん……」と悩む横で隼人君が自信なさ気に答える。

「その通り。各プレイヤーは他の二人からターゲットにされないようにヘイト管理が必要なの。だから、タイマンでやるよりも駆け引きや攻めるタイミングを見極めるのが難しい。」

私がそう言うと、皆「うーん」と唸り始める。

「十代君が……。」
「駆け引き?」
「ありえない……なんだな。」

息を合わせたかのようなコンビプレー。決闘場に立っていた十代君がずっこけた!?

「なら、その分三沢さんなら、問題ないですわ。」
「そうね。ラー・イエローの主席で秀才。頭脳戦なら、負けないわよ。」
「確かにそうね。」

と、モモエとジュンコが三沢君を持ち上げ、明日香が賛成の意を示す。

「そうっすね。三沢君はバトルロワイヤルだと有利っすね。」

珍しく翔君が十代君以外を褒める。モモエ達は自分を褒められたわけでもないのに嬉しそうにするが……

「影薄くて、狙われなそうっすもん。」

翔君がそう言い放った直後、ステージ中央から転倒音が……。気づけば、三沢君が床に倒れ伏していた。

「あ、ははは……さすがにそれはないと思うけどね。」

「じゃ、残ったのは紫苑君だけど、どうなんですかね?」
「さぁ……。流石に初っ端から目立つような行動は…………しない。……といいな。」

あははと笑って誤魔化してみるが自分の発言に自信がもてない。
妨害カードなんて真正面から叩き潰していきそうで怖い。
てか、紫苑ならやりかねない。

「大変長らくお待たせしたノーネ。それでは〜、今からノース校との親善決闘の代表決めバトルロイヤルを始める、まえ〜にルール説明から入るノーネ。
ルール、はバトルロワイヤル方式〜ネ。各プレイヤーは、誰を狙ってもいいけーど一巡目は攻撃できないノーネ。
それでーは、さんにんは準備オーケー、ナノーネ?」

「あぁ、早く闘いたくてうずうずするぜ!」

「準備は大丈夫です。」

「はぁ……」


「それでは、開始ナノーネ!」

「「決闘(デュエル)!!」」

「デュエル……」

クロノス先生の合図と共に決闘が開始される。

紫苑:LP4000
三沢:LP4000
十代:LP4000

決闘盤によって決められた順番は紫苑、三沢、十代の順番だ。
さてさて、紫苑はどんなプレイングをするのやら。

「俺のターン、ドロー。
『手札断殺』を発動。互いに手札を二枚捨て、二枚ドローする効果だけど、バトルロワイヤルのため、全員が適用される。」
「むっ、手札交換か。」
「お、マジか。センキュー。」

初めの行動が手札交換だった事から会場から「手札事故かよ……」などと一部から嘲笑の混じった声が聞こえてくる。
そして、隣に座っている翔も首を傾げ、

「あれ、紫苑さん。手札事故なんすかね?」

「はぁ……(お前もか、翔……。)」

額に手を当てため息を吐く。そのリアクションに「僕なんかまずったすか⁉︎」と慌てる。

「翔君、別に手札交換イコール手札事故ってわけじゃないのよ。そうですよね?」

明日香が心情を察してくれてのか、代わりに言ってくれる。その通りなので首を縦に振って肯定しておく。

「まぁ、手札交換もあると思うけど。他に二つの目的があると思うよ。一つ目は墓地肥やし。その辺はわかってるよね、翔君。」

さりげなく振ってみると、一瞬で目を逸らされ、ぎこちない返事が返ってくる。

「ほら、『墓地は第二の手札』ってどこかの偉い人が言ってたじゃん?」

「誰ですか、それ。」

「知らん。私の管轄外だよ。」

明日香の鋭いツッコミをあっさりと返すと、代わりにジト目攻撃が飛んでくる。

「それで二つ目はなんですか?」

「んー、デッキ把握かな。多分。」

「たった二枚、墓地に送られたカードだけで把握できちゃうんですか?」

「まぁ、完璧に把握するのは無理だけど、どんなタイプかはわかるよ。それに三沢君だったら、墓地の大切さを理解していると思うから確実に墓地に置いておくべきカードを送るだろうからね。多分、それである程度はわかるよ。
それに単なる手札交換や墓地肥やしだけだったらドロー枚数の多い天使の施しを採用するだろうしね。」

