剣の世界で拳を振るう
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決着
「はぁ!」
回し蹴りを顔面に叩き込むが、体をそらして避けられる。
そのまま足刀で今度は胴体を捉えるが、腕をクロスさせてガードされる。
「降襲脚!」
蹴り上げから蹴り下ろしで死銃を牽制するが、やはりと言うか避けられて距離をとられた。
「それも、覚えている」
死銃はマシンガンに切り替えて乱射してきた。
「くっそ!」
俺は横に走り出して回避する。
そのまま建物の中へと入り、二階へ駆け上がる。
窓から飛び立ち、死銃の図上へとポイントをとって落下する。
「ブラボ流星脚!」
しかし回避され、ズドンッと地面に激突する。
「甘い」
「ちぃっ!」
側転、暴転で銃撃を回避しながらもう一度建物へと避難した。
あれから15分ほど戦闘を続けているがいまだにダメージは与えられていない。
それどころか牽制されてばかりで鼬ごっこな状態にある。
「どうにかしなきゃならんが…くそ」
俺は腰からガンブレードを取り出す。
弾は残り32発。こんなことならもっと購入しとくんだったぜ…。
”ガガガガガカガガッ!!”
「うわわわ!!」
死銃の乱射が俺のいた場所を撃ち抜き、俺は慌てて飛び退き、場所を移動する。
このままだと不味い。
「そこだぁ!!」
ダァンッ!
姿を見せた死銃を撃つが、慣れていないことも祟って的はずれな位置に着弾。
ガガガガガカガガッ!
「だぁぁもぉぉ!!」
何てしんどい戦闘なんだよ、と。叫びながらもその場から逃げる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「大丈夫かな……」
砂漠にある洞窟の中。
そこでキリトとシノンは隠れ潜み、サテライトスキャンを回避することに決めた。
「キリトは…ケンとどういう関係なの?」
シノンは小さい声でそう聞いた。
「ケンは俺の兄貴分で…SAO時代の戦友なんだ」
「SAO……やっぱり」
「ケンは俺が困ってる時とかを察知して助けてくれた。
何時も何かしらのトラブルがあれば惜しまずに助けてくれたんだ」
「………うん」
キリトは懐かしむように語る。
それはずいぶん昔を思い出すかのように、それでいてけの存在の大きさを確かめるかのように。
「ケンと一緒なら何時も何とかなってしまうんじゃないか…そうやって甘えてきた俺がいたんだ」
「……そうなんだ」
「シノンは…ケンと知り合いだったのか?」
キリトはふと、気になったことを聞いてみた。
「っ…今はまだ違う。
でも、いつか思い出すって、約束してくれたから…それまで待とうって思うの」
シノンは膝を抱えてそう言った。
キリトはこれ以上詮索しない方がいいと察し、言葉を切った。
―――ザッ
「っ!」「誰だ!」
突如、洞窟の入り口から足音が聞こえ、誰かが侵入してくる。
「何だ…ここにいたのか」
「ふう。疲れた」
入ってきたのはケンとフォックスだった。
二人は顔に疲れを見せていた。
―――――――――――――――――――――――――――
「いや、マジで助かったわ」
「見つけられて良かったよ」
洞窟にたどり着いた俺とフォックスはキリトとシノンに再開して作戦を練ることにした。
「ところで、死銃は?」
「倒せてない。フォックスが投げたスタングレネードで逃げてきたからな」
「そうか…」
俺の返答にキリトは俯く。
「安心しろ。俺たち以外にもう殺されるプレイヤーは居ない。
他のプレイヤーは全員リタイアを確認したからな」
「シノンがいるじゃないか」
俺はそう言ったのだが、フォックスから辛口な回答を出された。
「私は…気にしないで」
「シノン、お前さんが何を思ってBOBに参加したのかは知らん。
だがな、今回の事で確実にやらなきゃならんことは生き残ることだ」
「どういうこと?」
「まず、死銃のトリックだが――――――」
俺は推測ながらのトリックの正体を話す。
皆は黙って聞いてくれて、信憑性が高いことを口々に言った。
「ケン。俺達なら出来るか?」
「アホ言うな。出来るに決まってんだろ?」
「そうだね。3対1だ。負ける理由が見当たらない」
俺たち男子勢は口々に頷きあった。
「まって!私も行く!」
シノンは声を荒げてそう言った。
「…………よし。
死銃の一番面倒なところはスナイパーライフルだ。
シノンは狙撃位地を割り出して此を破壊。良くて撃墜してくれ」
「…了解」
「そしてキリトとフォックス。
外のバギーで突貫してもらう。タイミングは俺が指示するから安心しろ」
「タイミング?」
「スナイパーライフルの第1射はバレットラインが出ない。
だからこそ死銃に撃たせて位地を割り出すしかない」
「そして割り出してバギーで突貫ってことか…」
「yes。この作戦はそれぞれの集中力が試される。
絶対に犠牲者を出しちゃならん。良いな!」
「「「了解!」」」
さぁ、最後だ!
