戦国異伝
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第二百話 青と黒その五
「次から次に新手を繰り出す」
「縦に」
「車懸かりではないですが」
「そうして守っていってな」
そのうえで、だった。
「敵の消耗を強いていく」
「よきやり方ですな」
「これも」
「流石殿じゃ」
元親は信長についても言った。
「こうしたことをお考えとはな」
「ですな、車懸かりにはですな」
「代わりばんこに守る」
「そうして徐々にですな」
「敵を減らしていく」
「右から下がり」
後ろにだ、つまり斜め後ろに下がっているのだ。
「そしてですな」
「そうじゃ、攻めればな」
そうすればというのだ。
「一番後ろまで下がるぞ」
「これもですな」
「また」
「うむ、車懸かりじゃ」
それになるというのだ。
「見事な、な」
「ですな、では」
「我等は鉄砲を撃ち」
「そして弓矢を放ち」
「槍隊で敵を防ぎ」
「攻め終えれば」
「下がるのじゃ」
一番後ろにというのだ、織田の軍勢の。
「そしてまたな」
「順番が来ればですな」
「そうすればですな」
「そのうえでまた」
「攻めると」
「これの繰り返しじゃ、車懸かりには車懸かりじゃ」
これこそが信長が考えたこの度の戦のやり方だ、謙信の車懸かりに対して彼もそうした車懸かりを考え出したのだ。
元親もその中にいる、そして言うのだ。
「ではな」
「はい、では」
「これより」
「撃つのじゃ」
まずは鉄砲だった、そして。
織田の軍勢は上杉の攻めに守って返した、謙信もそれを見て言う。
「これは」
「織田の軍勢は、ですな」
「後ろから軍を出してきますな」
「前にいる軍勢が退き」
「そのうえで」
「よく考えています」
澄んだ声でだ、謙信は言った。
「尾張の蛟龍も」
「ですな、まさかこう来るとは」
「長篠の様に守ると思っていたのですが」
「まさかこう来るとは」
「ただ守っていていたのではなかったのですな」
「こうしたやり方もあるとは」
また言う謙信だった。
「見事です」
「ではどうされますか」
「この度の戦は」
「このままですか」
「車懸かりで攻められますか」
「若し魚鱗陣を組んで、です」
そして、というのだ。
「そのうえで突っ込んでもです」
「それでもですか」
「攻めても」
「そうです、相手の陣は幾重もあります」
だからだというのだ。
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