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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第二幕その三

「あれはね」
「姿形のことじゃないんだね」
「心だよ、心が化けものになると」
「僕達も人間もだね」
「そう、化けものになってしまうんだ」
「心なんだね」
「心が僕達と化けものの違いだよ」
 それこそ決定的な、というのです。
「心が魔物になってしまっては駄目なんだ」
「それで人間でも動物でもなくなるから」
「残念だけれど」
 ここで先生は哀しいお顔になるのでした。
「そうした人もいるんだ」
「そして動物も」
「その心が魔物になった人が」
「化けものにね」
「人を化けものと罵る人こそが」
「化けものになっていることも」
「あるんだよ」
 やっぱり哀しいお顔で言う先生でした。
「差別や偏見、憎悪によってね」
「化けものになるんだね」
「欲があまり深かったりするとね」
「というかね」
「というか?」
「先生はそうしたものがないから」
 偏見やそうしたものはというのです。
「欲も深くないから」
「そうかな」
「うん、化けものにはならないね」
「なりたくないね」
 それこそというのです。
「そうした存在には」
「そうだよね、心がそうなったら」
「どうしようもないから」
「うん、人間でなくなりたくないよ」
 先生は自分自身にも言い聞かせるのでした。
「僕は皆と一緒にいたいからね」
「化けものになったら駄目だよね」
「そうしたら君達と一緒にいられないよ」
「あれっ、そうなるの?」
「少なくとも人間としてはね」
 その心がそうでなくなればというのです。
「そうなるよ。例えば今まで慕っていた肉親を化けものと罵る人はどう思うかな」
「よくないと思うよ」
 老馬は先生にすぐに答えました、お酒屋さんに向かう道中で。
「それは間違ってるよ」
「そうしたことはよくないね」
「うん、絶対にね」
「僕はそうしたことはしたくないよ」
「サラさんに?」
「皆にだよ、例え君達がどうなってもね」
「僕が馬からライオンになっても」
 老馬はこう例えを出しました。
「そうなってもかな」
「うん、外見だけだよね」
「あと食べるものはお肉になるけれど」
「君は君だよ」
 その心はというのです。
「僕の友達のね」
「老馬だね」
「そうだよ」
 まさに彼に他ならないというのです。
「それでどうして手の平を返すのかな」
「先生は心を見ているんだね」
 ここでしみじみとして言った老馬でした。
「それが出来るって凄いよ」
「凄いかな」
「うん、凄いよ」
 心から先生に言った言葉です。
「そこがね、普通の人には中々出来ないから」
「そうは思わないけれど」
「そこをそう思えることが凄いんだよ」
「僕が?」
「うん、凄いよ」
「僕は自分が凄いとは思わないけれどね」
「自分で自分を凄いと思う人はそこまでだよ」
 この人生訓もです、老馬は先生にお話しました。
「先生は違うから」
「凄いのかな」
「本当にね、さて」
 ここまでお話したところで、でした。
 先生と老馬の前、住宅地の中に一軒のお酒屋さんが見えてきました。そのお酒屋さんを見てそうしてでした。 
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