リメイク版FF3・短編集
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
レフィアの憂うつ
はぁ……、参ったわね。朝から何か調子悪いと思ってたけど、午後になってどんどん具合が悪くなってきちゃった………
カゼ、かしら。でもクリスタルから力を借りてる光の戦士がカゼなんて引くのかしら……?
あたしは今、白魔道師だから試しに回復魔法を何度か自分にかけてみるけど────ダメね、体調良くならないわ………
「おーいレフィア、何やってんだぁ? 早く来いよー!」
少し距離の空いた前方から、ルーネスが心配した風もなく呼び掛けてくる。何よ……、少しは様子が変だなとか思ってくれないわけっ?
「 ────大丈夫かレフィア、体調が優れないんじゃないのか? 今朝から少し、様子がおかしいとは思っていたが」
あ……、イングズが近寄って来て心配してくれた。そ、その整った顔向けられると恥ずかしいけど、ルーネスと違ってあたしが具合悪そうなの気づいてくれてたのね………
「だ、大丈夫よ……! ちょっと、疲れてるだけだと思うから」
あたしはつい強がって笑顔を取り繕うけど、それがぎこちないのがアルクゥにも伝わったのか、気遣ってくれる。
「宿に着いたら、すぐ休んだ方がいいよ。必要な買い出しとかは、僕らがやっておくから」
あぁ……、アルクゥも優しいわね。それに比べて、ルーネスときたら────
「ハラへったー、やっぱ保存食じゃ足んねーよ! 早く次の町でちゃんとしたメシ食おうぜ!!」
────何、この温度差。いよいよ寒気がしてきたわっ。
◆皆すっぴんに戻り、とある町の宿屋にて◆
「……じゃあレフィア、僕らは出掛けてくるけど先に休んでていいからね。何か、買って来てほしい物とかない?」
「んー……、特別思いつかないからいいわ。今からひと晩ゆっくり休めば、調子悪いのくらい治ると思うから」
「あ゛ー、早く何かメシ食いてぇっ」
「ルーネス、お前は具合の悪いレフィアとメシとどっちが大事なんだ」
「メシ!!」
イングズの問いに、ルーネスはよどみなく答えた。────調子戻ったら、蹴り倒してやろうかしら。
宿屋入り口から3人を見送ったあと、水差しからコップ一杯の水をもらって一息ついて、それから決められた部屋に向かおうとしたら─────
「クポ~、お邪魔するクポー! ここに、イングズって人はいるクポー?」
モグネットのお手紙配達のモーグリが一匹、やって来たわ……? 相変わらず動くぬいぐるみみたいで、カワイイわねぇ。
「入れ違いかしらね、さっきちょうど本人出かけてっちゃったの。あたしその人の仲間なんだけど、代わりに受け取りましょうか?」
「そうなのクポ? じゃあお願いするクポ~! お手紙は、サスーン城のサラ姫からクポ!」
コウモリのような小さい羽をパタつかせて、モーグリは忙しそうに宿屋を出て行く。
サラ姫からかぁ、まあ、そうよね………。あたしは思わずため息をついた。
イングズの事を心配してか、近況報告か、恋文かしらねぇ。
─────そんな事を考えてたらふと、あたしの手は自然と手紙の封を切るような形をとってしまう。
何やってんのかしら、こんな事しちゃいけないのよ、人の手紙を勝手に読もうとするなんてっ。
でも、気持ちとはウラハラにあたしの震える手は封を切ろうとしてる。
頭が、熱くなってきたわ……。とうとう、熱も上がってきたかしら………
「 ────何をしてるんだ、レフィア」
あら……? 出掛けたはずのイングズの声が聞こえる。幻聴かしら────と、首を横に向けたらそこには怪訝そうに佇むイングズが。
「ひゃっ、どど、どうしたの……!?」
「宿屋の方に向かって行くモーグリを見かけてな………もしやと思い、ルーネスとアルクゥを先に行かせ、戻って来てみたんだが────その手に持っているのは、君宛の手紙か?」
「えっ? あ、これは………あ、あなた宛の手紙よ! 戻って来たら渡そうと思ってたけど、いきなり帰って来るからビックリしちゃった……!」
「今、手紙の封を切ろうとしてなかったか?」
やだ、バレてる……っ。恥ずかしさと申し訳なさで顔が熱くなって、意識がもうろうと─────あ、もう、ダメ。
「レフィア……!? しっかりしてくれ………!」
『ダメ……ダメよイングズ、あなたにはサラ姫が─────』
『いや、違うレフィア………私には、君が必要なんだ─────』
抱きすくめられたあたしは、イングズのフェイスに引き寄せられて─────
「いいのかレフィア………このままだとおれ達、キスっちまうぞ?」
「 ─────えっ?」
気がつくと、イングズの端正な顔立ちじゃなく、まだ子供っぽさの抜けきらないルーネスの顔が、目の前に……?!
