リメイク版FF3・短編集
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追い風ヘアー
◇とある平原にて◇
「イングズ……、今さらだけど何でいつも追い風受けたみたいな髪してるんだ? 向かい風受けてもほとんど後ろに靡かないし────何かで固めてんのか??」
ふと、ルーネスがイングズに疑問を投げかけた。
「……何故だかは知らないが、私の髪は生まれつき追い風しか受け付けなくてな」
「じゃあ試しに、これ受けてみる? <エアロガ>!!」
不意に賢者のレフィアが風属性の魔法を放ち、イングズだけでなく他の二人もとばっちりを受けて強風に煽られ、ルーネスとアルクゥの髪はもみくちゃになってあっちこっち毛先が跳ねてしまったが、イングズの髪は見事に全く変わらず追い風ヘアーだった。
「あら、ほんとね~。……って、エアロガは別に追い風ってわけじゃないでしょ! ちょっとその髪、触らせてみなさいよっ」
「いや、待て。────無闇に私の髪に触れるべきじゃない」
レフィアから後退りするイングズ。
「何よ、毛先が横にとがって見えるからって触ったらケガするわけじゃあるまいし……」
「それがその、何というか──── 」
イングズは何故か、躊躇している。
「まさか、マジでケガするレベル? それがホントなら、そのまま横に伸びてったら"歩く凶器"だな!」
「だよね……、モンスターもそれで凪ぎ払えそうだよ?」
自分の髪を整えつつ、想像を巡らすルーネスとアルクゥ。
「それこそ私がモンスターみたいじゃないか………」
「そ、そうね。真横から見たら顔なんて見えないでしょうし………ぷぷっ」
思わず吹き出すレフィア。
「つーか、伸びてきた髪はどうやってカットしてるんだ? 普通のハサミとかじゃ、切れなかったりしてな!」
「 ────横に伸びた髪は、ノコギリで削げ落としてもらっていた」
「えっ? そんなにイングズの髪は、固いの……!?」
からかうルーネスに真顔で答えたイングズに対し、驚きを隠せないアルクゥ。
「冗談に決まっているだろう。……確かに普通のハサミでは刃がすぐボロボロになるから、それなりに丈夫で切れ味のある物でなければ──── 」
「それって、どこまで冗談か分からないよイングズ………」
「そうだ、あたしのヘアブラシ貸すから髪とかして見せて!」
「お、そりゃいい! その毛先、下向かせられるか見てみたいよなっ」
レフィアの思いつきに食いつくルーネス。
「レフィア………君のヘアブラシを生きて返す自信がない、やめておこう」
「や、やっぱりヘアブラシを壊しかねないほどイングズの髪は固いんだね……」
「誤解だアルクゥ、私の頭は剣山などではない。────針千本も出ないからな」
「そこまで云ってないってば」
「……けどアレだな、そんなに髪固いんじゃサラ姫とイチャイチャ出来なくないか? キスるにも危ない気がするし、あの巨乳に顔うずめらんないし………」
「あ~、確かにねぇ………って何云ってんのよこのスケベ!!」
「あぃでっ?!」
レフィアにどつかれるルーネス。
「それなら、問題ないぞ。特殊な魔法を姫様がこの髪に掛けて下されば、一時的にも柔くなるからな」
「………自信ありげに云われても困るんだけど」
アルクゥはついジト目でイングズを見てしまい、ルーネスは固い髪を柔くするなどという魔法の方が気になった。
「ってかそれ、どんな魔法だよ?」
「 ────姫様が、頑固な私の髪の為に人材を集め編み出して下さった特殊魔法だ。開発にはそれなりの時間と労力が……っと、この話はここまでにするか。信じるか信じないかは、お前達に任せるとしよう」
僅かに不敵な笑みを浮かべ、1人先をゆくイングズ。
「結局、どこまで本気で云ってたのかよく分からなかったね………」
「イングズも冗談くらい云えるようになったのねぇ。……ほんとに全部冗談だったとは限らないけどっ」
「よっしゃ! 今度隙見て思いっきりあの頭に触れてやるぜ……!」
アルクゥ、レフィア、ルーネスは向かい風を物ともしない追い風ヘアーで先をゆくイングズの後を追うのだった。
おしまい
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