元虐められっ子の学園生活
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嫌悪な空気をお届け
前書き
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
修羅場。
とある男子に複数の女子が重なりあうことを指す言葉である。
こうなった場合の大半は男子が悪く、故意であろうがなかろうが責任を取らされるのが定石なのだ。
そうなってしまう事の原因としては、勘違い、見解の相違、女囲い思想等が上げられる。
特に酷いのが女囲い思想である。
女囲い。別名ハーレム願望。
一人の男子が複数の女子にアプローチを掛ける事を指す。
現代日本での結婚制度は一夫一妻制であるのに対して一夫多妻等が認められるはずもない。
もしもそんな思考を持った輩が居るのなら、そいつは腐っているとしか言いようがないだろう。
仮に一夫多妻が認められた世の中だとしたのなら、結婚できない男性が続出し、絶望的な世の中に様変わりを果たすことは間違いない。
でなければ世紀末と同意義である。
………話が剃れたようだ。
兎に角私が言いたいのは、今目の前で起こっている現状に覚えがないと言うことである。
「アンタは家に帰ってなよ。後は私がやるから」
そう言った少女は河崎沙紀さん。
青みがかかったら白髪を持ち、スタイルもよくて家族思いな綺麗な女性。
「あら、それこそ帰らなくてはいけないのはそちらの方ではなくて?
家族がいるのだから、彼の介抱は私に任せて」
片やもう一方の少女は雪ノ下雪乃。
しなやかな黒髪を持ち、スタイルこそ劣るものの、清楚な顔立ちとその立ちずまいは見るものを魅了する素養の持ち主である。
………さて、現実逃避はもうやめようか。
取り合えずどうしてこんな状況になったのかを説明しようと思う。
昨日、俺は学園祭終了後、部室にて気絶した。
今まで身体を行使し続けてきたせいか、張り巡らせていた緊張が溶けたとたんに倒れたのだ。
その後、病院まで搬送されて診断。結果は「過労」であった。
しかしそこまで酷いものではなかったらしく、検査入院と言うことで話はついたかと思われた。
そこで出てくるのが入院費用である。
俺の気持ちを酌んでくれたのか、平塚先生は俺の家まで運んでくれたらしい。
それから2日間、眠り続けた俺は3日目の昼過ぎに目を覚ました。
学園祭から既に日にちが経っていることを知った俺は、急いで学校へ連絡し、バイト先にも報告を入れた。そしてじっとしていることも出来ず、バイトに行こうかと思ったところで来訪者が現れたのだ。
”ピンポーン”
鳴り響くインターホン。
恐らく奉仕部の人間だろうと予想をたて、構っている暇はないと自己完結してスルー。
そして下から「はーい」と言う陽菜の声が。
「ちょっ!待て、出るな!」
そう言ったのも遅く、既に客人は家の中へと招かれていた。
俺は急いで部屋の窓から脱出を試みたのだが、
「病み上がりが何処へ行こうと言うのかしら?」と、雪ノ下が極寒の目で俺を見つめていた。
時は既に遅かったのだ。
その後、どうして逃げようとしたのかと聞かれ、じっとしているのも何だからバイトに行こうとした。
と良いわけをした。……まぁ、散々罵倒されたのだが。
更にそこへ来訪者が訪れ、雪ノ下と目があった瞬間に冒頭へと戻る状態となったのだ。
因みに陽菜は逃げた。
「小町ちゃんと遊んで来ますね!」と言って逃げていった。
俺も連れていってほしいと切実に願ったのはおかしくないはずだろう。
「取り合えず二人とも。お見舞いに来てくれたのは嬉しいし、ありがたいと思う。
先ずは穏便に話をしようじゃないか」
…なんだろう。浮気のばれた夫の心境になってきた。
「鳴滝君。私は常に冷静を保っているわ。
むしろこちらの彼女が事を荒げていると思うのだけど」
「は?私から見るにアンタが冷静を保ちながら挑発してるように思うんだけど?」
「「…は?」」
何なのこれ?もうヤバイよ…!
会話に混ざるどころか阻害されて二人だけのバトル空間作りはじめてらっしゃる。
どうやって収拾つけるか分からんのですが…こんなとき誰か仲裁には入れる勇者が居ないものか………!
「ちぃーす…失礼しました」
「まてまてまてまてまてまてまてぇ!!」
突如現れたのは先日出来たばかりの友人、比企谷八幡だった。
比企谷は俺達を目視した瞬間に踵を返して帰ろうとしやがる。
「(お願い助けてマジで一生のお願い!」
俺は比企谷の足を掴み、小声で頼み込む。
「(バッカお前、こんな殺伐とした空気に自ら飛び込めって言うのか?
何処の自殺志願者だよ」
「(助けてくれよ!見舞い序でに!」
「(見舞いよりもこっちがメインだろ!俺には荷が重すぎる!」
あーでもない、こーでもない。
「鳴滝君。私はそろそろ帰ろうかと思うのだけど、良いかしら?」
比企谷と言い合ってしばらく、雪ノ下がそう進言してくる。
「へ?あ、ああ。分かった」
「九十九。私も今日は帰るよ。またバイト先でね」
どうやら沙紀さんも帰るようだ。
「そ、そう?分かった。またね」
もう何が何やら。
俺は流されるままに二人を見送った。
帰り際でさえも二人はお互いに視線でバチバチと牽制しあっており、はっきり言ってあの空気から解放されることを喜んだ俺は悪くない。
「なぁ、鳴滝………」
「何だ比企谷……」
再び居間に戻り、比企谷と対面して座る。
比企谷が話を切り出し、俺もそれに答えるべく返した。
「お前何したんだよ」
「何にもしてない……筈だ」
そもそもあの二人は見舞いに来ただけのはずで、誰が出会った瞬間に牽制しあうのかが分からない。
仲が悪いのか、はたまた別のことがあったのか。
まぁ知ることはできないのがむず痒いな。
「まぁこれ以上は触れないでおこう。
それで、明日からは来れそうなのか?」
「ん?ああ。体の調子は好調を通り越して絶好調だ。
前よりも軽くなった気分だ」
「ならいい。お前が居ないと何故か部室の空気が重いんだ」
空気が重い?険悪ってことか?
「明日からはしっかり行く。心配ない」
「それなら良いんだ。じゃあな」
そう言って帰っていった比企谷。
取り合えず学校に行くのは問題ないだろう。
しかし気がかりなのがあの女の件。実行委員の邪魔をされたなどとのたうち回れば確実に負けるのは俺の方だろう。
となれば俺は責任をとって退学や謹慎処分が下される。
「また忙しくなるな…」
そう呟きながらも、俺は明日の準備を始め、それと平行して対応を考えるのだった。
後書き
なかなか更新できなくて申し訳ありません。
諸事情により仕事を増やすことになったため、更新できるペースがかなり落ちることになりました。
ご迷惑をお掛けすることとなりますが、生活が落ち着き次第ペースが上がるので、見捨てないでいただけると幸いです。
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