戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百話 青と黒その四
「素早く動きそのうえで」
「そうして、ですか」
「攻め続けませぬか」
「弓矢で攻めるのです」
それで、というのだ。
「我等が近付けぬのなら」
「駆けつつ弓矢で」
「そうしていきますか」
「そうです、駆けつつ攻めるのです」
車懸かりの陣の中でというのだ。
「そうします、いいですね」
「では殿も」
「ここは」
「これを使います」
自らも弓矢を出して言う。
「この度は」
「自ら斬り込まれるのではなく」
「弓矢で、ですか」
「弓矢は武士の嗜みです」
それ故にというのだ。
「わたくしも使えます、ではいいですね」
「はい、それでは」
「この度は」
「車懸かりのまま弓矢を使って攻めます」
そうして、というのだ。
「織田の陣を崩していくのです」
「ではその様に」
「これより」
兵達も応えてだ、そうしてだった。
上杉は車懸かりのまま弓矢で攻めだした、謙信の言った通り。そしてその攻めに対して。
家康は弓矢を放ちだ、敵の一陣が去りもう一陣が来るその間にだった。己が率いる兵達に素早く告げた。
「よし、今じゃ!」
「はっ、これで!」
「これよりですな!」
「退くのじゃ」
そうせよというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「これで」
槍隊は素早く下がった、そして弓隊も。徳川の軍が退いたその後にはだ。
長曾我部の軍勢がいた、元親は今まさに来る上杉の一陣を見つつ言った。
「凄い勢いよのう」
「流石上杉ですな」
「越後の龍ですな」
弟達が兄に応える。
「この勢いはです」
「相当なものです」
「正面からそのままぶつかれば」
「やられてしまいますな」
「槍隊を出せ」
そして、と言う元親だった。
「そしてその間からな」
「鉄砲隊で攻め」
「そうしてですな」
「そうじゃ」
そのうえで、というのだ。
「我等も同じ様にするぞ」
「殿の仰った様に」
「徳川殿と同じくですな」
「鉄砲隊で攻め」
「それから槍隊で防ぎつつ弓を放ち」
「そうして」
「弓矢の数では負けておらん」
こちらが、というのだ。
「その射程もな」
「ですな、ですから」
「ここは鉄砲を放ち」
「槍で防ぎ弓矢も使い」
「そうして」
「そのうえで我等も戦い」
そしてだった。
「頃合を見て退くぞ」
「はい、そしてですな」
「次の陣に代わるのですな」
「交代して攻めてじゃ」
そして、というのだ。
ページ上へ戻る