剣の世界で拳を振るう
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BOB本選
「さぁ、とうとう本選だ。お前ら簡単に死ぬなよ?」
翌日、ログインしてから直ぐに総督府へと向かって全員と待ち合わせる。
キリトは既に迷いはなく、昨日負けて落ち込んでいたフォックスもその影はない。
「ケンこそ、勝手に死ぬなよ?」
キリトはそんないい返しで意気込みを語った。
「さて、今回俺はお前ら二人とシノンは狙わない。
お前ら以外のプレイヤーを可能な限り倒して死銃を暴く」
「俺はシノンと行動する。
決着つけるって昨日約束したからな…」
「じゃあ俺はケンと回る。
一人だけだときつそうだからさ」
俺達はそれぞれに目標を決めて頷き合う。
シノンは既に壁にもたれ掛かり、集中力を高めているようだった。
そして―――
決勝が始まった。転送された俺は現在森林にいる。
なんで森林スタートなんですか…虫だけはマジで無理なんですけど…等とは言っていられず、とりあえず目的を確認する。
俺の目的はプレイヤーできる限り狩ることだ。
死銃の殺人方法は仮想世界で撃った相手を現実世界でそのプレイヤーにもう一人の死銃が殺すことと俺は推測している。
こいつらの殺人のルールは仮想世界で誰かを撃たなければ人は殺せないため、その根本である撃たれる側の人間を始末してやればいいのだ。それならば死ぬプレイヤーも居なくなる筈だから。
そう思いながら一秒でも早く死銃より早くプレイヤーに接近しようと俺は走り出した。
その時、俺の右肩に予測線が見えた。その先にはプレイヤーがいて、こちらを狙っているのが解った。
銃弾が打ち出され、飛んでくる弾丸を走りながら回避して、俺は木と木を蹴ってそのプレイヤーに接近する。そしてそいつの目の前に到着し、
「な……っ!?」
「じゃあな」
ボディーブロー、アッパーカットと繋げてガンブレードで胴体を真っ二つにした。
俺はそのプレイヤーのリタイアを確認した後、直ぐ様次の敵を見つけに走り出した。
暫くして森林の中で二人ほど倒した時、山岳に繋がる鉄橋を見付けた。
そこを走って渡ると、倒れてるプレイヤーがいるのを発見した。
全身タイツに真っ白の迷彩柄のプレイヤー。そいつにボロマントの奴が近付いた。
明らかに不審すぎる上に俺の勘が告げている。こいつが死銃であると。
そこから俺は全力で走る。
そして死銃が引き金を引く瞬間、俺は飛び上がり、空中から踵落としを繰り出した。
それに気付いた死銃が攻撃をかわす。降り下ろされた踵は地面に直撃し、コンクリートを散らばせた。死銃はそのまま姿を消していく。恐らく光学迷彩か何かだろう。
俺は未だ倒れ付しているプレイヤーに歩みより、数発打ち込んでリタイアさせた。
「はじめましてだ死銃。もしくは久しぶりか?
