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元虐められっ子の学園生活

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祭の賑わいと解ける緊張

緊張と言うものをご存知だろうか?
緊張とは、世間一般では大切な場面などで身体が硬直するように行動に制限がつく様な状態を指している。
しかし、緊張と言う言葉には数種類の意味があるのだ。
1つは心やからだが引き締まること。慣れない物事などに直面して、心が張りつめてからだがかたくなること。
これは今挙げられたような事である。
続いて2つ目は相互の関係が悪くなり、争いの起こりそうな状態であること。
これは他にも緊迫と言う言葉が当てはまるが、今はおいておこう。
3つ目、 生理学に置いて、筋肉や腱(けん)が一定の収縮状態を持続していること。
よく足が吊った等と言う単語が使われる事に対し、これが当てはまる。
そして4つ目。 心理学に置いて、ある行動への準備や、これから起こる現象・状況などを待ち受ける心の状態。
何かの現象や予想に心構えを持ち、常に警戒を怠らないようにする状態を指している。
私が言いたいのは正にこの事なのである。
常日頃から緊張して動き、対処や対応を怠らずに過ごして来た私は、長い間緊張を解いたことはないのである。
もしも緊張を解いたのなら。 私はどのような結果をもたらすのだろうか?










『開演三分前、開演三分前』

総武高校講堂。
全校生徒が集まる中、世話しなく動く学園祭実行委員。
比企谷から報告の伝令が届く。

『雪ノ下です。各員に通達。
オンタイムで進行します。問題があれば即時発報を』

インカムから雪ノ下の指示がくる。
俺自身には特に役割はないため、舞台袖から観客席の方へと視線を移した。
会場は生徒で溢れ帰り、談笑する者、パンフレットを読む者と言った感じに待ちわびている空気が流れている。
今回で間に合った事に少なからず達成感を持つ俺だが、気を抜けるのは学園祭が終わったあとであると気を引き締め直す。

『開演10秒前。9.8.7.6.5.4.3.2.1…』

『お前ら!文化してるかー!』

おおおおおおお―――!

『千葉の名物、踊りと~』

祭りーー!

『同じアホなら踊ろにゃあ!!』

thing a song!!

よし。開始は上々。
幸先の良いスタートだと言えるだろう。
後は挨拶関連の事項だが、練習してきたかどうかも怪しい相模がしっかり出来るかどうかにもよるが…無理だな。

『それでは、文化祭実行委員長より、ご挨拶です』

城廻先輩による司会進行に従い、相模がステージ中央へと歩いていく。
その表情は見るに耐えないほど緊張を示しており、冷や汗をかき、小刻みに震え、、思考回路の制限を掛けている。

『み――――――』

キィィン…と、マイクが反響を起こして相模の第一声を中断させる。
とことん運のないあの女に同情などは一切しないが、この分だとこいつの後に控えているスケジューリングを改正する必要が出てくる。

『比企谷君、巻くように指示を出して』

『さっきから出してる。緊張だかで見えてないみたいだが』

『そう、私の人選ミスかしらね』

『おい、それは俺の存在感の無さを揶揄してんのか!』

『誰もそんなこと言ってないわ。
それよりどこにいるの?客席?』

『めっちゃ揶揄してんじゃねぇか!て言うか見えてんだろお前……』

こいつらは何をしてんだ?楽しそうで俺も混ぜてほしいんだけど。

『以降、スケジュールを繰り上げます。
各員は相模さんのフォローをお願いします』

こんなときになっても相模に自立を促す…俺には到底出来ない真似だな…。雪ノ下のそう言うところは、素直に学ぶべきなのかもしれないが…ないな。





「今日はお集まりいただきありがとうございます」

講堂裏。そこに集まった10名ほどのボランティアの人達に挨拶をするべく、俺は声を張り上げる。

「事後報告で申し訳ありませんが、祭りを楽しんでいる人の中でひたすら活動など、疎外感剥き出しで詰まらないでしょう。なので、皆さんは祭りを楽しんでいただき、その過程でゴミ拾いなどを行っていただければ十分です」

