魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第八話 今再び、甦る絆
バタンッ
「っ?何だ、今の音……」
お粥を作り終えて自分の部屋で寝ているであろう二人に持っていこうとすると、何かが勢いよく開くような音が聞こえる。
全は自室の前まで来ると……扉の前に息を切らしているアリサの姿があった。
「バニングス?お前病人なんだから、休んで」
休んでろ、という全の言葉は最後まで紡がれる事はなかった。
全は気づいたのだ。アリサの目から……涙が出ている事に。
「ぜ、全……」
「……っ!」
全は驚いた。なぜなら今まで彼女は全の事を「橘」と名字で呼んでいたからだ。
「な、なんで……」
「…………!」
アリサは涙を浮かべたまま、家を出ていこうとした。
「なっ!ちょ、ちょっと待て!?」
全はお粥やレンゲを一緒に置いているお盆を自室に置いてアリサを追いかけようとした。
そして全は自室に入って見た。
そこには……泣き崩れているすずかと、先ほどまで倒れていた筈の写真立てが立った状態になっていた。
「っ!まさか……見たのか……?」
「うぅ……ぐすっ……ひぐっ……ごめん、ごめんなさい、全君……」
それを聞いて全は確信した。アリサとすずかは、記憶を取り戻していると……。
「く……!」
全は何で記憶が戻ったのかやどうやって記憶が戻ったのかは後にしようと考えて、アリサを追いかける事にした。
全は家から飛び出し、アリサを探した。アリサは風邪を引いていたのでそこまで遠くに行っているとは考えなかった。
案の定、アリサはすぐに見つかった。
道の途中にあるベンチでアリサは休んでいた。
「バニングス」
「っ!?」
アリサは全から声を掛けられるとすぐさま立ち上がり、その場を走って後にしようとするが
「待ってくれアリサッ!!」
「……………!」
全がアリサの名前を叫ぶと、アリサは走ろうとするのを止める。
全はもう走りはしないだろうとわかり、その手を握る。
「思いだしたんだな、アリサ……」
「わ、私…………もう、全とは話したりしないから」
「お前、何を言って「私はっ!」……」
振り返ったアリサの顔を見て全は何も言えなくなった。
涙を拭く事もしなかったのだろう。その顔は涙のせいでひどくぐしゃぐしゃになっていた。
「私はっ!全の事、忘れてた!あんなに、楽しい思い出だったのに……それを、忘れちゃった!私……全の傍に、いる資格なんて」
「……!」
全はそれ以上は言わせまいと、アリサを抱きしめた。
「ぜ、全!?は、離して……!」
アリサは離してと抵抗するが、そんな抵抗に負ける程全は弱くはない。
「アリサ、聞いてくれ」
抵抗を受けながらも、全は言葉を紡いでいく。
「俺は、お前らの記憶が無くなってる事に気づいてた……いや、知ってたって言った方が正しい」
「い、嫌、聞きたくない……!」
それでも、全は離さない。
まだ、伝えたい言葉を伝えられていないから。
「皆の記憶は戻らない……それは当たり前の事なんだって思ってたんだ……」
「……全…?」
それまで抵抗していたアリサが抵抗を止める。アリサに聞こえた全の声は……どこか、上擦っていたからだ。
「だから……ぐっ……記憶が戻ってるってわかって……嬉しかった……!」
「ぜ、全……」
そこまで聞いてアリサはわかった。
全は嬉しかったのだ。その理由はわからないがそれでも全は嬉しかったのだ。アリサとすずかが、記憶を取り戻してくれた事に。
「だから、ありがとう……記憶が戻って、本当によかった……!」
「全……」
アリサは、いつの間にか全を抱きしめ返していた。
そのまま、二人はずっとお互いを抱きしめ合っていた……。
その場に居続けたらさすがに他人の視線に晒されると感じた全は、アリサを泣き止ませて全の家に帰った。
すずかはまだ泣いていたが何とか泣き止ませて全はアリサとすずかにお粥を食べさせてあげた。
食べさせた、というのはそのままの意味でアリサとすずかが「で、出来れば全が食べさせて」と言ったので全は快く承諾。
アリサとすずかに食べさせてあげたのだ。全は暗殺者として活動していた際、風邪を引いた時などは仲間内全員で看病をしてあげていたので別段苦痛でもなかった。
中でも、全の師匠が風邪を引いた際はヤバかったと全は思っている。
なぜならば……
「戦意が高揚するなぁ、東馬ぁ!!!!」
そう言って顔を真っ赤にしながらも全にいつも以上の訓練をさせたのだ。
本当、あの組織は異常な人材が豊富だったな……と今更ながらに思う全だった。
後書き
作品内で全が言っておりますが本当に全の所属していた暗殺者の組織は異常な人材が豊富です。
この間にも出てきましたがオタクな暗殺者。今回の破天荒な師匠。他にも色々と破天荒な方々がいますが……言いましょう。
これから先、その中の一人を、登場させようと思います!!
先に申し上げておきますと……彼女は、もの凄く、東馬を溺愛しておりますので、その辺も楽しみにしていただけると幸いです。
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