どうやら私の説明に納得したようでしきりに頷いている。

一方の紫苑は、

「(十代が落としたのは、フレンドックとヒーローマスクか。ま、相変わらずのHEROデッキだな。三沢は儀式魔人プレサイダーとディザーズ……っておい!なんてもん墓地に送ってんの!?……ま、まぁ、三沢は儀式で決定か。)
俺は『カズーラの蟲惑魔』と、『落とし穴』を捨て、二枚ドロー。
手札から『ティオの蟲惑魔』を召喚して、効果発動。召喚成功時に墓地から蟲惑魔一体を守備表示で特殊召喚する。さっき墓地に送った『カズーラの蟲惑魔』を特殊召喚する。
カードを三枚伏せ、エンド。」

『ティオの蟲惑魔』
☆4 ATK1700
『カズーラの蟲惑魔』
☆4 DEF2000

体に蔦やら、植物を纏った幼女が二体現れ、三沢と十代にそれぞれ妖艶な笑みを浮かべる。十代君は紫苑の使う新たなモンスターに純粋に興味を示し、三沢君は蟲惑魔に視線が釘付けになり、見惚れてる!?

「か、可愛い子だな〜。」

隣でもロリに魅了されたのが一名。あの子達(蟲惑魔)の本性を知ったら一体どんなリアクションをしてくれるのか。
そんな私の考えは他所に三沢君へとターンが移る。

「俺のターン、ドロー!必要なカードは来ないか……。『マスマティシャン』を召喚する。」

魔法使いというより、むしろ数学学者のような老人が杖を片手に現れる。
そして、三沢君が効果を発動してようとした時、紫苑が動く。

「マスマティシャンの効果を発動する!デッキからレベル4以下のモンスターを墓地に「待った!」なにっ!?」
「リバースカードオープン、『エンペラー・オーダー』!
召喚時に発動される効果を無効にし、そのプレイヤーは一枚カードをドローする。
よって、マスマテシャンの墓地送り効果は無効だ。
流石にこれ以上、儀式魔人を墓地に送られたら不味いからな。」

「なるほど。さっきの手札断殺でデッキを把握されたか。だが墓地送りを無効にした代わりに俺はドローできるが。」

三沢君の言葉に対し、紫苑は得意げに自分の手札の内、一枚を掲げる。


『エンペラー・オーダー』の効果の発動にチェーンして、手札の『ナチュル・コスモビート』の効果を発動する。このカードは相手モンスターの召喚成功時、手札から特殊召喚する事ができる。」

「なるほどな、モンスターの効果を無効にし、さらに壁を増やす……いや、違う!」

言いかけるが、やはり秀才。すぐに紫苑の仕掛けたコンボに気づく。

「さらに『エンペラー・オーダー』の効果を発動。
コスモビートの効果発動タイミングも"モンスターの召喚成功時"。よって、『エンペラー・オーダー』の効果が適用される。」

「くっ、こんなコンボを1ターン目から仕込むとはな。さらに『エンペラー・オーダー』の効果は無効にするだけ。よって、コスモビートは手札に残るからモンスターが召喚される度に一枚ドローできるのか。」

「あれ、なんかデジャブ……。」

三沢君は簡潔に纏めるが、成功させるには難しい、だがその分強力なコンボなのだが。
しかも今回はバトルロワイヤル。通常の決闘より得られるアドバンテージは大きい。
ちなみになぜか、十代君は遠い目をでどこかを眺めている。

「んじゃ、チェーン処理に入る。
逆順処理で、チェーン4の『エンペラー・オーダー』の効果でコスモビートの交換が無効になり、一枚ドロー。チェーン3のコスモビートの効果は無効にされ、手札へと残る。」