「……………すぅ………ふぅ……」
俺は一人で砂漠の真ん中に立つ。
洞窟入り口にはバギーに乗り、何時でも発進できるように待機したキリトとフォックス。
そしてそこから離れた場所にシノンが構えている。
「………」
俺は目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。
考えるのはアイツのしゃべり方や動き。
俺の戦い方を熟知していたのは俺と戦ったことがあるからだ。
だとすればSAOでの事に限られる。そして俺もアイツの戦い方を覚えている。
「……」
ラフィンコフィン…SAO時代の殺人ギルド。
幹部にはd人のプレイヤーがいて…それぞれに手練れの剣士がいた。
その中であの動き方や足の運び…該当するのは一人だけ…。
「赤目のザザ………っふ!!」
感じ取った殺気に全力で頭を剃らす。
ほほを掠めて通りすぎた弾丸は俺の後方へと飛んでいった。
「行くぞ!」
俺は飛び出し、バレットラインの示す位置へと走り出した。
フォンッ!フォンッ!と弾丸が打ち出され、俺は回避しながら、時に手甲で剃らしながら突き進む。
軈て後ろから俺を追い抜くようにバギーが通りすぎ、一直線に死銃に向かっていく。
座席に立ちながら襲い来る弾丸をキリトが過去利払いながら前進し、俺にも死銃の姿が見える位置までたどり着く。
そこでいきなり死銃の持つスナイパーライフルが破壊された。
「ナイスショット!シノン!」
キリトは飛び上がり、その勢いに任せながら死銃との距離を積めた。
「はぁあ!」
キリトは偽以バーチカルスクエアを放つ。
軽々と回避した死銃が腰からエストックを取り出した。
「エストック!やっぱりか!」
俺は走りながら確信した。
死銃はSAO時代の赤目のザザだ。あの動き、あのしゃべり方。
全てが俺の記憶と一致している!
「でやぁあ!!」
キリトの後方からフォックスが表れ、拳銃を構える。
死銃はその手を払いながら掴み上げ、投げ飛ばした。
「せぁ!」
キリトは背を向けた死銃に斬りかかるが、死銃は高く飛び上がったため、当たらなかった。
「ダイナミックエントリー!」
漸く到着した俺の全力助走つき飛び蹴りを死銃にお見舞いする。
空中に浮かんでいた死銃は避けることができず、もろに受けて数メートル吹き飛んだ。
吹き飛んだ先にあったのはキリト達が乗ってきたバギーで―――
「シノン!」
”ダァンッ!”
”ドガアァンッ!”
シノンの狙撃がバギーを破壊し、死銃を巻き込んだ。
立ち上がる炎から這い上がった死銃はエストックを構える。
「ご自慢のマントも燃えて無くなったな」
「お前たちは、俺を、倒しても、捕まえることは、出来ない」
「残念だがお前のリアルネームも、住所も全て割り出される。
大人しくお縄につくことだな」
「最後だ!」
俺達は一斉に走り出す。
先ずはキリトが斬りかかる。
善戦をする死銃にバレットラインが通過し、死銃の動きが止まる。
その一瞬を突き、数回に渡ってキリトの斬撃が襲いかかった。
「ふっ!はっ!」
続いてフォックスが得意とするCQCで死銃を翻弄し、打撃と銃撃を合わせた攻撃で最後に投げた押す。
よろよろと立ち上がる死銃に俺は肉薄する。
「覚悟を決めろ!」
死銃の脇腹に蹴りを入れて吹き飛ばし、ガンブレードを引き抜く。
「これに耐えられるのなら!」
残りの弾を全て使いきり、回転を加えた全弾乱射で射ち尽くす。
「奥の手を見せてやる!」
ガンブレードを投げ捨てて、両手を開いて力を込める。
そして踏み出す一歩に全神経を集中させて両手を突き出した。
「ランヴェルス・レゾン!!」
青色のエフェクトが走り、死銃の腹部を捉えて吹き飛ばした。
死銃は地面を転がり、倒れ伏す。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「やったか…?」
倒れた死銃を横目に、俺達は駆け寄った。
「まだ、終わら、ない…終わらせ、ない…。
あの人が…お前らを……」
死銃はそう言い残して力尽きる。
「あの人……?」
「………終わったのね」
死銃の言ったあの人と言うのが気になるが、今は全員無事だったことを喜ぼう。
「絶妙なアシストありがとう。お陰で助かった」
「別に、こうした方が良いかなって…そう思っただけ」
俺はシノンに向き直ってお礼を言った。
シノンは横を向きながらそう言う。
「さて、ようやく終わったな」
キリトが肩をコキコキ鳴らす。
横にはやり遂げた顔のフォックスがいて、同様に体を解す仕草をとっていた。
「ならそろそろ試合も終わらせるか」
俺が言うと、キリトは頷く。
シノンは俺の方をチラチラ見ていた。
「どうした?」
「へ、別になんでもないわよ」
「そうだ、もしかしたらまだシノンの部屋に死銃がいるかも知れない。
ログアウトしたら直ぐに警察に連絡するんだぞ?あと誰も部屋に入れちゃダメだ」
「わ、分かってるわよ!」
そんなに起こるなんて…ちょっと子供みたいな扱いが嫌だったか?
