美しき異形達
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第四十一話 夜の熱気その五
「そうだけれどね」
「孤児院でも院長さん下着で寝たらいけないって言っててさ」
「そう、寮でもね」
ここで薊と同じ寮生の裕香が言って来た。
「パジャマかジャージで寝なさいって」
「下着とか裸で寝ない様にってな」
「規則であるのよね」
「あれって服装の乱れと」
「それ以上に身体を冷やさない」
「それでなんだろうな」
「そうよね、身体は冷やしたらいけないから」
裕香もこのことはわかっている、身体を冷やしていいことはない。特にスポーツ選手は身体が固くなって怪我の原因になる。
「特に私達はね」
「女の子はな」
「そう、冷やしたら」
それこそなのだ。
「赤ちゃんとかにね」
「悪いんだよな」
「だから冷やしたらいけないのよ」
「それで秋茄子もか」
「茄子は身体を冷やすから」
それでなのだ、秋茄子は嫁には食わすなというのだ。子供を産む嫁が身体を冷やしてはいけないという考えから来た言葉だと一説には言われている。
「あまりね」
「よくないんだな」
「冷やしていい時もあるけれど」
身体も熱過ぎるとよくない、機械もそうであるがオーバーヒート、即ち熱中症になってしまうからである、夏は特に。
「それでもね」
「夜とかはな」
「冷やしたら身体に毒だから」
「それで寮もな」
「そう、服を着て寝る様になってるのよ」
「下着姿で寝るとな、裸は余計に」
薊は裕香と話をしてあらためて言った。
「冷えるからな」
「そう、服を着て寝る方がいいのよね」
「裸で寝るのって海外の映画とかであるけれど」
わりかし出て来る、そうした場面は。
「けれどな」
「実際にはね」
「あまりよくないか」
「冷えるからね」
とにかくこれに尽きた。
「身体は出来るだけ冷やさない」
「そういうものだな」
「だからシャワーよりお風呂の方がいいし」
「身体をほぐす為にもな」
「それでなのよ」
風呂のことも話した、そしてだった。
そうした話をしつつだ、薊は仲間達に言った。
「食うもん食ったし戦いも終わったしな」
「それじゃあよね」
「本当に帰るか」
ホテルにというのだ。
「そしてお風呂に入って寝るか」
「そうしようね」
裕香が応えてだ、そのうえで。
少女達はこの日は休んだ、それから。
次の日も大阪観光を楽しんだ、大阪城に行ってから住吉大社にも行った。夏の住吉大社はあまり人も多くない。親子連れが時折見られる位だ。
その大社の中を歩きつつだ、薊はこんなことを言った。
「何かここってさ」
「何かありますか?」
「公園みたいだよな」
こう桜に応えて言ったのだった。
「どうもな」
「そうですね、今はそう見えますね」
「夏休みはいないんだな、人が」
「お正月は違いますが」
その時はというのだ。
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