「効果で一枚ドローだ。これだと、召喚時効果が使えなくなったか……困ったな。
とりあえず、カードを二枚伏せエンドだ。」

恐らく三沢君はマンジュゴッドやソニックバードなどの召喚時に儀式パーツをサーチするカードが使えない、という事なのだろう。

「お、ようやく俺のターンか。ドロー!」

出落ちをくらい、渋い顔をする三沢君からじふのターンはまだかまだかとウキウキしている十代君にターンが回る。

「召喚されてドローされるなら、特殊召喚だ!魔法カード『融合』を発動!」

「リバースカードオープン、『ナチュルの神聖樹』!」

紫苑の背後にナチュル達のシンボルである神聖樹が地響きと共に聳え立つ。

「ナチュルの神聖樹は俺の場の地属性・昆虫族モンスターを墓地に送り、デッキからレベル4以下の地属性・植物族モンスターを特殊召喚する効果、と地属性・植物族モンスターを墓地に送り、デッキからレベル4以下の地属性・昆虫族モンスターを特殊召喚できる効果がある。
俺は植物族の『ティオの蟲惑魔』をコストに、デッキから『ナチュル・アントジョー』を特殊召喚!」

『ナチュル・アントジョー』
☆2 ATK400

墓地に送られると聞いて、ティオちゃんが目を剥いて驚くが、紫苑が「ごめんな。」と謝ると、渋々と神聖樹の方へと向かって消えて行く。そして、入れ替わりで地面からアントジョーがひょっこりと現れる。

「なんか出てきた!?まぁ、いいや。俺は手札のワイルドマンとフェザーマンを融合!現れよ、『E・HERO ワイルド・ウィングマン』!」

上裸で背中から翼を生やしたヒーローが姿を見せるが……、地面へと着地しようとした瞬間、ボッシュート。穴へと落ちていく。その翼は飾りかよ。

「なぁ!?」

「リバースカードオープン、『奈落の落とし穴』発動。
さらにチェーンしてアントジョーの効果発動。」

十代君は絶叫し、三沢君はポカーンと口を開けてフリーズ。
まぁ、やはりというか紫苑の仕業か。てか、この状況は不味い。

「まずは『奈落の落とし穴』の効果で、ワイルド・ウィングマンを破壊し、除外する。さらに相手が特殊召喚に成功した事で、アントジョーの効果が発動。デッキからレベル3以下のナチュルを特殊召喚する。来い、『ナチュル・フライトフライ』!」

『ナチュル・フライトフライ』
☆3 ATK800

樹の方から絵本で登場するようなハエが飛んで来ると、アントジョーの隣へと降り立つ。アントジョーは新たな仲間が増えた事で嬉しそうな表情をする。

「さらに『落とし穴』カードが発動した事で、『カズーラの蟲惑魔』の効果が発動!デッキから蟲惑魔を手札に加えるか、または特殊召喚する。『アトラの蟲惑魔』を特殊召喚する。」

『アトラの蟲惑魔』
☆4 ATK1800

新たに登場したのは、紫のワンピースを着た幼女(ロリ)。だが、その子に見惚れてる場合じゃない。

「えぇ、紫苑……?今って、俺のターン、だよな?」

「ん?何当たり前の事を。」

そっけなく返答するが色々おかしいからね!?
相手のターンでどんだけ展開してんの!?

会場も紫苑の異常なプレイングに口が開いたままだ。

「ま、まぁ、紫苑だし……。
俺は手札から『E・HERO エアーマン』を召喚するぜ。そして、効果発動だ。俺はHEROを手札に加える方を選択だ。」

「まぁ、それは止める。『エンペラー・オーダー』の効果を発動。エアーマンを無効だ。ついでに『コスモビート』、チェーンして、『エンペラー・オーダー』発動。
以下略で一枚ドロー。」

「だよな〜。効果でドローだ。よし、いいカードを引いたぜ!魔法カード『天使の施し』発動、カードを三枚ドローし、二枚捨てる。よし、俺は手札から捨てられた『E・HEROシャドー・ミスト』の効果発動デッキからスパークマンを手札に加える!墓地の効果なら、止めれないだろ?」

