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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第二幕その五

「結構前ですけれどね」
「五十年が少し前」
「そうなの」
「そうですけれど何か」
 ここでもです、女の人は老馬にも答えました。
「違いまして」
「いや、まあ」
「そう言うのなら」
「それで焼酎は」 
 女の人はあらためてです、先生に言いました。
「その沖縄の黒糖焼酎がいいのです」
「鹿児島のものではなくて」
「鹿児島もいいですけれど」
「沖縄のですか」
「はい、沖縄の黒糖焼酎がです」
 焼酎の中では、というのです。
「私はお勧めです」
「そうなんですね」
「沖縄の地酒もいいですけれど」
「それでもですか
「私のお勧めはこちらです」 
 こう先生にお話して勧めます。
「お魚にもよく合います」
「お刺身にして」
「そうです、あとウナギにも」
「エラブウナギですね」
 どういったウナギかはです、先生はすぐに察してこの生きものの名前も出しました。
「あれですね」
「そうです、エラブウミヘビです」
「沖縄の郷土料理で」
「あれとも合いますよ、沖縄はハブも美味しいですけれど」
「ハブもですか」
「こうして捕まえて」
 女の人はここで、でした。急に。
 右手をです、さっとまるで猫が前足を出すみたいな動きで出しました。見れば手の形も猫の足みたいにしています。
「それで食べちゃうんです、その後で焼酎を」
「あの、今の動きは」
「それって」
 ここでまたおかしなことに気付いた先生と老馬でした。
「その」
「その動きは」
「何か」
 先生も老馬もかなりおかしいと考えだしました、そして今度はです。 
 先生達のお顔の周りにです、不意に。
 虫がぷうんと飛んできました、別に何をするのでもないのですが先生達の周りを飛んできました。するとです。 
 女の人は虫を見てです、何故か。
 お顔をそちらにしきりに向けて虫に頭の動きを合わせてです、暫くして。
 うずうずとしだしてでした、瞳を縦にさせて。
「にゃっ」
 虫にその両手を出して捕まえようとしました、その動きを見てです。
 先生ははっきりと確信してです、女の人に言いました。
「貴女は猫ですね」
「あれっ、わかりました?」
「わかります、一連のお言葉や行動を聞きますと」
 それで、というのです。
「どう見ても猫、それも」
「猫又ですね」
「違いますか?」
「いやいや、流石先生ですね」
 こう言ってです、女の人は。 
 お身体の周りにどろんと白い煙を出してです、瞬時に。
 後ろ足で立った猫になりました、身体の大きさは猫のものになりましたが着ている服はそのままです。赤毛のとても可愛らしい外見です。
 見れば尻尾は二本です、先生も老馬もその尻尾まで見て言いました。
「やっぱりね」
「猫又だったね」
「五十年って聞いてまさかと思ったけれど」
「案の定」
「流石は先生、鋭いです」
「いや、君がね」
 むしろ猫又の方がと返す老馬でした。 
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