美しき異形達
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第四十話 大阪の華その十三
「大阪は海が近いから」
「前に瀬戸内海があるからな」
「そこから漁れる豊富な海の幸もね」
「串カツになるんだな」
「そう、この通りね」
テーブルの上にあるメニューには実に様々な海の幸が書かれていた。
海老に烏賊、貝に蛸にだ。それに鱧もある。薊はその鱧の串カツを食べてそのうえでこうしたことも言った。
「鱧いいよな」
「関東では食べないわね」
「そうそう、関東では鱧ないんだよ」
薊は今度は黒蘭に答えた。
「鱧食わないんだよ、関東は」
「鱧のダシも」
「ないよ」
当然ながらそちらもというのだ。
「そんなのもな」
「そうなのね」
「そうだよ、それでな」
薊はさらに言った。
「昆布もな」
「それもなのね」
「あまり使わないな」
「ダシは鰹だけかしら」
「かもな、あまりな」
「ダシの食材もなのね」
「あまりないな」
関西と比べると、というのだ。
「実際に」
「関西の方がいいのね」
「やっぱり食いものは関西だよ」
薊はこう言って今度はうずらの玉子の串カツを食べた。
「この串カツにしても」
「関東にはないのね」
「ないない、こんな美味いものないよ」
本当に関西だけだというのだ。
「特に東京ドームの辺りはな」
その地域はというと。
「何か瘴気が漂ってるな」
「悪の瘴気ね」
「日本、いや世界で一番邪悪なものを感じる場所だぜ」
東京ドームを中心としたその一帯っはというのだ。
「巨人のな」
「あのチームはまさに邪悪だから」
「ああ、そうした場所もないからな」
大阪には、というのだ。
「いいな」
「大阪はパワースポットも多いのよ」
向日葵がまた言って来た。
「これはこれまで観光してきた場所も同じだけれど」
「大阪もか」
「住吉大社もそうだし。坂田三吉さん関係の場所もあって。大阪城に」
「ああ、大阪城もか」
「そう、あそこもね」
「あそこも大阪の象徴だしな」
「大阪っていったらあそこなのよ」
向日葵は海老の串カツを食べつつ薊に言い切った。
「私も何回か行ってるわ」
「どんなお城なんだい?」
「一言で言うとね」
どんな城かとだ、向日葵は薊にこう言った。
「太閤さんよ」
「そのままじゃねえかい?」
「ううん、けれどね」
「太閤さんなんだな」
「あの人が築城したからね、とはいっても」
向日葵は大阪城のその歴史も語った。
「今の大阪城は徳川幕府が土台築いたのよね」
「ああ、太閤さんのは大坂の陣で燃えたからな」
「そう、天守閣は三代目だし」
「あれ昭和に出来たんだっけ」
「そう、昭和六年建築よ」
三代目天守閣はそうである。
「二代目は江戸時代の。四代将軍さんの頃に落雷で焼けてね」
「それでずっと天守閣なかったんだな」
「そう、それで昭和に出来たのよ」
「それでずっと残ってるんだな」
「初代、二代目はすぐに燃えたけれど三代目はしぶといのよ」
今の天守閣はというのだ。
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