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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第編集後記話+α

 
前書き
コラボ話ラスト 

 
 はい、今回はあくまでコラボ編のまとめた後書きとおまけのようなものなので、本編以外は興味ねぇ、という方は次話更新をお待ちください。ああ一応、その後書きの後に二つほどオマケを用意しておりますので、そちらは少し覗いてくれてもいいやも知りません。どっちにしろ本編関係ないんですが。

 という訳で、まずはコラボ編後書きです。某時雨沢先生のような後書きは書けないので、まあ蓮夜がグダグダと述べていくだけです、ええ。それだと際限なくなりそうなので、ちょっと箇条書きにでも。

・敵弱くね

 この世界そのものが敵だ……! みたいな雰囲気とコンセプトだったんですが、蓋を開けてみればリクヤがまとめて瞬殺という。その後のぽっと出の巨大ボスも似たようなものと、少し敵が弱すぎた気はしますね。

・椅子取りゲーム? アンダーワールド?

 ぶっちゃけただの舞台装置です。特に意味はありません。強いて言えば、最初は仲間内で小競り合いして、最後は協力して共通の敵と戦う、っていう春ライダー的な。

・ソードアート・オンライン 穹色の風
作者:Cor Leonis 様

 この作品からは、主人公のマサキとヒロイン(?)のエミのコンビが。(作者の頭脳的な意味で)性能に制約があるにもかかわらず、マサキの暴れっぷりと、最終決戦でトドメをかましてくれたエミさん。二人の掛け合いが面白い作品でもあるので、同じチームでも良かったかもしれませんが、残り1人が気の毒なのでお蔵入り。

 《風刀》スキルやマサキというキャラを扱えず終わった印象で、今後の課題でしょうか。……あ、なぜかエミさんは楽しく書けました。原作に似ているかはともかく。

ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
作者:涙カノ 様

 リクヤとユカの、同じく主人公とヒロインのコンビを。どちらも武器や性格に特徴が出ていて、キャラが立っていて羨ましい限り。拙作の主人公がヘタレているのもあり、王道主人公は書いていて楽しかったです。ユカは申し訳ないDEBANになりましたが。

 しかし、リクヤの無敵ぶりという意味では扱えなかった、ということになるのでしょうか。筋力特化で自由自在に大剣を二刀振るう、と、ラスボスの巨人も1人で倒してしまいそうな勢いという。今度から強敵を作る時は、リクヤをボコボコに出来そうな奴を作りたいです(失礼)

ソードアート・オンライン 傷を負いし剣士たち
作者:霊獣 様

 この作品は主人公のホークだけで。一応、最後に師匠も少しだけ出てますが。敵を倒したら強制的にログアウトする、アルゴの弟子(パシリ)の情報屋。主人公が戦闘職なことの多い、SAO二次にはなかなか異色の経歴の持ち主です。であるならば、戦闘よりやはりサポートの方が輝くか……と思いああなりましたが、どうだろう。

 同じくアルゴ師匠は戦闘では出せず、最後のシーンで思いついていきなりねじ込んだため、妙に不自然な登場になっております。それでも登場させたのは、やはりパシリしてる時が、ホークという一番輝いているから(確信)

 拙作……のことはいいですね、はい。予定ではユカと一緒にリズが捕まり、リーファはユカに撃ち落とされる予定だったんですが、書いてるうちに何故かこういう風に。

・ルクス

 現在スピンオフとして連載されている、ガールズ・オプスからの参戦です。何故かって具体的に言うと、ホークが非戦闘員になって1人余ったから。キリトとアスナは出さないと決めていたので。

 でも個人的にはガールズ・オプス編を書こうか、という程にはお気に入りなので、書けて良かったです。二巻発売前に書いたので、ちょっと不完全燃焼ですが。ガールズ・オプスの感想は話が脱線するんで止めときます。

 はてさて、長いことグダグダと書いてきましたが、要するにまだまだ未熟、と。このコラボで、それが嫌というほど分かりました。これからも精進していきますので、どうかよろしくお願いします!

