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美しき異形達

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第四十一話 夜の熱気その八

「ホルモンとはまた違うけれど賑やかな場所なら」
「鶴橋みたいにか」
「天下茶屋の商店街も面白いわよ」
「天下茶屋か」
「そう、大阪の下町の商店街よ」
 まさに東京で言うと葛飾だ、とはいってもやはり寅さんはいない。寅さんは何処までも東京の下町の人だ。
「あそこは」
「そこもきつねうどんあるよな」
「きつねうどん以外にもね」
「色々お店あるか」
「ええ、実は天下茶屋に」
 その街にというのだ。
「お父さんの親戚の人がいて」
「菖蒲ちゃんも行ってるんだな」
「時々だけれど」
「それでか」
「その商店街も行くから」
 時々にしても、というのだ。
「だから」
「じゃあ行ってみてもか」
「いいと思うわ」
「まあとにかく本場のきつねうどんは食いたいな」
 薊は胃袋で考えてこう言った。
「それに大阪の下町の食いものもな」
「食べたいのね」
「是非な」
 菫にもだ、薊は答えた。
「食いたいな、ただな」
「ただ?」
「いや、ずっと関西巡ってきてるけれどさ」
 話題が変わった、これまでの食べものの話から。
「大阪って暑いな」
「あっ、気温のことね」
「かなり蒸し暑いよな」
 その日差しを浴びながらの言葉である、大阪の。
「いや、本当に」
「そうよ、大阪はね」
 菫もその薊に答える、それは既に知っている顔と声から出されたものだった。
「神戸に比べてずっと暑いわよ、夏は」
「いや、他の関西の地域と比べてもさ」
「暑いっていうのね」
「実際そうだろ」
 関西の全ての府県を巡ってきたからこそだ、薊はこう言えた。
「京都も暑かったけれどさ」
「大阪は」
「ああ、一番暑いよ」
 こう言うのだった。
「食いものも暑いのばっかりだし」
「きつねうどんにしてもね」
「串カツなりお好み焼きなりさ。けれどさ」
 その名物料理のことを差し引いてもというのだ。
「大阪は暑いよ。すぐそこに海があって川も多いのにな」
「人が多いせいじゃないの?」
 鈴蘭がこう言って来た。
「あと山が離れてるから」
「ああ、風が降りてこないからか」
「そう、神戸はまともに風が降りてくるけれど」
 所謂六甲おろしだ、この風で神戸は夏は涼しいのだ。
「他の場所もね」
「伊勢も白浜も山あったしな、すぐそこに」
「滋賀はもう琵琶湖があるから」
 水、それが多いからだ。
「涼しいのよ」
「盆地は暑いけれどな」
「熱が篭るからね、ただ奈良はそうでもなかったでしょ」
「盆地にしても広いからか」
「京都は狭いから。熱が篭るのよ」
 夏はそうなるのだ、これは盆地の特徴である冬はその逆となる。だから盆地の夏は暑く冬は寒いのである。
「けれど大阪はね」
「山が離れていて人も多くて」
「熱気が篭ってるのよ」
「そういうことか」
「その分冬は涼しいけれどね」
「この暑さは慣れていないと厳しいわ」
 黒蘭が言うことはというと。 
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