「で、でも…ケンが助けに来てくれてもいいんだよ?」
「……そうだな。起きたら直ぐにシノンの家に向かう」
「そ、そう。待ってる…」
「ケン、シノンの家知ってるのか?」
「………………何処だ?」
「ケン………」
「はぁ……」
俺の言葉にあきれ返る3人。
取り合えず俺はシノンの住所を教えてもらい、お互いにリアルネームを教えあった。
そして、そろそろ決着をつけなければならない。
そのウマを伝えると、シノンは俺とキリト、フォックスの手を掴んだ。
「せっかくだからさ、全員一緒に散ってみよっか?」
「「は?」」 「…………」
「北米サーバーの第一回Bobは二人同時優勝だったんだって。理由は優勝する人が油断してお土産グレネードに引っかかったから」
「お土産グレネード?それ、なに?」
「お土産……まさかっ!?」
キリトがアホみたいに聞くが俺には分かった。
おいこれ嫌だよ不味いよ助けて。
「負けそうな人が巻き添え狙いで死に際にグレネード転がすこと。ん、ほら、これあげる」
シノンはキリトにグレネードを渡す。
「へ?これって…」
キリトは訳が分からずに唖然とする。
「り、離脱!」
「逃がすかぁ!」
「てめ、HA・NA・SE!」
「だが断る!」
俺は逃げようとしたが、フォックスが俺の体を拘束し、逃がさないようにしてきやがった。
キリトは未だに固まっており、シノンはニコニコ笑っていた。
そして次の瞬間に爆発が起き、俺たち全員が一位と言う結果を残して決勝は終わったのだった。
そして現在、ログアウトしてから真っ先にシノン…朝田ちゃんの済むマンションに来ていた。
到着して直ぐに朝田と書かれた表札を見つけたが、中からはドタバタと暴れる音が聞こえてくる。
「朝田ちゃん!」
俺は扉を開けて中へと入ると、いつかの新川少年に押し倒される朝田ちゃんの姿を確認した。
「くのっ!」「くばぁ!?」
新川少年の顔を蹴り飛ばし、朝田ちゃんを抱き起こす。
「ちっと遅れたけど、助けに来たぞ」
「ケン……!」
俺の裾を掴んで小さく震える朝田ちゃん。
「だから誰も入れるなって―――っ!」
「…え?」
言い止まってから背中に痛みが走った。
後ろを向けば俺の背中に変わった形の注射器を打ち込む新川少年の姿が。
「ひひゃっ…お前が…僕の朝田さんをたぶらかして……死ねぇ!死んじゃえよぉ!」
新川少年は射ち終わった注射器を引き抜いて数歩下がる。
俺はといえば…。
「鉄拳制裁!」
立ち上がって新川少年の顔面に正拳突きをめり込ませた。
直撃した新川はそのまま後ろに吹っ飛び、壁に激突して気を失った。
「け、ケン!体…毒が!」
朝田ちゃんが俺の服を間繰り上げて傷を見ようとする。
「え?…何で……傷が……」
「神様ボディは伊達じゃないんでな。ははは!」
俺は心配してくれた朝田ちゃんの頭に手をおいてニカッと笑って返した。
朝田ちゃんは安心したのか、その場に座り込んでため息をはいた。
「心配、したんだからぁ…」
「悪かった。でも俺に薬物は効果がないんだ。
毒だろうが、麻痺だろうが。状態異常を来す症状は一切効かない体。それが神様ボディ」
「………ぷっ。何よ、それ」
そうして死銃事件は幕を閉じた。
しばらくして警察が駆け付け、新川少年は逮捕された。
後日キリトを交えて対談し、その結果を報告してから一息ついたのは何処かゆとりができたからであろう。
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