 ここからはおまけを二つ。後書きだけだと寂しいかと思ったので。





おまけ1。SAO-銀ノ月-ファントム・バレット編- 予告


「俺とこの銃の名前は死銃……《デス・ガン》だ!」

「死銃……?」

 新たな世界は銃と硝煙の世界。その手にもはや、振るうべき刀はない。

「ゲーム内の弾丸で人間を殺害するのさ」

「あんた……なんか隠してない?」

「リズには……話したのか?」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる」

 そこで出会ったのは、自らを『SAO失敗者』と語る、爆炎を背後に笑う少女――

「この世界はスリリングで楽しいね!」

「踊り子……?」

「踊り子なんて生易しいもんじゃないわ。長生きしたいなら、あいつと関わるのは止めときなさい」

「じゃあこうしよう! 失敗したら――」

「……お前……」

「――死んでもらおうかなっ?」

 彼女が狂喜の笑みを浮かべて踊るなか、死の銃弾が暗躍する。かの浮遊城に囚われたままで。

「ご自慢の、カタナが、なければ、この、程度か。《銀ノ月》」

「光剣が届かない!?」

「死銃は……1人じゃない……」

「このままだと皆死んじゃうよ?」

「キリト!」

 銃弾と叫び声が交錯する、もう一つの世界の物語。

「こうなれば……ナイスな展開にしてやろうじゃないか!」

「届けっ……!」

「もっとexcitingなgameへの招待状さ」

 SAO-銀ノ月-ファントム・バレット- 近日公開

「いっつ・しょーたいむ!」


 ――(予告は事前の告知なく変更になる場合があります)――





おまけ2。ショウキvsスメラギ(ロストソングのネタバレ注意)

 ――岩塊原野ニーベルハイム。裏世界とも言われるその場所で、ラストダンジョンとして用意された中央塔の上空に、二人のプレイヤーが滞空していた。そのどちらのプレイヤーも、腰に日本刀――カタナを差しており、一触即発の空気を発していた。

 1人はウンディーネのプレイヤーであり、かつこの裏世界の攻略を最速で進めている、ギルド《シャムロック》の実質的なリーダー《スメラギ》。その冷徹な頬を片時も崩すことはなく、静かな表情を浮かべながら目の前の敵を睥睨する。

「全損決着モードで構わないな?」

 対するは、レプラコーンに転生したショウキ。かのユージーン将軍をも倒したという、現在この仮想世界で最強とも目されるプレイヤーと対峙し、自らを奮い立たせるが如くニヤリと笑う。

「いや……初撃決着モードにしよう」

「……なに?」

 かのSAOのシステムを引き継いだこのALOも、デュエルは初撃決着モード、半損決着モード、全損決着モードの3つから選択する。当然ながら全損決着モードだと考えていたスメラギは、そのショウキの提案に怪訝な表情を浮かべた後、見込み違いだったか――とでも言うように、ため息をつく。

「臆したか?」

「そうじゃない。ただ――」

 そう言いながらショウキは自身の誇るべき武器、日本刀《銀ノ月》の柄を握る。彼女とともに作り上げたそれを持ちながら、スメラギの腰に差されたカタナ《アメノムラクモノツルギ》――伝説級武器ほどのレア武器ではないが、よくカスタマイズされているのが見て取れる――を見据え、そう宣言する。

「――同じカタナ使いどうし、どっちが速いか勝負ってやつだ」

 初撃決着モードは、先に敵へクリティカルヒットを当てた方の勝ちとする、というルール。ショウキの提案したルールはまるで、西部劇のガンマンのように。もしくは真の侍たちが古来に行った、刀どうしの実戦のように。先に敵を切り裂いた方の勝ち、という単純極まりないルールだ。

「フッ……臆病者だというのはすまなかった。訂正しよう」

 ようやく少し表情を崩して笑うスメラギの前に、ショウキからPvPの申請が表示される。もちろん形式は初撃決着モードであり、ショウキの方は既に準備を終えていた。

「……面白い奴だ。だが、これでは少し、緊張感が足りないな」

 スメラギはそう言いつつ、デュエル申請を保留して自らのメニューを操作する。アイテムストレージを操作していたらしく、その手に毒々しい小瓶が二つ現れると、スメラギは何の躊躇いもなく小瓶を一つ飲み干していく。するとその毒々しい外見に違わず、スメラギのHPゲージが紫色に包まれたかと思えば、そのHPも急速に減っていき、赤いゲージまで減少すると、その減少値が緩やかになっていく。

 ――まるでクリティカルヒットを一撃受けたら、そのHPがちょうど無くなるようなHPに。

「……ふう。貴様もいるか?」

 スメラギが瀕死になった自らのHPゲージを、どことなく満足げに見つめた後、もう一つ同じ小瓶をショウキへと差しだしてきた。中身が何であるかなど、予想をするまでもない。

「…………」

 ショウキが初撃決着モードを提案したのは、同じカタナ使いだから、というのは全てではない……全ては勝つためだ。魔剣グラムを擁するユージーン将軍に勝利した、ALO最強のプレイヤーに勝てる、と確信できるほどショウキは自信家ではないし、夢想家でもない。

