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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第二幕その六

「うっかりっていうか」
「おやおや、そうかしら」
「そうだよ、というか君の正体はわかったけれど」
「ばれちゃったわね」
「ばれても何もしないよね」
「殺すとか?」
「口封じでね、そんなことするのかな」
 老馬は猫又をじっと見てこのことを尋ねました。
「若しそうだとね」
「許さないっていうのね」
「僕はともかく先生にそんなことはさせないよ」 
 老婆は猫又に強く言うのでした。
「絶対に」
「そういえば貴方先生のお友達だったわね」
「とても長いね」
「だからこそなのね」
「僕だけじゃないよ」
 それこそというのです。
「皆がそんなこと許さないから」
「そうよね、やっぱり」
「正体の口封じとかで」
「そういえば日本の化け猫も」
 ここで先生も言いました。
「正体がばれたらその相手を」
「殺すよね」
「こうしたお話は世界中にあるけれどね」
「日本の化け猫もなんだね」
「うん、だとしたら」
「そんな物騒なことはしないわよ」
 猫又は笑ってそれは否定しました。
「秘密を守ってくれる相手には何もしないし。喋りそうなら」
「そうした人にはどうするのかな」
「私達の記憶を消すから、妖力を使って」
 そうしてとです、馬にお話するのでした。
「だからね」
「正体を知ってもなんだ」
「殺したりしないわよ」
 そのことは保証するのでした。
「悪い奴は懲らしめるけれどね」
「だといいけれどね」
「だって私達も人間と一緒に暮らしてるのよ」
 人間に化けてです。
「それだったらね」
「人間が嫌いじゃなくて」
「そう、私なんてここの四代前のご主人のところに里親に出されてなのよ」
 そうしてというのです。
「前の前の戦争の時にね」
「第一次世界大戦の頃かな」
「そう、あの頃に来て」
「それからなんだ」
「ずっとここでお世話になってるのよ」
「それで生きているうちにだね」
「気付いたら長生きしていたのよ」 
 この辺りは結構適当な感じだとです、先生と老馬は思いました。
「いや、それで妖力が備わっていてね」
「尻尾も二本になって」
「猫又になっていたのよ」
 そうなっていたというのです。
「いやあ、猫生もわからないわね」
「そういう問題かな」
 老婆は猫又の楽しそうにお話する様子を見て述べました。
「随分適当だね」
「そうかしら」
「僕が聞く限りね」
「それでご家族は皆私のこと知ってるのよ」
「君が猫又だって」
「ええ、それで代々大事にしてもらってるわ」
「それは何よりだね」
 老馬もそれはいいことだと返します、ですが。
 猫又にです、こうも尋ねました。
「それでだけれど」
「何かしら」
「君の名前は何ていうのかな」
「私の名前ね」
「うん、あるよね」
「あるわよ、その四代前のご主人がつけてくれたのよ」
 猫は老馬に胸を張って答えました。 
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