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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第二幕その四

 老馬は先生にです、こう言いました。
「あのお店だよ」
「そうだね、あのお店だね」
「名前も合ってるしね」
「間違いないね」
「じゃああそこに入って」
「うん、お酒を探すんだね」
「焼酎をね」
 まさにそのお酒をというのです。
「探しに行くよ」
「そうだよね」
「うん、どんな焼酎があるかな」
「じっくり探してね。僕はお店の前で待っているから」
「そうしてくれるかな」
「うん、待っているよ」
 こう言うのでした。
「そうさせてもらうよ」
「じゃあ早く済ませるよ」
「いいよ、ゆっくり選んで」
 そこはと返す老馬でした。
「立ったまま寝ているから」
「おや、そうしてなんだ」
「うん、待っているよ」
 そうするというのです。
「だからね」
「それでなんだ」
「うん、先生はゆっくりお酒を選んでね」
 こう言ってでした、老馬は先生をお店のところまで乗せて行きました。そうしてそのお店の前で、です。先生は馬から降りましたが。
 お店からすぐにです、先生が入る前にです。
 白いエプロンに丈の長いえんじ色の服と赤い上着を着た若い女の人が出て来ました。髪の毛は赤くて後ろにまでお下げにして束ねています、とても長くて腰のところまであります。
 目は少し吊っていて瞳は縦長の感じです、お顔は丸めでお口は唇は薄くてです。
 真ん中で上になっていて両走は下に下がっています、その若い女の人がです。
 先生にです、こう言ってきました。
「いらっしゃい、先生」
「えっ、貴女は」
「はい、この店の従業員です」
 こう名乗ってきました。
「お待ちしていました」
「僕のことを知っているんですか」
「はい、よく」
 そうだと答えるのでした。
「知っていますよ」
「あれっ、おかしいですね」
 先生は女の人の言葉に目を丸くさせて言いました。
「僕は貴女のことを」
「ご存知ないですか」
「はい、ですが」
「私は知ってますよ」
 背の高い先生を見上げてにこりとして言うのでした。
「それもよく」
「そうですか」
「はい、それでここにいらした理由は」
「お酒を買いに来ました」
 すぐにです、先生は女の人に答えました。
「焼酎を」
「あっ、焼酎をですか」
「美味しい焼酎を探しています」
「焼酎でしたら」
 それならとです、女の人は先生に笑顔で答えました。
「ありますよ」
「どの銘柄ですか?」
「沖縄産でして」
「沖縄ですか」
「はい」
 こう先生にお話するのでした。
「五十年前にあそこに行った時に見付けまして」
「五十年!?」
 先生も老馬もです、女の人の今の言葉にです。
「五十年ですか」
「そんな前に」
「そうですよ」
 女の人は先生だけでなく老馬にもお顔を向けて答えました。 
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