 ……だが、初撃決着モードならば。一回きりの奇策でも何でも使って、先に一撃を与えることならば、まだ全損決着モードで戦うより勝機はある。そう考えて初撃決着モードにした以上、スメラギが勝手に飲んだ毒を飲む必要はなく、これ以上不利になる要因を背負う必要はない。……ないの、だが。

「……貰おう」

 それでもショウキにその小瓶を貰わない、という選択肢はない。ショウキ自らが自身の勝率が高いモードを選択したように、まだデュエルは始まっていないものの、既に戦いは始まっているのだ。この申し出を断ってしまえば、ショウキは完全にスメラギに『呑まれる』。奴の方が格上なのだ、という意識がこびりつき、何度やってもスメラギとのデュエルに勝利はなくなるだろう。

「それでこそだ」

 スメラギに投げ渡された小瓶を飲み込むと、やはりその状態はスメラギと同じ状況になっていく。先に飲んだ分、少しだけスメラギのHPが減っている、というぐらいか。……これでこちらの小瓶にのみ、遅効製の麻痺毒でもあればショウキの敗北は決定するが、スメラギはそのような人物ではない。

「では……始めようか」

 ショウキが小瓶を飲んだことを確認したスメラギは、遂にデュエル申請メニューの『YES』のボタンを押すと、二人の顔の前にカウントダウンが表示されていく。ショウキが渡された小瓶を投げ返し、少し離れたショウキとスメラギの位置の中間点を飛んでいる――というところで、カウントダウンは0を指し示す。

「ハァッ!」

 先に仕掛けたのはスメラギ。裂帛の気合いとともに発動された、刃型の衝撃波を発射するカタナ系ソードスキル《残月》が放たれ、投げ返されていた小瓶を真っ二つに切り裂きながらショウキに迫る。もちろんただ放たれただけの斬撃に当たるショウキではなく、翼を展開しスメラギに接近する中途に、ついでのようにその斬撃の側面を飛翔して避ける。

 ショウキは不規則に飛翔しながら、クナイをあらぬ方向へと投げていく。当然、クナイたちはそのままどこかへ飛んでいく……訳がなく。ある地点にたどり着いた瞬間に、急激に方向転換すると、四方八方からスメラギを襲いだした。

 風魔法。それによってクナイの方向を変え、さらにスメラギに向けて誘導弾のような役割を果たす。レプラコーンに転生したショウキだったが、初期に習得出来る風魔法程度ならば、既に取り戻すように習得していた。

「……ふん」

 それをスメラギは、つまらなさそうにカタナを一度だけ振るう。ソードスキルでも何でもないその一振りで、四方八方から炸裂しようとしていたクナイの、ほぼ全てが二つに分割して地に落ちる。最後に顔を少しズラすと、残ったクナイはスメラギの髪を掠めて消えていった。

「まさか、これだけではないだろうな?」

「……当然!」

 不規則に飛んでいたショウキが、突如としてスメラギの方向に飛翔する。今までの勢いのまま、最高速でスメラギに接近する。高速で接近した後の斬撃――

 しかし、スメラギに見切れぬ速度ではない。飛翔するショウキを迎撃するように、スメラギはカタナを構えて一瞬の交錯に集中する……が、ショウキはスメラギに攻撃することなく、むしろスメラギを最高速で追い越した。

「もらった!」

 当てが外れたスメラギのカタナは空振り、ショウキは最高速からピタリとスメラギの斜め後ろに止まる。その手は日本刀《銀ノ月》の柄に添えられており、銀色の刀身が鞘から顔を覗かせていた。

「抜刀術――」

 そこで彼の最も得意とする技による、最速の一撃での決着。それをショウキは狙っており、目論見通りスメラギのカタナは空を切って隙が出来ており、あとは抜刀術を仕掛けるのみ。……そんな状況だったが、ショウキは抜刀術による攻撃を止め、正確に首筋を狙っていた日本刀《銀ノ月》を防御に回す。

 スメラギは、ただカタナを空振りさせていた訳ではなかった。彼はソードスキルを発動させ、それを空振らせていたのだった。発動したソードスキルは《朧月夜》――斬撃と同時に周囲に威力のこもった風圧を発生させる――誘い込まれたのはショウキの方だったのだ。

「くっ!」

 ソードスキル《朧月夜》によって発生した、威力を伴った風圧を日本刀《銀ノ月》で減衰しながら、ショウキはスメラギの上方を取る。制空権、という言葉があるように、頭上を取るというのは、それだけで決定的なアドバンテージ。