やはり十代君は決闘になると鋭い。エンペラー・オーダーの穴をついて手札補充をしてくる。そして、やっぱり十代君の引きの強さは異常だ。

「流石、兄貴っす!」

「そうね。けど、紫苑君も凄いわね。モンスターを召喚すれば、ドロー。特殊召喚すれば、ナチュルを特殊召喚?わずか一巡目で仕込めるコンボじゃないでしょ!?」

明日香はヒステリックな声を上げる。まぁ、実際やられたら発狂モノだろ。

なんやかんやで十代君はカードを一枚伏せ、ターンエンド。紫苑へとターンが移る。

紫苑
LP4000
手札三枚
魔法・罠
『ナチュルの神聖樹』
『エンペラー・オーダー』

『ナチュル・アントジョー』
『ナチュル・フライトフライ』
『カズーラの蟲惑魔』
『アトラの蟲惑魔』


三沢
LP4000
手札4枚
魔法・罠伏せ二枚

『マスマテシャン』

十代
LP4000
手札三枚
魔法・罠伏せ一枚

『E・HERO エアーマン』


一巡目の途中経過はこんな感じなのだが、やはり悪い予感は的中するもので紫苑は狙われる事などなんのその、フィールド、ハンド・アドバンテージを取りに取りまくっている。


「俺のターン、ドロー!
フライトフライの効果発動!このカードが存在する限り、場のナチュルモンスター一体につき、相手のモンスターの攻守を300ポイント下げる。
さらに1ターンに一度、守備力0となったモンスターのコントロールをこのターンの終わりまで得る。」

「600ポイント下がって、俺のマスマテシャンは攻撃力が900、守備力が0か。

「エアーマンの守備力は300だから……守備力0になっちゃうじゃん!」

「俺はフライトフライの効果でエアーマンのコントロールを得る。」

フライトフライがクルクルとエアーマンの周りを飛び回る。目が回ったエアーマンはフラフラと千鳥足で紫苑の場へと歩いてくる。

「さて、バトルだ。エアーマンで十代にダイレクトアタック!」

「速攻魔法『クリボーを呼ぶ笛』!俺はデッキから『ハネクリボー』を特殊召喚するぜ!」

不機嫌を露わにしながらも十代へと攻撃を仕掛ける。だが、主人を守るようにエアーマンとの間にハネクリボーが現れ、盾となる。

「ハネクリボーが破壊されたターン俺へのダメージは0になる。ありがとう相棒。」

「じゃあ、アトラでマスマテシャンを攻撃!そして、フライトフライで三沢にダイレクトアタック!」

アトラが糸を発射し、捕縛するとズルズルと穴の中へと引き込んで行く。そして、ガリボリと咀嚼音が……。

「こ、蟲惑魔って……まさか。ま、まぁ、気にしないでおこう。俺は戦闘破壊されたマスマテシャンの効果で一枚ドローする。」

三沢:LP4000→2800→2000

三沢君は蟲惑魔たちの正体に気が付いたのか一瞬青ざめるが、すぐに気を持ち直す。

「ターンエンドだ。」

「俺のターン、ドロー!よし!」

三沢君は良いカードでも引いたのか、ガッツポーズをする。

「儀式魔法『奇跡の方舟』!俺は手札の『ソニック・バード』と墓地の儀式魔人プレサイダー、ディザーズを除外し、儀式を執り行う!光臨せよ、『天界王 シナト』!」

8本の光柱が天から地上へと降り、その中央から天界の王であるシナトがゆっくりと降り立つ。
最上級モンスターの召喚に会場の空気が一気に沸き立つ。

「ディザーズの効果で罠が効かないか……。俺はアントジョーの効果デッキから『ナチュル・バタフライ』を特殊召喚する。」

ピンク色の蝶がヒラヒラと羽をはためかせ、伸ばした紫苑の指へと止まる。

「むっ、またモンスターを増やしてしまったか。
バトルだ!シナトでフライトフライに攻撃!六道輪廻!」

「やらせるか!ナチュル・バタフライの効果発動!デッキトップを墓地に送り、攻撃を無効にする。ヒールバリア!」

ナチュル・バタフライの鱗粉がシナトを痺れさせ、攻撃を中断させる。

「一筋縄じゃいかないか……。ターンエンドだ。」

攻撃が通らなかった事に対し悔しそうにしする。そして、二度目の十代君のターンが回る。

「俺のターン、だな!ドロー!『戦士の生還』を発動し、墓地のワイルドマンを手札に加え、手札から魔法カード『融合』を発動!俺はワイルドマンとエッジマンを融合!来い、『E・HERO ワイルドジャギーマン』!」