本来ならこう言うことは許されないだろう。
しかし今回集まったのは全員が顔見知りで信頼感系だって気づけている。皆絶対にやってくれると確信しているのだから、これくらいの妥協は許されるはずだ。

「九十九ちゃん、ゴミはどうするかね?」

「各階に三ヶ所のゴミ袋が設置されています。足りなくなった場合、または満帆になった場合は会議室が用途の場所になりますのでそちらへ行っていただければ大丈夫です」

「いやぁ、こりゃ前回より盛り上がりそうだねぇ」

「ありがとうございます。
それでは各自、楽しんでください。お願いします!」

よし、これでボランティアの動きは問題ないはずだ。
あとはクラスの見回りと確認と時間調整だけだ。
先ずは校庭に行ってみるか……。



「よう。雪ノ下」

見回り中、偶然ながら雪ノ下の姿を見かけて声をかける。

「鳴滝君…そろそろエンディングセレモニーの最終打ち合わせが始まるわ。
講堂に向かってちょうだい」

「ああ。これから向かうさ」

雪ノ下の言葉を肯定で返して歩き出そうとしたとき、俺達の隣を走っていく二人の女子がいた。

「ほら!早くしないと終わっちゃうって!」
「待ってよぉー!」

「……何だ?」

「行けば分かるわよ」

そう言って先頭を歩き出す雪ノ下。俺は理解できずに雪ノ下についていくのだった。






講堂二階エントランスホール。
そこから見える風景は、講堂全体を見渡せるほどであり、講堂にいる全ての視線はステージへと釘付けになっている。
理由は簡単。ステージには陽乃さんが指揮者として立ち、その指揮棒を振りかざすことで演奏が始まった。

「…へぇ」

「…流石だわ」

ステージに立った陽乃さんは、指揮者ながらにその存在感を溢れさせ、その腕の動きひとつひとつに神経が行き渡っていた。

「流石…ね。
意外と言えば意外だな。雪ノ下が人を誉めるなんてのは」

「そう?これでも私は姉さんを相等高く評価しているのよ。
私も………いずれああなりたいと思っていたから」

…そうか…。…そうだったのか。
今まで雪ノ下が追っていた背中はあの人の物で…比較される世間体や価値観に苛まれて、歪みながらも追い続けることを諦めずに完璧であろうとした。
だからこそなのだろうか?雪ノ下は―――

「ならなくて良いだろ。そんな物…」

「……え?」

「対抗心や憧れを持つことに遺憾を唱えるつもりはないが、そうしてしまった時点で勝負は既についてしまっている。
他人の価値観や比較に左右されて自分を作り上げるなんざ愚か者のすることだ。
その人物はその人物のやり方や理念がある。そうした物を見つける方が余程有意義だし、確実だろう」

「…負け……」

「誰かになろうとしている時点で、負けを認めているような物なのさ。例え自分がそう認めていなくても、卓越した考えを持つ人間ならば直ぐに気づく……比企谷とかな」

「………そうね。
………………私は負ける気はないわ。私は私のやり方で、私のあり方を見つける。姉さんなんて追加点でしかないもの」

こいつは……負けず嫌いと言うかなんと言うか…。
ん?