 そこでショウキは、《朧月夜》の風圧に乗った声を聞いた……スメラギが小さく発していた呪文の詠唱だ。光射す世界に、汝ら暗黒住まう場所なし――そんな意味を持つ呪文を、スメラギはクナイを弾いた時から詠唱を開始しており、つい先程完成する。

 光属性最大単発魔法《ディバイン・レイ》。世界を覆う厚い雲が晴れていき、空に巨大な魔法陣が映し出される。光は平等に魔法陣の下に降り注ぎ、その光に触れた術者の敵は一瞬で消滅する。

 スメラギの最大の魔法は完成し、魔法陣に一際巨大な光が瞬いた瞬間――その魔法陣は、ガラスのように崩壊していく。

「なんだと!? ……ええい!」

 スメラギはその表情を驚愕に変えながらも、空中で方向転換をすると、振るわれた日本刀《銀ノ月》を正面から受け止める。けたたましい金属音とともに鍔迫り合いが発生するなか、スメラギは崩壊する魔法陣の中心に、銀色の刀身が突き刺さっていたのを見た。

 その銀色の刀身は見紛うことなく、今、目の前にあるカタナと同じものだった。

「貴様……!」

 何が起きたを察したスメラギの怒りの問いに、ショウキはニヤリとした笑みで返す。日本刀《銀ノ月》には刀身を発射する機能が搭載されており、魔法の中心部を切り裂くことでその魔法を消す、という効果も付与されていた。よっていかなる大魔法だろうと、その刀身を中心部に発射することで、いとも容易く《スペルブラスト》が発生する。

 キリキリと金属音を鳴らしながらの鍔迫り合いが少し続いたが、徐々に不利に押し込まれるのは筋力値の劣るショウキ。一合、二合、三合、と何の小細工も差し込めない領域でカタナで切り裂き合い、四合目でショウキはスメラギの腹めがけて蹴りを放つ。

「ッ……」

 対するスメラギも、ショウキの蹴りに反射的に自分の足を動かすものの、足に刀が仕込まれているショウキには勝てず、そのまま勢いに負けて吹き飛ばされてしまう。ショウキはスメラギが不安定な体勢となったここがチャンス、とばかりに、刀身を鞘に仕舞い込んだ。

「終わりだ……!」

 そして一旦距離が離れたからか、ショウキもスメラギも同時に魔法の詠唱を開始する。ショウキは初期の魔法で時間もあまりかからず、スメラギは《高速詠唱》スキルにより、初期の魔法と同様の時間で魔法が完成する。

 ……つまり、魔法が完成したのは二人同時のことだった。スメラギの周囲に氷の矢が精製され、ショウキに向かって一直線に放たれる。ショウキが発動した魔法は何の効力も見せなかったが、代わりに力の限り日本刀《銀ノ月》の柄を握り締めた。

「抜刀術《十六夜――鎌鼬》!」

 ショウキが発動した魔法は風を増幅させる魔法。魔法の力により抜刀術の風圧が極限まで強化され、それは巨大な刃――いや、カマイタチとなってこの仮想世界に顕現する。全てを切り裂く風の刃として。

 スメラギが放った氷の矢を、まるで最初から、そこに何もなかったかのように切り裂き、スメラギにまで到達する。しかしカマイタチではスメラギを倒しきれない、と考えたショウキは、カマイタチを追って自身もスメラギのいた方向へ飛翔する。

「なるほど……これが貴様の全力か」

 そこでショウキが見たものは、蹴られて不安定な体勢のまま、カマイタチに対応しようとするスメラギではなく。

「ならば俺も全力を出そう……!」

 万全の体勢でカマイタチを待ち構える、巨大な左腕で身の丈程もあるカタナを持った、この世界での最強のプレイヤーの姿だった。

 ……スメラギが放った氷の矢は、ショウキを攻撃するためのものではなく、氷で自らの足場を作り出した時のついでのようなものだった。魔法で作り出した氷の足場で体勢を立て直したスメラギは、ショウキの切り札たる『抜刀術《十六夜・鎌鼬》』を視認し、彼もまた切り札でもって相対すると決めた。

 ショウキもその存在は聞いたことがある。ユージーン将軍とのデュエルの際、彼の8連撃OSS《ヴォルカニック・ブレイザー》を全て受け止め、返す一太刀で彼をリメインライトと化した、スメラギのOSSのことを。己とは別の巨大な左腕と刀を憑依、具現化し、巨人の如く妖精の抵抗ごと踏み潰す。その名は、確か――