金色の胸当てを装備したマッチョの戦士が現れる。何故こうもワイルドマン融合体は上洛裸なんだろうか。

『E・HERO ワイルドジャギーマン』
☆8 ATK2600→1700

「ワイルドジャギーマンは全てのモンスターに攻撃できるぜ!まずは、ナチュル・バタフライを攻撃!インフィニティ・エッジ・スライサー!」

「ナチュル・バタフライの効果発動!デッキトップを墓地に送って、攻撃を無効にする。」

「なら、次はアントジョーだ!」

巨大なブーメランがアントジョーに迫るが、地中に潜ることでそれを回避する、

「神聖樹の効果発動!アントジョーをコストにナチュル・ビーンズを特殊召喚する!」

『ナチュル・ビーンズ』
☆2 DEF500

ポンッと音を立て、小さな豆三兄弟が姿が地中から這い出てくる。

「『ナチュル・ビーンズ』は1ターンに一度、戦闘では破壊されず、表側表示でいるときに攻撃対象に選択された時、500ポイントのダメージを与える。

「うげっ、戦闘破壊耐性に、バーン交換かよ。
じゃ、フライトフライに攻撃!インフィニティ・エッジ・スライサー!」

「くっ……」

紫苑:LP4000→3100

十代君はようやく紫苑へとダメージが通り嬉しそうにする。

「もういっちょ!アトラとカズーラに攻撃だ!」

ワイルドジャギーマンの放ったブーメランが弧を描き、二人の蟲惑魔を真っ二つにする。

紫苑:LP3100→2300

「よし、ターンエンドだ。」


紫苑
LP2300
手札4枚
魔法・罠
『エンペラー・オーダー』
『ナチュルの神聖樹』

『ナチュル・バタフライ』
『ナチュル・ビーンズ』

三沢
LP2000
手札二枚
魔法・罠伏せ二枚

『天界王 シナト』

十代
LP4000
手札0枚
魔法・罠無し

『E・HERO ワイルドジャギーマン』


「……場は整ったか。」

紫苑の3巡目。ドローする前に小さく呟く。恐らく仕掛けるつもりだろう。

「まずは神聖樹の効果を発動。『ナチュル・ビーンズ』をコストにし、デッキから『ナチュル・フライトフライ』を特殊召喚する。」

本日二体目となるフライトフライが神聖樹のほうから出張してくる。

「ーーーーそして、フライトフライの特殊召喚成功時、速攻魔法『地獄の暴走召喚』、発動。デッキ・手札・墓地から同名モンスターを可能な限り特殊召喚する。」

一瞬のうちに三体へと増えるフライトフライ。
地獄の暴走召喚は攻撃力1500以下のモンスターの特殊召喚成功時に同名モンスターを特殊召喚できるカード。だが、デメリットとして、相手も自分のモンスター一体を選択し、特殊召喚ができてしまう。もっとも二人とも儀式と融合モンスター。正規手順を踏まないと出せないからさらに呼び出す事はできない。

さっきの呟きは二人の場にモンスターが存在し、かつ特殊召喚できないモンスターが揃うのを待っていた、という事だろう。

「フライトフライの効果で、ナチュル一体につき相手モンスターの攻守はそれぞれ300ポイント下がる。俺の場にはフライトフライ三体とバタフライの計四体。よって1200ポイントダウンする。だが、フライトフライは三体!よって、3600ポイントダウンする。」