ふと、雪ノ下の後ろに一人の実行委員が表れ、耳打ちで連絡を伝えていた。
雪ノ下は目を見開き、驚愕を露にした。

「どうかしたのか?」

「…今すぐ舞台袖に向かいましょう。相模さんがいなくなったそうよ」

「…了解した。直ぐに向かう」

俺達は話しを打ちきって講堂の舞台袖へと向かった。








「遅れたか?」

講堂に到着し、すぐさま舞台袖へと向かった。
そこには平塚先生を始め、城廻先輩達文化祭実行委員が勢揃いしていた。

「問題ない。それよりも…」

「相模が居ないんだろう?とうとうやらかしやがったか」

予想はしていたのだが、やると思っていた分焦りは出てこない。

「携帯電話も繋がらなくて…」

「参ったわね…このままだとエンディングセレモニーが出来ない…」

「最悪代役を…」

「それは難しいと思います。最後の挨拶や総評は何とかなったとしても、優秀賞と地域賞の投票結果を知っているのは相模さんだけですから…」

雪ノ下は顎に手を当ててそう言った。

「それなら投票結果をでっち上げれば良い。どうせ投票数は公表しないんだし」

「その必要は無いぞ」

俺は比企谷の言葉を遮って言う。こんな時のために対処しておいて正解だった。

「投票結果なら俺が知っている」

「どうして知っているの?あの用紙は一枚しかないはずだし、相模さんに一任された筈なのに…」

「チラ見しただけだ。アイツが見ているのを後ろから確認しただけ。
今の今まで職務放棄をしてきた人間を信用できないからな」

「……では代役を雪ノ下に頼む。その後の進行は城廻と合同で行ってくれ」

平塚先生の言葉に全員が頷く。

「どうかした?」

不意に、舞台袖に現れた葉山が会話に入ってきた。

「何でもねぇよクソッタレ。
さっさと準備してステージ上がれ」

「お前には聞いてないよ。雪ノ下さん、どうかした?」

「……ちっ。
比企谷、とりあえずあの女を探す。ふたてに別れて散策し、時間ギリギリで連絡を取り合おう」

「わかった」

俺と比企谷は外へと向かう。このままだと葉山が介入するのは目に見えて分かる。そうなる前に見つけ出せれば良いが…。






「……さて、何処にいるかね?」

俺は比企谷と別れ、三階の廊下にいた。ああいう奴が行きそうな場所なんてのは少数に限られてくるわけだが、時間のない今、そんなに回ってもいられない。

「あれ?九十九?」

「沙紀さん…そうだ。沙紀さんは一人になりたいとき、何処か適応した場所ってある?」

ふと声の聞こえた方を振り替えると沙紀さんが立っていた。

「どうしたの急に………そうだね、特別棟の屋上かな。彼処人気ないから」

特別棟…時間も間に合うな。

「ありがとう!」

「あ、ちょ!」

俺は走り出した。
もしかしたら比企谷も向かっているだろうが、そこに葉山がいれば連れ戻すことは必至。そうなればアイツは反省もしなければ失敗も思わないだろう。
ただ楽をして、その場を乗りきってしまうのは俺達の努力を皆無にしてしまうのはわかりきっている。

「間に合ってくれよ!」

そう吐き捨てて、俺は全力で階段を掛け上がるのだった。









「―――お―――だろ―――!」

バタンッ!

俺は目的の場所へ到着し、勢いよく扉を開けた。
そこには予想通り、相模がおり、その他戦力外な実行委員二人がいた。
そこから目線を左に向ければ、葉山が比企谷の胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。

「んのやろぉ!!」

それを見た瞬間に葉山の顔面に右ストレートを撃ち込んで比企谷から引き離した。

「葉山君!」
「葉山君大丈夫?!」

戦力外の女子二人が倒れた葉山に掛けよって抱き起こした。
俺の方を睨み付け、「何しやがんだこの野郎」と目で訴えてくる。

「時間がない」

俺は懐から一枚の紙を取り出して読み上げた。

「今この時をもって相模を実行委員長の座から解任。
副委員長、雪ノ下を委員長とし、この後の学園祭進行を行うものとする。以上」

「……は?何、それ…」

「比企谷、雪ノ下に連絡を。集計結果は既に伝えてあるから大丈夫だ」

「了解…………雪ノ下か?―――」

相模の言葉を無視して比企谷に雪ノ下へ連絡を回すように言う。
比企谷は直ぐに行動してくれた。

「何なのよそれはぁ!?」

「業務連絡だよ。分からねぇか?
お前が散々に職務放棄してくれておかげで、今年の文化祭は前年度より大幅に忙しくなってしまった。それらのことを踏まえ、教員及び実行委員の承認のもと、こう言った緊急時の対応として用意された解決策だ」