 ――テュールの隻腕。

「うぉぉぉぉ!」

 こうなればあとは正面からぶつかるのみ。抜刀術《十六夜・鎌鼬》とともに、ショウキは気合いを込めた叫びをあげて《テュールの隻腕》へ突貫する。そしてスメラギが操る、具現化した巨人の刀とカマイタチと日本刀《銀ノ月》がぶつかり合う。

 この衝突はもはや鍔迫り合いが発生する、などといった次元ではない。毒によって減少した残り少ないHPゲージを、その衝突によって発生した衝撃波が削っていく。

「《クラウド・ブレイン》の実現のために……《シャムロック》のために……セブンのために! 邪魔はさせん!」

 スメラギがさらに全力を込めると、全てを切り裂くカマイタチに逆にヒビが入っていく。抜刀術《十六夜・鎌鼬》はあくまで魔法のため、発生した後は何も出来ないが、スメラギのOSSは違う。その巨大化した巨人の左腕に全力を込めれば込めるほど、威力は際限なく上昇する。

「くそっ……!」

 自身のギルド《シャムロック》のために。その悲願である《クラウド・ブレイン》のために。……そして敬愛するギルドリーダー、セブンのために。そう叫ぶスメラギの気迫と威力に、ソードスキルを使用出来ないショウキは徐々に圧されていく。

 風の刃と巨人の刃――もはや生じた衝撃波によって、お互いがお互いの姿も見えないものの、それでも勝利をもぎ取らんと全力を込める。……そしていつしか、魔法である抜刀術《十六夜・鎌鼬》は消失し、ショウキ側の威力が多大に弱まってしまう。

「――――ッ!」

「……消えろ!」

 当然その威力の減衰を見逃すスメラギではない。自身の左腕と化した《テュールの隻腕》を振り切ると、最後に一際大きい金属音が鳴ると、日本刀《銀ノ月》がどこかへ弾き飛ばされていった。

 ――そこに残されたのは、何かがこの仮想世界から消滅した際に生じる、ポリゴン片だけだった。スメラギは、そのリメインライトすら消え去ったらしいポリゴン片を確認すると、OSSを解除して巨大な左腕とカタナは消え去っていく。

「……いい決闘だった」

 リメインライトもなくなり聞こえている筈もないが、ここまでの戦いを繰り広げた剣士に敬意を払い、カタナを仕舞って黙祷のように目をつむる。



「……ああ、俺もそう思う」


 ――その声が耳元で聞こえてきた瞬間、スメラギはデュエルの決着画面が表示されていないことに気づく。目を見開いて背後を向くものの、スメラギが最期に見た光景は――

「お前も誰かの為に負けられない、って言うなら……俺だってそうだ」

 ――銀色の月のようなカタナだった。


 ……武道には《虚と実》という言葉がある。相手が気を張り巡らせている『実』ではなく、隙となった『虚』を狙え、という意味だが、スメラギにその『虚』のタイミングはなかった。唯一の、そして最大のそのタイミングは、ショウキが仕掛けた罠により、ショウキを倒したのだと誤認した時。

 あの時ショウキは《テュールの隻腕》に適わないと悟ると、その高威力と衝撃波で相手が見えない、という状況を利用しようと考えた。カマイタチの効果時間が切れた瞬間に、日本刀《銀ノ月》と着ていたコートを脱ぎ捨て、展開していた翼を仕舞い込んだ。

 その結果、翼を失ったショウキは地上に急降下していき、スメラギの《テュールの隻腕》は残った日本刀《銀ノ月》と脱ぎ捨てたコートを薙いだ。残ったポリゴン片はコートのものであり、あるはずのリメインライトも《テュールの隻腕》の威力から、跡形もなく消し飛んだとしても違和感はない。

 そして弾き飛ばされていった日本刀《銀ノ月》を地上で回収し、あとは最高速でスメラギに接近、そのまま背後から『初撃決着』を果たしたのだ。人間ならば誰しも『虚』のタイミングは存在するものだが……スメラギのソレは、最期の最期までその姿を見せなかった。

「ふぅ……」

 ウンディーネ特有の青いリメインライトを前に、ショウキの視界の横にデュエル決着画面が表示された。血を払うように日本刀《銀ノ月》を一度振るった後、ゆっくりと鞘へと戻していく。

「ナイスな展開だった……って言いたいところだが、まだやることが残ってるんでな」

 《クラウド・ブレイン》――それを止めるため、ショウキは再び翼をはためかせた。

 
 

 
後書き
お付き合いいただき、ありがとうございました<(_ _)>

次話から本編・GGO編に入ります。
 
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