戦国異伝
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第二百二話 関東入りその十一
「来るぞ」
「北条の軍勢が、ですか」
「城を築く前に」
「うむ、来る」
間違いなくだ、そうしてくるというのだ。
「だからじゃ」
「それに備えて、ですか」
「我等は」
「その北条の軍勢を押し返す」
そうして、というのだ。
「城を守りな」
「築く」
「そうされますか」
「そうじゃ、城を築いてじゃ」
信長は落ち着いた声のまま言っていく。
「そのうえでな」
「小田原を長きに渡って囲む」
「そうされますか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「わかったな」
「問題は何時来るか、ですな」
幸村がだ、その信長に言う。
「敵が」
「そうじゃ、だからな」
それで、と言う信長だった。
「十勇士達と飛騨者達にじゃ」
その彼等にというのだ。
「物見をさせてな」
「小田原を」
「そして敵に動きがあれば」
その時にというのだ。
「迎え撃ちじゃ」
「退けて、ですな」
「城を潰させぬ」
守り抜くというのだ。
「そうする」
「左様ですか」
「城は築く」
必ず、という言葉だった。
「築いてな」
「後は、ですな」
「その城を足がかりとして」
幸村だけでなく兼続も言って来た。
「小田原を囲み」
「そうしていきますか」
「そのうえでじゃ」
さらに言う信長だった。
「城に対して謀を仕掛ける」
「謀をですか」
「それを」
「そうじゃ、とはいっても北条の結束は固い」
家臣達のそれはだ、二十八将が主である氏康の下に一つになっている。このことは武田や上杉、ひいては織田や徳川と同じだ。
「だから寝返りや降ることはな」
「誘ってもですか」
「出来ませぬな」
「それはない、しかし流言を流していけば」
こちらはというのだ。
「兵達が動揺してな」
「士気が、ですな」
「落ちますな」
「それが少しずつ効いてくる、だからじゃ」
それで、というのだ。
「ここはそうした謀を使ってな」
「城の中に揺さぶりをかける」
「そうしていきますか」
「そのつもりじゃ」
これが信長の小田原への攻めだった。
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