俺は相模に紙を見せびらかしてそう言った。

「知らない…ウチそんなの知らない!」

「残念ながらその返答は許されない。
これは承諾されるもとしてされた立派な書類だ。今更覆すなんてことは絶対に不可能なんだよ」

「鳴滝、報告終わったぞ。これから閉会式を行うそうだ」

「ん、了解だ」

俺は紙を折り畳んで懐へ仕舞う。
そして扉へ手を掛けようとしたところで葉山が怒鳴った。

「何でだ!相模さんを連れ戻しに来たんじゃないのか!」

「誰がそんなことを言った?
誰かさんの携帯に連絡が付かなかったから直接言うために仕方なく探したまでだ。連れ戻そうなんて微塵にも考えてなかったな」

「お前ぇ…!」

「残念ながら今の書類には元実行委員長の承認だって押されている。
既に決まったことを一々言わないでくれるか?」

「ウチそんなのに判子なんて押してない!」

「委任しただろ?雪ノ下に……」

「え……あ…」

「じゃあな」

俺と比企谷はその場を後にする。
残された四人は何も言わずにその場に立ち尽くすのみだった。










「流石に疲れたな…」

無事、学園祭は終了を迎えた。
雪ノ下は委員長としてその後のエンディングセレモニーを全うし、挨拶までもを完璧にこなした。

「ううっ……う~…」

「大丈夫?」
「アイツが変なこと言わなければちゃんと出来たのに…」

方付けの最中、何故かまだ残っていた相模と取り巻き二人が傷を嘗め合うように慰めていた。

「あの二人マジヒデェからー!夏休みん時も、葉山君殴って笑ってたしー!」

「殴られたのか葉山!先生に言った方が良いんじゃないのか!」

「……良いんだ。彼らにも悪いところはあるだろうしね」

例の葉山の集団も、事後報告の様に口々に俺と比企谷の誹謗中傷を言い始めた。
ふと見れば由比ヶ浜や沙紀さん、戸塚が俺と比企谷を労うように見ているのに気づいた。
目線が会うと暫くして歩いていってしまい、どうやら気にするなと、そう言っているように感じたのは気のせいではないだろう。

「ひゃっはろー!」

後ろからは陽乃さんと平塚先生が歩いてきた。

「いやー、二人とも最高だねぇ!皆から聞いちゃったよその活躍ぶり!」

「活躍も何も、危機管理の範囲内です。予想をたてるのは比較的簡単でしたから」

俺は方付けをしながら陽乃さんの言葉に返事を返した。

「私的には結構好きだよそう言うやり方は。ね、静ちゃん」

陽乃さんは平塚先生の肩を叩いたあと、一人で去っていった。

「はぁ…結果的には君達の尽力は多大な物だった。だが、葉山を殴ったと言うのはちょっとな…」

平塚先生は俺の肩に手をおいてそう言った。
まぁやはりと言うか、噂が流れるのは早い。このまま行けば俺が不良であると言う噂は事実として学校中に広まることは間違いないだろう。本当に今更だが。

