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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第一幕その六

「言葉自体に怖いものを感じるんだろうね」
「そうだったんだ」
「佐賀藩の化け猫の話は僕もまだ勉強中だけれど」
 それでもというのです。
「怖いお話だよ」
「本当にあったお話ですか?」
 トミーは先生の化け猫のことを尋ねました。
「それで」
「そうじゃないみたいだよ」
「そうなんですね」
「うん、ただその猫は黒猫だったから」
 それで、というのです。
「佐賀では長い間黒猫は好かれていなかったらしいよ」
「黒猫はよく不吉な存在とされますね」
「色のせいでね」 
 その黒のせいなのです。
「そうなりやすいね」
「日本でもそうなんですね」
「そうなるね、彼等には気の毒だけれど」
「小説でも怖いですし」
「ポーの小説がそうだね」
 そのタイトルがまさに『黒猫』です。
「あの黒猫は怖いね」
「はい、読んでいて忘れられない位です」
「それは日本でもなんだ」
 その佐賀のお話自体がです。
「怖いと思われているんだ、大阪は違うけれどね」
「あの街はですか」
「そう、あの街では黒猫はね」
 それこそというのです。
「商売繁盛として好かれているよ」
「お客さんを招くんですね」
「そう思われているよ」
「地域によって違うんですね」
「そうだよ、これは欧州でもだね」
「そういえば黒猫が好かれる場合と嫌われる場合が」
「猫自体がそうだから」
 先生は欧州における猫の歴史もお話するのでした。
「好かれたり嫌われたり」
「日本ではそこまでないですからね」
「うん、黒猫が嫌われることはあっても」
「猫全体はですね」
「嫌われることはないから」
「そうなんですね」
「そう、ただ本当に昔は尻尾が長い猫はいなかったんだ」
 それこそというのです。
「そうだったんだ、猫又にならない様にね」
「猫又も怖がられていたんですね」
「そうだったんだ、ただ」
「ただ?」
「実際の猫又は怖くないから」
 江戸時代思われていた様にというのです。
「別にね」
「怖いことしないんですね」
「そう、別にね」
「じゃあ狐さんや狸さん達と一緒で」
「愛すべき妖怪さん達だよ」 
 そうだというのです、こうしたことをお話してでした。
「あの人達も」
「この神戸にもいるとか」
「普通にあるかもね」
 オシツオサレツは二つの口でこうしたことを言いました。「ひょっとして」
「先生は妖怪さん達にも愛されてるから」
「自然と集まって来るからね」
「だからね」
「もう神戸にいてね」
「それで縁があればね」
「ふらりとね」
「僕の前に出て来るかもね」
 先生も笑って応えます。
「何らかの理由で」
「尻尾が二本あるとね」
 ここで指摘したのはチーチーでした。
「すぐにわかるんじゃ?」
「うん、目立つよね」
「そうだよね」 
 チーチーはジップにも応えます。 
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