戦国異伝
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第二百話 青と黒その八
「殿が率いておられる軍勢だけじゃ」
「だからですな」
「うむ、勝てる」
このままで、というのだ。
「殿がおられる限りな」
「そうですな、ではこのまま攻め」
「敵が崩れた時にじゃ」
まさにだ、その時にというのだ。
「一気に決着をつけることになる」
「まさにその時に」
「だからじゃ、今は飯を食いじゃ」
北条は水も飲みつつ言う。
「力をつけながらな」
「戦い、ですな」
「敵が崩れるのを待つのじゃ」
車懸かりで攻めながらだ、そのうえで。
北条の軍勢もまた戦っていた、そうして織田の軍勢を攻め続けていた。双方の戦は飯の後でも続いてだった。
日が落ちようとする中でもだ、彼等は戦い続けていた。そうして夕刻になってもだ。
戦は続いていた、信長はそれを見て言った。
「かがり火もな」
「用意して、ですな」
「そのうえで」
「夜戦の用意をせよ」
その時のというのだ。
「よいな」
「この度もですな」
毛利の言葉だ。
「夜も戦ですな」
「うむ、そしてな」
「朝まで、ですな」
今度は服部が言ってきた。
「かかりますな」
「そのことを覚悟してな」
そうして、というのだ。
「戦ってこそじゃ」
「勝てる」
「そうした戦ですか」
「この戦はな」
まさにと言う信長だった。
「だからよいな」
「はい、さすれば」
「我等もまた」
「若し謙信が本陣まで来ればな」
その時はとだ、信長は二人に言った。
「頼んだぞ」
「殿は我等がです」
「この身にかえてもお護りします」
二人は信長に確かな声で答えた。
「ですからご安心下さい」
「ここは」
「うむ、わしはここから動かぬ」
今いる本陣からというのだ。
「そのうえでじゃ」
「采配を執られ、ですな」
「勝たれますな」
「退かぬ」
これもないというのだ。
「御主達が傍におるからな」
「例え上杉謙信が来ようとも」
「必ず我等が」
二人は槍を手に信長に答える、その言葉は心からのものだった。
実際に夜も戦だった、双方共に次々と新手を繰り出しつつ戦いを続けた。その中で織田の兵達はこうしたことを話した。
「またじゃな」
「そうじゃなまたじゃな」
「夜も戦じゃ」
「長篠の時と同じくな」
こう話すのだった、戦の中で。
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