「次からは気を付けろよ、比企谷」

「ちょ!おい!何で俺がやったことになってんの!殴ったのお前だろ!」

「直ぐ様反応してくれる比企谷はとても頼もしいぜ。ま、アイツは殴られて当然の男ですから。その事については反省も後悔もしてません」

「そうか。何にせよ学園祭も終わりだ。片付けが済み次第、体を休めたまえ」

平塚先生は片手を上げて去っていった。
何かを察してくれる人ってのは大きく貴重だと言えるし、無くしたくないものだと思う。
俺は引き続き、片付け作業に戻るのだった。








ガラッ
俺と比企谷は奉仕部の部室へと赴いていた。

「あら、ようこそ。
校内一の嫌われ者と恐怖の権化さん」

入室して早々に雪ノ下がそう言ってきた。
久しぶりになる雪ノ下の饒舌に少しホッとしたのは内緒である。

「喧嘩売ってんのか」

「不本意ではあるが、受け入れておこう」

俺達は席に座る。

「打ち上げはどうしたの?行かないの?」

「事後処理の用紙が数枚残ってるからな。それを仕上げてから帰ることにしてる」

「わかりきったことを聞くな。絶対に行かねぇよ」

「どう?本格的に畏怖されるようになった感想は?」

「そうだな…存在を認められるってのは良いものだな」

「右に同じ」

どうやら俺の感想は比企谷と同じらしい。

「驚くべきか呆れるべきか…貴方達ははっぱり変ね。
その弱さを肯定してしまう部分、嫌いではないけれど」

「おお。俺も嫌いじゃねぇんだ。むしろ大好きだね。こんな自分が」

「弱さってのが完全に悪と言うわけではないからな。寧ろ、俺は弱いままでいたいね」

逆に言えば、弱い奴が強いやつに敵わない謂われも無いのだ。様は気の持ち方、考え方で人は強くなったり弱くなったりするのである。

「んで?お前はここで何やってんの?」

「進路希望表を書いているのよ。実行委員で忙しくて中々書く時間がなかったから。それに、誰かさんに今までの考えを覆されてしまったから」

「誰かさんって誰だよ」

「内緒よ…ふふっ」

「内緒ねぇ…。由比ヶ浜辺りか?他には…平塚先生とか、陽乃さん辺りも妥当な線だよな」

「…はぁ」

「……んだよ?」

いきなりため息を吐かれた。
別に変なこと言った覚えはないんだけど。

「…なぁ、二人とも」

「ん?」「何かしら」

突然、比企谷が歯切れ悪く言葉を紡ぐ。その顔は何処か言いづらいことを口にするかのようで……

「俺とt―――」

「ごめんなさいそれは無理」

「くっ!最後まで言ってねぇだろ!」

比企谷の言葉を遮って雪ノ下がそう言った。何を言おうとしたのかは分からなかったが、その雰囲気が俺には大変心地良い。

「くく…なぁ比企谷」

「んだよ」

俺はクスクスと笑いながらも比企谷に目線を合わせる。これから言うことは俺の口から初めて出る言葉で、それでいて儚く脆い言葉でもある。

「よかったら、俺と友達になってくれねぇか?」

「ぁ――――――」

比企谷は目を見開く。
信じられないものを、あり得ないものを見て、感じたかの様に俺を見て、比企谷は硬直するのだった。

「…駄目だったか?」

「あ、いや………別に、良いぞ」

「ん」

良かった。
これで比企谷に断られていたら数日間引きこもっていた自信がある。

「雪ノ下は良いのかよ?」

「へ?ああ。雪ノ下は由比ヶ浜の誕生日の買い物の時に「鳴滝君」………はい」

「それ以上の言葉を繋げるのなら…私にも考えがあるわ」

怖かった。
何時もは凜とした目をしている雪ノ下の瞳には「それ以上言うな」と示されており、何時ものような凜ではなく冷…もっと言えば極寒のごとき冷たさが伺えた。

「(お前何かしたのか?」

「(いや、覚えがない…」

雪ノ下の恐ろしさを比企谷と二人、小声で話し合う俺達だった。


ガラッ

「ぃやっはろー!」

扉が開き、入ってきたのは由比ヶ浜。

「文化祭御疲れー!と言うことで後夜祭に行こー!」

「行かない」「行かねぇ」「帰る」

三人の同意件。
由比ヶ浜の誘いを即答で切り捨て、黙々と字を連ねる。

「んで?その後夜祭って何?」

「知らないで断ったの!?後夜祭って言うのは…えーっと、その…打ち上げの大きいやつ的な?」

「お前もよく知らないのかよ」

一気に騒がしくなる部室。
あれだけ気まずい雰囲気が流れていたのに、何事もなかったかの様に集まった奉仕部のメンバー。
誰一人欠けることもなく、誰一人嫌がらない。
そんな何時もと同じようなこの時間が、俺にはかけがえのないものの様に思える。

「これで…守れ……だ…な」

そんな気持ちが溢れ帰り、今まで張ってきた緊張が全て解け、俺は―――

ドサッ

「ちょ、鳴滝!?」

「鳴滝君!どうしたの!?」

「ツクモン!そうだ!先生!」

おかしいな…床が真横にある…三人は慌ててるし、どうしたんだ?
あー、眠い……明日は振替休日だし……のんびりすごそうかなぁ……。

「どうした!」

「先生!ツクモンが!」

更に騒がしくなる周りを気にせず、俺の意識は完全に遠退いていった。 
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