戦国異伝
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第二百話 青と黒その九
「やはり上杉は強いわ」
「簡単に勝たせてくれぬわ」
「では、じゃな」
「我等もこのままじゃな」
「粘って戦い」
「そしてそのうえで」
「勝ってな」
「武勲に見合ったものを貰おうぞ」
長くなっている戦に臆してはいなかった、慣れている声だった。
そして鉄砲を撃ち弓矢を放ち槍で防いで戦っていた、その中で。
次から次に入れ替わる、それは上杉も同じだった。
謙信は兼続を従え自ら戦う、だが。
謙信は己の兵達を見てだ、こう兼続に言った。
「皆果敢に戦っていますが」
「それでもですか」
「はい、疲れはです」
それはというのだ。
「どうしてもです」
「隠せませんか」
「気力で支えることが出来ます」
己の身体をだ。
「しかしです」
「それでもですか」
「その気力が尽きれば」
その時はというのだ。
「身体の疲れを支えることが出来なくなり」
「それで、ですか」
「そうなればです」
「最早戦は」
「気力も体力も尽きれば戦えません」
「それまでに戦を決めないといけないのですね」
「そうです、しかし」
それでもと言うのだった。
「織田の守りは固いです、ですから」
「攻めきることは」
「このままではです」
難しいというのだ。
「中々」
「ではどうされますか」
「このままでは埓があきません」
これが謙信の考えだった。
「ですから」
「それでは」
「これよりです」
まさにというのだ。
「一気に攻めましょう」
「そうされるのですか」
「全軍、一つになります」
車懸かりのその中でというのだ。
「いいですね」
「はい、それでは」
「全力攻撃です」
そうした意味で一つになるというのだ。
「わかりましたね」
「さすれば」
「では全軍に命じます」
謙信の声が強くなった。
「総員車懸かりのまま織田軍に突っ込むのです」
「そして、ですね」
「敵陣を崩し」
そして、というのだ。
「そのうえで」
「織田の本陣まで進み」
そしてだった。
「織田信長と雌雄を決します」
「では朝まで、ですか」
「かけません」
そこまで長くしないというのだ。
「そのつもりはありません」
「まさに一気にですか」
「甲斐の虎は朝まで戦いましたが」
長篠のその時にだ。
「しかし、でしたね」
「はい、敗れました」
「ですから」
それ故にというのだ。
「私はです」
「朝まではですね」
「かけません」
そこまではというのだ。
「それまでにです」
「終わらせて、ですね」
「後は宴です」
昨夜言った様にというのだ。
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