戦国異伝
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第二百話 青と黒その六
「五万で二十万のその縦に深い陣に突っ込んでも」
「やがてはですか」
「追い詰められ」
「そうです、姉川のことを知っていますね」
信長のこの時の戦を、というのだ。
「あの時尾張の蛟龍jは浅井の軍勢に陣を破らせ」
「最後はですか」
「その目の前に大軍がいて、ですか」
「それ以上は進めず敗れました」
「そうなるからですな」
「この度は」
「そうです」
それで、というのだ。
「ですから」
「ここは、ですか」
「このまま車懸かりで、ですな」
「攻めそうして」
「戦を続けるのですか」
「そうです」
まさにというのだ。
「このまま攻めます、よいですね」
「それしかありませんか」
「この戦は」
「車懸かりで攻め」
「そのうえで」
家臣達も頷く、そしてだった。
謙信は車懸かりのまま攻める、それを見てだった。
信長もだ、本陣から言った。
「やはりな」
「やはり、ですか」
「この度の戦は」
竹中と黒田が応える。
「上杉謙信はこのまま」
「車懸かりで攻めてきますか」
「これが最もよいとわかっているからこそ」
「それ故に」
「そうじゃ、流石じゃ」
謙信を褒めもするのだった。
「この戦もな」
「長くなりますか」
「それも相当に」
「長篠の時の様に」
「そうなりますか」
「うむ、そうなる」
まさにというのだ。
「この戦もまたな」
「ですか、では」
「腰を据えてですな」
「戦い」
「そして勝ちますか」
「勝つのは我等じゃ」
間違いなく、というのだ。
「だから揺るがずな」
「焦ることなく」
「己を保ち」
「戦うことじゃ」
こう言いだ、信長は動かなかった。
そしてだ、本陣に留まり采配を振るうのだった。
織田も上杉も共に陣は激しく動く、だがその中でも。
双方飯は忘れていなかった、佐久間も己が率いる兵達に鉄砲や弓矢を撃たせた後で後ろに下がってからだった。
飯時だったので飯を食わせる、具足も陣笠も着けたままだったが。
兵達は飯を頬張り水を飲む、佐久間も同じものを飲み食いしながら言うのだった。
「よいか、しかと食え」
「はい、飯をですな」
「水もですな」
「どちらもたんとある」
それでというのだ。
「遠慮せずにな」
「たらふく飲み食いしてですな」
「そのうえで、ですな」
「次に我等の番となった時には」
「また」
「そうじゃ、撃て」
鉄砲、そして弓矢をというのだ。
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