言っとくがもうその銃で誰かを撃たせねぇから覚悟しやがれ?」
「お前、覚えている。お前は、殺す」
「その片言、ラフコフの幹部だったやつだな」
「リーダーの、敵、ここで―――」
”ドゴォッ”
死銃が何かを言おうとしたとき、急に体を仰け反らせたかと思うと、その左の地面が抉れるように破壊された。
「狙撃…シノンか」
いつのまにか死銃は消えており、俺は山岳の方へと視線を向けた。
次は取り合えず町にいこうと走り出した。
___________________
その頃、ALO。
「お兄ちゃん、なかなか映らないねー。
ケンさんは結構暴れてるみたいだけど」
リーファがそう言うと、シリカも頷きながら言う。
「意外と言えば意外ですね。
キリトさんのことだからてっきり最初から飛ばしまくると思ったのに」
「いやいや、ヤローはあぁ見えて計算高ぇからな。
参加者がテキトーに減るまでどっかに隠れてる気かもよ?」
クラインが冗談じみた感じで言う。
「でもケンが彼処まで無双するとは思わなかったな」
「確かにケン君、なんだからしくないよね。
何時もなら一対一を好むのに…なんかまるで焦ってるような感じだし…」
アスナが肩にユイを乗せて言った。その乗ったユイも言う。
「そうですね。お兄さんのこれまでの言動や行動から察するにまず声を掛けてから戦いだすと思います。」
「ていうか、なんでは銃ゲーで拳使ってんのよ…これキリトも剣持ってるんじゃないの?」
リズが呆れたように言う。
「でも、お兄ちゃんのことが気になります…お兄ちゃんが他人の戦いを端から見てて我慢出来るはずがありません」
「つまり、試合優勝より大事なことがあるっていうの?で、でも…だとしたらどうしてケンさんとキリトくんは一緒にいないの?」
リーファが言うと、アスナが顎に手を当てて考える。
「ちなみによぉ、これ優勝したらいくらもらえんだ?」
「たった今公式サイト等から情報を集めて計算してみたのですが、優勝賞金は三百万クレジットとなってるので、全額還元すれば三万円となります」
「ありがとユイちゃん」
「あぁ、三万ね…判断材料には向かねぇな」
クライン、ユイ、アスナ、リズと話している。そこで、画面が変わり鉄橋の上。ペイルライダーがダイン相手に無双していた。
「うっわ…あの人強いですね…」
「ホント、早いし…動きが猿みたい…」
「それ褒めてるのリズ?」
シリカがドン引きしてリズが共感、アスナは呆れていた。
だが、モニターではそのペイルライダーが撃たれてしまった。そのまま倒れるペイルライダー。
「あれ?撃たれちゃった?」
全員が呆気に取られる。そして、ボロマントがペイルライダーに近付き、拳銃を抜く。
なんとなく流れる嫌な雰囲気、全員がそれを察した。
「おい、あれ撃たせていいのか?」
「よ、よくない…うぅんダメ!」
アスナが大声を上げた時、ケンがものすごい速度で走り、飛び上がって踵落としを繰り出した。
「ケンくん!」
「おぉっ!さすが!」
盛り上がるALO組。だが、次のケンの台詞がその雰囲気を壊した。
『はじめましてだ死銃。もしくは久しぶりか?
言っとくがその銃でもう誰も撃たせねぇから覚悟しやがれ?』
全員が黙る。最初に口を開いたのはアスナだった。
「ねぇ、シジュウってなに?」
「さ、さぁ…なにか人の名前なんじゃ…?」
「で、でもよぉ。ケンのあの目は完全に本気だぜ?
まるであの時の最終戦並の…」
「もしかして、お兄ちゃんが昨日からおかしかったのも関係あるんじゃ…」
「リーファちゃん。その話聞かせてくれる?」
そしてALO組の討論会が始まるのだった。
___________________
都市廃墟、そこで俺は死銃を探す。
もちろん、死銃が潜伏し、狙っている可能性もあるから、警戒は怠らない。
そんな中、シノンを見付けた。そして、その後ろに死銃の姿。
「シノン逃げろ!」
俺が声を出すと、シノンはこっちを見る。
そして、スナイパーライフルを構える死銃。俺は無意識にガンブレードを取り出した。
早撃ちだと俺に勝ち目はない。やるなら銃弾を狙う、行けるか?いや、行くしかない。
死銃の予測線に合わせて俺も発砲。狙い通り銃弾と銃弾がぶつかり合う。さすがの死銃も狼狽えたのか、怯む。その隙にシノンの腕を引っ張って、ビルの中に押し込んだ。
「なんで、死銃が…、ここに?」
「何でそれを……キリトか。
兎に角、お前たちの考えが甘すぎる!俺が奴を引き付けるからシノンはキリトと…」
「いや」
「はぁ!?」
「もう一人にしないで…お願い」
もう?もうって何だよ…。シノンを一人にするのに前科があるみたいに…。
くっそ…仕方ない。俺はスタングレネードを投げ付け、そのまま逃げた。途中で車と馬を見付けたので車を拝借。
シノンを後ろに乗せて、走り出した。
「シノン、後ろの車を壊すんだ!」
「え……?」
「あいつの移動手段を潰すんだ!早く!」
「う、うん…やってみる…」
シノンはライフルを構え始める。俺は運転に集中しようと前を向く。だが、後ろからライフルの発砲音が聞こえない。
「え……なんで……」
「何だ、どうした?」
「引けない…なんでよ、トリガーが引けない…」
その声は、掠れた悲鳴のようにも聞こえた。キリトがどこまで死銃について説明したかしらないが、あの男に対する恐怖が出てきたみたいだ。
見ると後ろから死銃が馬に乗って、銃を構えて追い掛けて来ている。
「ダメ、ダメよ逃げ切れない…馬の方が踏破力が高いの…車なんかじゃ…とても…」
なんで馬の方が車より早いんだよ!普通車だろうが!ジープだからいけないのか?