その表情はどこか呆れた様子で、あたしは訳が分からなくなってサッと身を引いた。
「な、何であんたが傍に居るのよ……! あたしの事よりメシの方が大事なんじゃなかったかしらっ?」
あら……? そういえばあたし、いつの間にベッドに─────
「メシならとっくに食ってきた。……ってかもう昨日からひと晩経ってるぜ?」
ルーネスに云われて窓の方を見ると、まだ夕方だったはずが朝日が射し込んでる………? あたし、あれからずっと意識無かったわけ!?
「……あら? そういえばイングズは──── 」
「あいつなら始めの内、倒れたレフィア見てたけどおれとアルクゥが代わってやって、サラ姫に手紙の返事書きに一人で別の部屋にこもったまんまだ」
「あ、そうなの………」
「レフィア、いま残念そうな顔したな! さっきまで大人しく寝てたのに、急にうなされ出して上半身起こして傍に居たおれに目をつむったまま迫って来たのには驚いたぜ~。……夢の中でイングズとでも間違えたのかよ?」
「そんなわけっ、ある訳ないでしょ?!」
「あいっでぇ……!?」
あたしは思わず、ルーネスの頬をべちっと平手打ちした。
「あんたこそ、ヘンな事してないでしょうねあたしにっ?」
「してねーよそんな事、そっちがヘンな事して来たんじゃん!」
「う、うっさいわね! ……そうだ、アルクゥはっ?」
「んあ? アルクゥなら──── 」
「あ、レフィア、よかった! 気がついたんだね?」
そこへちょうど、アルクゥが室内にやって来た。
「宿屋の厨房を借りて、おかゆ作ってあるよ。食べれるかな?」
「あたしの為に、作ってくれたの……? もちろん、頂くわ!」
無神経なルーネスのあとの、アルクゥの優しさが身に染みるわ………。
「うん、分かった。今すぐあったかいの持って来るね。……あ、イングズおはよう! レフィア、意識戻ったよ?」
そこにもう一人、いま正直面と向かい合うのが恥ずかしい人物が────
「良かった、起きたか。……昨日、倒れるほど具合を悪くしていたとは思わなかった。気遣いが足りなくて、すまなかったな」
「い、いいのよそんな……! もしかして、あたしをベッドに運んでくれたのって──── 」
「あぁ、私だ」
ふと、イングズにリアルお姫さま抱っこ
された自分を想像。……って、何考えてるのかしらあたしっ。
「ところでイングズ、サラ姫に手紙書けたのかよ?」
ルーネスは両手を頭の後ろに組んで、からかい交じりに聞いた。
「何度も書き直しと読み直しを行って、何とか一晩かけて書き上げた。つい先程、モグネットのモーグリに手紙を渡して来た所だ」
き、几帳面すぎでしょ……。まぁ、相手はサラ姫ですもんねぇ。
「レフィア、おかゆ持って来たよ~」
アルクゥが、湯気の立つ器を盆に乗せて持って来てくれたわ……!
「それ作ったのアルクゥだけど……レフィア、イングズに食わしてもらったらどうだ?」
はぁ!? ニヤニヤしながら何云ってんのよ、ルーネスのバカっ。
「も、もう自分で食べれるくらいに体調いいんだから、その必要ないわよ!」
「そうか。……だが念のためもう1日休み、出発は明日にした方がいいだろうな」
「そうしなよレフィア、クリスタルから力を借りてるって云っても万能じゃないみたいだし」
「だよなぁ、もっと筋肉ムキムキの超絶人間なれると思ったら拍子抜けだぜ!」
イングズとアルクゥは気遣ってくれるけど、ルーネスはまたおバカな事云ってる。ムキムキって……、あたしは嫌よそんなのっ。
────あ、そうだわ。あたしったら何でかイングズ宛のサラ姫からの手紙の封を、切ろうとしてたんじゃなかったかしら……?!
「そ、そういえばイングズ、ごめんなさいあの時──── 」
「いや、大丈夫だ。………若干、切れてはいたが。(手紙の封が)」
「ぇ」
それって、ダイジョウブじゃないじゃない。
「へ? 何が切れてたって? 教えろよ~!」
「 ────あんたは黙ってなさい、ルーネス!!」
「へぼおっ?!」
「レフィア……、ベッドから降りてルーネスを蹴り倒せるくらい元気になってよかったね、イングズ?」
「あぁ、そうだなアルクゥ。……いつものレフィアだ」
END
ページ上へ戻る