美しき異形達
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第四十話 大阪の華その十四
「空襲でも天守閣だけ残ったし」
「あそこだけか」
「そう、大阪城の辺り工場で徹底的に空襲受けたけれど」
それでもだったのだ、天守閣だけはだったのだ。
「天守閣だけは健在だったの」
「それで今もか」
「残ってるのよ」
向日葵はにこりと笑って答えた。
「有り難いことに」
「何かそれって凄いな」
「だから今の大阪城はいいのよ」
「立派なんだな」
「立派というか何か大阪の象徴なのよ」
「タフなか」
「そう言っていいものなのよ」
向日葵は今度は普通の豚肉の串カツを食べつつ述べた、そしてそれから自分のジョッキのビールを飲んだ。
「まあ私は神戸人だけれど」
「大阪城好きなんだな」
「そうなのよ、私的には大阪城が一番好きよ」
そうだとも話す向日葵だった。
「あと通天閣も二代目だし」
「ああ、すぐそこにある」
今薊達は新世界にいる、そして食べている店から見てだ。通天閣はもう歩いてすぐそこの場所にあるのだ。
「あれもか」
「そう、通天閣もね」
それもというのだ。
「二代目なの」
「そうか、二代目か」
「後で観に行くわよね」
「絶対に観たいな」
薊は向日葵の言葉に対してだ、飲みつつも真剣な顔で述べた。
「すぐそこにあるしな」
「そうよね、大阪に来たのならね」
「通天閣も観ないと駄目か」
「大阪城と住吉大社とあそこは欠かせないわ」
この三つは、というのだ。
「どれも大阪の象徴だから」
「それでか」
「そう、行こうね」
「皆もかい?」
薊は向日葵の言葉を聞いてからだった、他の面々に問うた。
「皆も通天閣に」
「ええ」
「勿論よ」
皆すぐにだった、薊に笑顔で頷いて答えた。
「行こうね」
「じゃあ飲んで食った後で」
その串カツとビールをというのだ。
「皆で通天閣行こうか」
「そうしようね」
向日葵は薊ににこりと笑って応えた、そうしてだった。
一行は今は串カツとビールをさらに食べた、そうして相当に食べて飲んでそれが終わってからであった。
全員で通天閣まで来た、夜の通天閣は闇の中でも何故か陽気に立っている様に見えた、その愛嬌のある形の塔を見上げてだった。
薊は目を何度か瞬かせてからだ、向日葵に言った。
「何かな」
「何かって?」
「いや、スカイツリーと比べると低いけれどさ」
それでもというのだ。
「親しみ持てる形だよな」
「そうでしょ、ここはね」
「親しみか」
「大阪らしいでしょ」
「ああ、言われてみるとな」
向日葵の今の言葉にだ、薊は彼女の方に顔を向けてその通りだと頷いて応えた。
「そうだよな」
「それがいいところなのよ」
「この通天閣のか」
「そうなの、愛嬌なのよ」
「大阪らしくか」
「それであの中にはね」
「ああ、ビリケンさんだよな」
薊もこの神のことは知っていた。
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