だあぁもう!さっきからシノンは震えが止まっていないし…。仕方ない、こうするしかないか!
「シノン、確り捕まってろ!」
「え?」
俺はドリフトターンして、ハンドルを離して椅子の上に立った。
死銃が容赦無く発砲してくる銃弾を手甲で弾きながら奴の馬にまっすぐ接近する。
「え?ちょっ…なにするつもり…?」
シノンは慌てて聞いてくるが、もう遅い。
車と馬がぶつかる直前に俺はシノンを抱えてジャンプする。
そして、俺の後ろでは大爆発が起きた。
「きゃあぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」
シノンの悲鳴が響き、俺は着地する。
そのままさっき車があった所に走るがそこでキリトとすれ違った。
「ケン!?これどういう…」
「状況の説明をしてる暇はない。
シノン連れて車で逃げろ」
「お前は?」
「車をぜんぶ破壊してあいつに追わせないようにする。
その後は死銃と一騎打ちかな」
「…勝てるよな?」
「さあな。ま、やるだけやるさ」
俺はシノンをキリトに預けて死銃に向き直る。おそらくあいつも生きているだろう。
俺は腰を落として拳を構える。
だが、そんな俺に後ろから裾を捕まれた。振り向けばシノンが立っていた。
「どうした?」
「お、願い…一人にしないで…」
「キリトがいる。心配はない?」
「ダメ…置いてかないで…死んじゃうよ…」
「俺は死なねぇよ。神様ボディだからな」
しかしこの様子だと死銃のトリックに気づいてないみたいだな。
かといってこのまま説明する暇もない。
「キリト、行け。お前は死銃のトリックを知らない。あいつには勝てない」
「……!分かった」
「え?待ってよ…」
「それと、」
シノンの制止を無視して、俺はキリトに言った。
「フォックスも拾っといてくれ。さっき町の入り口にいた」
「!」
「行け」
「……あぁ」
そのままキリトは車に跨る。
「待って!ケン!離れ離れはイヤァァァッッ‼︎‼︎」
シノンの声も虚しく、車は無情にもそこから離れて行った。
俺は残りの車と馬を全部破壊し、おそらくまだ死銃がいるであろう方向を見る。
「さぁ、かかってこい!」
そう吐き捨てて、俺は拳を構えた。
しかし奴には光学迷彩がある。恐らく策適にも引っ掛からないからどうしょうもない。
どれだけ探そうとも展開されていたらどうしようもないのだ。
「…逃げたのか?」
警戒は怠らないものの、未だに襲いかからない死銃。
「……探しにいくか」
俺は歩き出してその場から飛び退く。
丁度目の前を銃弾が横切り、建物の壁に当たった。
「イッツ、ショウタイム…」
「へっ!プーの台詞か、似合わねぇな!」
そう吐き捨てて俺は飛び出した。
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