戦国異伝
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第二百話 青と黒その十
「それが酒さえあれば何時でも出来ます」
「それでは」
「皆に告げます」
謙信の声が剣の様になった、その声での言葉だ。
「死力を尽くして、乾坤一擲の勝負を挑みます」
「そして、ですな」
「そのうえで攻めて」
「そうしてですね」
「ここで」
「そうです、決着をつけます」
まさにだ、そうするというのだ。
「宜しいですね」
「わかりました、では」
「我等の命殿に預けます」
「ではこれより」
「皆で」
「その全ての力で」
「わたくしは駆け」
馬でだ、そうしてというのだ。
「全ての陣で采配を振るいます」
「そうされますか」
「全ての陣に入られて攻められ」
「そして、ですか」
「戦に勝たれますか」
「そうします、では」
こう言ってだった、謙信はまさに乾坤一擲の勝負に入った。その車懸かりの中にあった後詰の者達も全て前に出してだ。
そしてだ、次にこう彼等に問うたのだった。
「腹は満ちていますか」
「はい、既に」
「腹にものがあります」
「飯は頂いています」
「ご安心下さい」
「ならばです」
食っているのならだった、謙信もよしとしてだった。
そのうえでだ、彼等はだった。
全軍で車懸かりに入った、謙信は己の馬に乗りそのうえでだった。これ以上はないまでに素早く動き采配を振るった。
その中でだ、謙信は言った。
「それではです」
「はい、それでは」
「いよいよですな」
「総攻撃です」
それにかかるというのだ。
「宜しいですね」
「殿が全ての陣に入られ」
「そのうえで」
「わたくしが自ら陣を率れば」
それで、というのだ。
「破れぬ陣はありません」
「左様ですな、殿が率いられるのなら」
「どの様な陣でも」
「例え今の織田の陣でも」
「崩せますな」
「崩せばそこで終わりです」
この戦、それ自体がというのだ。
「我等はその崩れた綻びから攻め」
「そして、ですな」
「織田の軍勢を一気に突き崩す」
「そして織田信長を降し」
「城下の盟を誓わせますな」
「明日には尾張の蛟龍はわたくしの家臣となっています」
謙信が考えている通り、というのだ。
「必ず」
「ではこれより」
「攻めましょうぞ」
「これまで以上に法螺貝を鳴らすのです」
攻めるにあたってというのだ。
「そしてそのうえで」
「はい、勝ちましょう」
「是非」
上杉の者達も皆応える、そしてだった。
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