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戦国異伝

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第二百二話 関東入りその十二

「城を攻めるのではない」
「人をですな」
「人を攻めるのですな」
「城を攻めるのは下策じゃ」
「そして、ですね」
「人を攻めることは」
「こちらが上策じゃ」
 だからだというのだ、ここではだ。
「上策を執るぞ」
「小田原の城は攻めずに」
「その人をですな」
「そして他にも心を攻めるものを使う」 
 信長は笑ってだ、幸村と兼続にこうも言った。
「もう一つな」
「?それはまさか」
「殿、それは」
「流石じゃな。わかったか」
 信長は二人の勘のよさに満足して笑みを浮かべて述べた。
「何を使うのか」
「はい、あれを城に攻めるのではなく」
「人を攻めるのに使われますか」
「小田原の兵達の心を」
「それを」
「そうじゃ、そして小田原におるのは兵達だけではない」
 このことも言う信長だった。
「民もおるな」
「では民の心もですか」
「そちらも」
「民を傷付けることはせぬ」
 このことは絶対だった。
「わしはな」
「しかし、ですか」
「その心は」
「攻めさせてもらう」
 命は奪うことはないが、というのだ。
「ここはな」
「そうされて、ですか」
「あの城を攻めますか」
「ただ鉄砲等で攻めるのではなく」
「この度は」
「あの城は力では落ちぬ」
 到底、という言葉だった。
「だからな」
「その心をですな」
「それを攻めるのですな」
「そういうことじゃ」
 まさにというのだ。
「そしてその間にな」
「他の城をですな」
「諸将の方々が攻め落としていきますな」
「一つずつな」
「確実に」
「そうしていくのですな」
「如何に巨大な城もそれだけでは成らぬ」
 信長はこのこともわかっていた。
「だからな」
「他の城も攻め」
「そして陥とし」
「そうして、ですか」
「この城も」
「攻めていくのじゃ」
 まさにというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
 幸村が応えた。
「すぐにですな」
「十勇士を呼ぶぞ」
 幸村の下にいる彼等をというのだ。
「よいな」
「畏まりました」
「そしてじゃ」
 さらに言う信長だった。
「北条の動きを探るぞ」
「では」
 幸村が応えてだった、すぐに彼の口から十勇士達に伝えられた。そのうえで北条の動きを見据えるのだった。


第二百二話   完


                          2014・10・19 
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