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戦国異伝

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第二百一話 酒と茶その四

「適度じゃ、そしてそのよき欲ならばな」
「よいと」
「天下の為に御主にも働いてもらう」
 こう兼続に言うのだった。
「よいな」
「さすれば」
「さて、それではな」 
「これよりですな」
「御主は織田家の家臣としてわしの傍に置く」
「幸村殿と同じく」
「そして働け、よいな」
 兼続もまた信長の傍に仕えることとなった。そのことまで決めてからだった。
 信長は上杉の兵達を一旦越後まで返してからだ、家臣達に言った。
「ではこれよりじゃ」
「はい、いよいよですな」
「次は」
「北条じゃ」
 この家を攻めるというのだ。
「この信濃からじゃ」
「甲斐、そして武蔵からですな」
「相模まで攻め入りますな」
「そうじゃ、そして小田原を攻める」
 その地をというのだ。
「よいな」
「それが、ですな」
 ここで言ったのは羽柴だった。
「この度の一連の戦の最後の詰めですな」
「その通りじゃ」
 まさにそうだとだ、信長も羽柴に答えた。
「だからこそな」
「あの小田原城を」
「陥とす」
 断言だった、まさに。
「陥ちぬ城はないからな」
「あの難攻不落の城をですか」
 柴田はあえてこう信長に問うた。
「攻め落としますか」
「そうじゃ、城には人がおらねばな」
 それこそ、というのだ。
「守れぬな」
「そして小田原には常に多くの兵がいますな」
「人がな」
「では、ですな」
「ほう、わかったな」
 信長は柴田の今の言葉と彼の笑みを見てにやりと笑った、そのうえで彼に言った。
「流石じゃな」
「攻めることならば」
「そうじゃな、御主ならわかると思っておった」
「はい、では」
「一日休んでからじゃ」
 大きな戦の直後だ、休息は必要だった。しかしそれが終わってからというのだ。
「進むぞ」
「小田原にですな」
「いよいよ」
「そうじゃ、小田原を攻め落としじゃ」
 そして、というのだ。
「この大きな戦を終わらせる」
「北条を倒せば」
 今度は丹羽が言って来た。
「関東は完全に手中に落ちますな」
「佐竹や結城、宇都宮、里見といますが」
 それでもとだ、滝川も言う。
「それぞれの家も当家と北条の戦がはじまればこちらにつきますな」
「既にそういった家からは文が来ておる」
 林通勝が二人に答えた。
「よしみをとな」
「では、ですな」
「織田家と北条家の戦がはじまれば」
「その時は」
「そうじゃ、そういった家は織田家につく」
 そうなるというのだ。
「そして当家に入る」
「では北条との戦がですな」
「まさに最後の正念場ですな」
「小田原に進めば同時に」
 ここで言ったのは佐久間だった。 
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