瞬く間に力を失い、二体のモンスターは地に膝をついてしまう。

『天界王 シナト』
☆8 ATK3300→0 DEF3000→0

『E・HERO ワイルドジャギーマン』
☆8 ATK2600→0 DEF2300→0

「フライトフライの効果発動。俺はシナトのコントロールを得る。」

フラフラとしながらもシナトは紫苑の下まで移動してくる。
そして、コントロールが紫苑へと移った事によって、ナチュル・フライトフライの効果範囲外となり、元の力を取り戻すシナト。

「くっ……俺のモンスターが。
(だが、俺には二枚の伏せカードがある。攻撃してきたとしても、『聖なるバリア ミラーフォース』がある。そして、除去魔法を使ってきたとしても『アヌビスの裁き』で逆にモンスターを破壊し、ダメージを与えられる。来るなら、来い!)」

三沢の完璧な布陣に守られ、紫苑の攻撃宣言を今かと待ち構える。だが……

「『ナチュル・バタフライ』を生贄にし、『ナチュル・バンブーシュート』を召喚する!」

二体のタケノコの姿をしたモンスターが姿を現すと共に三沢と十代、二人の魔法・罠ゾーンが大量の竹に埋め尽くされる。

『ナチュル・バンブーシュート』
☆5 ATK2000

「なっ、なんだ!?」

「『ナチュル・バンブーシュート』はナチュルモンスターを生贄にし召喚したとき、このカードが表側で存在する限り、相手は魔法・罠カードを発動できなくなる。」

「なっ!?伏せカードが!」

ここに来て、強固なロックカードの登場に絶句する三沢君。何かを仕掛けようとしていたらしいが、無駄に終わったようだ。

「バトルだ!バンブーシュートで三沢にダイレクトアタック!」

ドンッと地を蹴る音と共に自身を射出し、三沢君の腹に超エキサイティィ↑↑ング!!
派手に吹っ飛ばされ、そのままリタイアとなってしまう。

三沢:LP2000→0

「三沢!?くそっ、お前の仇は必ず!」

「なんでだよっ!?
まぁ、いいや。『天界王 シナト』でワイルドジャギーマンに攻撃!六道輪廻!」

攻撃力0にまで弱体化してしまっているワイルドジャギーマンはなす術もなく、シナトの放った光の奔流に呑み込まれ、消滅する。

十代:LP4000→700

「トドメだ!『ナチュル・フライトフライ』でダイレクトアタック!」

「うわぁぁぁぁ!!」

小さな体で十代へと特攻を仕掛けるフライトフライ。決死の一撃が決まり、見事十代のライフを削りきる。そして、同時に紫苑の勝利が確定する。


「しょ、勝者、セニョール紫苑!スプレンディ〜ド、おめでと「待てよ!!」……んにゃ!?にゃんです〜の!」

突如、会場の一端から上がった声がクロノスの言葉を遮る。

ーーー卑怯だ!
ーーー狡い!
ーーー正々堂々と闘え!

オベリスク・ブルーが中心に巻き起こるブーイングの嵐。
そして、事態は思わぬ方向へと動いていく。










 
 

 
後書き
バトルロワイヤルという特殊ルールかつ三沢君の初決闘話でした。三沢君のデッキは儀式魔人軸の普通の儀式デッキです。本来なら、リトマス試験紙を使うところですが、ソフィアの霊法衣に儀式モンスター最高ステータスの座を奪われ、早速リストラされ、再就職のあてのないシナトさんを雇用してみました。
DM時代はボスキャラっぽいので出てきたのに……(まぁ、やられたけど。
天界王 シナトさん、ステータス"は"高いので、高等儀式術軸の儀式デッキに組み込む際に隠し味として入れてみてはいかがですか?


そして、なぜか書いていたら最後アンチっぽく……そんな予定は。はっ!まさか、書き換えられた!?おのれ、ドン千許さねぇ!!(嘘です。

ステータス至上主義、もとい脳筋主義者。実際に居たら、面倒そうですね。妨害する度に卑怯だとか言われたら、モンスターで直接攻撃するより先に、ダイレクトアタック(物理)をかましそうです(笑)。

それではo(_ _)o ペコッ♪

感想やコラボ企画、オリキャラ案etc……、待ってます。
 
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