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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第七話 甦りし記憶

全は目の前の光景が信じられなかった。

「へぇ、ここが橘の家なのね……ごほっごほっ」

「結構しっかりしてるんだね……こほっこほっ」

何で、自身の前にアリサとすずかがいて、アリサとすずかは家の中を眺めているのだろうか。風邪を引いているのにも関わらず。

「ホント、どうしてこうなった……」

話は昨日にまで遡る。

~昨日の夜~

全は家で今日行った授業を復習してその後に明日の為の予習をしていると

Prrrr Prrrr

家の電話が鳴る。

──────?珍しいな。

全の家の固定電話が鳴るのは珍しい。というのも基本的には仕事の事などは携帯などで事足りるからだ。

全は受話器を手に取り、耳に当てる。

「はい?」

『あ、全君。私、忍よ』

「忍さん?」

電話の相手は忍だった。

「何か御用ですか?」

『うん、それがね……すずかが風邪引いちゃったのよ』

「…………それが何か?」

『それでね……すずかをそっちの家で預かってくれない?』

「…………はぁ?」

全は訳が分からず、首を傾げる。

要約するとこうだ。

何でも明日は月村家とバニングス家のまあ……簡単に言えば親睦会のような物らしい。

何でそんな物やるのかは知らないがと全は思っている。

しかし、すずかが風邪を引いてしまった。

月村家で親睦会をやるわけではなく、このままではすずかが一人になってしまう。

それじゃあ護衛役である全君の家に送ればいいのではないか、という事だ。

「はぁ……じゃあ、俺の家に送るんじゃなくて俺が月村の家に行けばいいんじゃないですか?」

『家の構造と罠の場所、全部覚えられる?』

「その気になれば大丈夫ですが……ちょっと自信ありません」

前世の自分ならば可能だったであろうが、今の体もとい脳では覚える事は難しいだろう。

『そうでしょ?明日、ノエルに送ってもらうから。じゃ~ね~♪』

忍は何だかウキウキといった感じの声を出しながら電話を切った。

「……何で、最後はあんなに喜びながら切ったんだ……?」

そんな疑問を抱えていると

Prrrr Prrrr

また電話が鳴った。

「今度は誰だ……もしもし?」

『おお、全君か。私だ、レオンだ』

「レオンさん。どうかされたんですか?」

今度の電話の相手はレオン・バニングス。アリサの父親だ。

『実はだね……アリサが風邪を引いてしまったんだよ』

「…………………」

そこからはすずかの時と同じ理由だった。

まるで示し合わせたかのようだ。

「……レオンさん」

『ん?なんだい、全君?』

「忍さんと示し合わせてませんか?」

「?どういう事なのかわからんが……」

反応から察するに何も関係はないと思えるが

(まだまだだな……言葉の端に人間が動揺した際に発する声の音域が見られる)

そこは暗殺者。暗殺者はどのような時でも警戒心を怠らないし、観察を止めない。

言葉の端から動揺の色が見られた。つまりは何かを隠している。

(まあ、別に構わんが)

何か策略はあるだろうが、それでも構わんかと安請け合いしてレオンからの依頼も全は引き受けた。




そして翌日。全は早速後悔している。

風邪を引いているのは間違いない。顔が赤いし確かめる為に熱を測ってみたら三十八度あった。

しかし……

(何で、俺の部屋で寝る必要があるんだ!?)

別に自分の部屋にはベッドが一つだけある、というわけではない。

きちんと他の誰かが泊まる時用に布団もいくつか押入れの中に入れてはいる。

しかし、二人共がなぜ全の部屋に泊まるという事になったのだろうか。

しかも、全の部屋の内装をまじまじと観察している。

(念のため、写真立ての中身を見えないように倒しててよかった……)

全は心底過去の自分に感謝していた。

何か嫌な予感がして写真立てを咄嗟に見えないように倒したのだ。

結果的にその選択は正解だった。

「とりあえず、お粥作ってくるから……言っとくが、部屋の物に何も触れるなよ?」

そう言って全は自身の部屋を出て台所へと向かう。

(さて……玉子粥でいいか……)

そう決めて食材があるかどうか確かめる為に冷蔵庫の扉を開けた。

アリサSIDE

さて……熱のせいで頭がガンガンと痛いけど……。

「ね、ねぇアリサちゃん……本当にするの?」

「あ、当たり前でしょ……ごほっごほっ。風邪を引いたのは本当に偶然だったけど……」

今回、私達が橘の家に来たのはただ単に看病してもらうってのもある。

でも本当の目的は……私とすずかの脳内に流れるあの風景の記憶を思い出す事。

橘に関係あるのは間違いない。ここ数日、橘と接していてそれがさらに顕著に感じられた。

だからこそ、この状況を利用しない手はないと考えた。

「さて……どっかに何かないかしらね……」

押入れの中等を開けてみても普通に服などが掛けられているだけでどこも変わった様子はない。

「すずか、ベッドの下は?」

「何もなかった、こほっ……なかったよ」

「すずかは休んでていいのよ。付き合わせてるごほっごほっ……付き合わせてるだけなんだから」

私とすずかはそう言いながらも橘の部屋を物色する。

「何も出てこないね……」

「ええ、こうなってくると隠してるんじゃなくて……堂々と出しているか……?」

そこで私は疑問を持った。

そこにあったのは机。おそらくは橘の勉強机だろう。その机に倒されている写真立てがあったのだ。数は五つ。

「これ、写真立てだよね……」

「ええ、でも写真立てって写真を入れてそれを見る為の物なのに……」

こんな風に置いていたら見えない。

あいつ、何でこんな風にしてるのかしら?

私はそんな疑問を持って写真立ての中身を見る。




































































そこにあった写真には私とすずかが黒髪の男の子に抱きついている写真だった。

後ろにはパパとママ、以前見たすずかのお姉さんである忍さんもいるから間違いない。

他の写真に出てきている人物にも見覚えがあった。

というより、いつも見ている顔ぶれ。

なのは、フェイト、アリシア、はやて、そしてるい。

皆が、本当に嬉しそうに写真の中で私が抱きついている男の子と一緒に写っている写真があった。

これ、何なの……?



























































─────────その時私の中の何かが、カチリと嵌まる音が聞こえた。




















記憶が戻ってくる。

豪華な部屋。そんな部屋には似合わない雰囲気を纏っている男の子。紫の髪の女の子と一緒に遊んでいたら誘拐されて……その男の子に助けられた。

最後に男の子はこう言った。

『約束は守る……今度、こんな事が起こっても絶対に守ってみせる』

その男の子の顔を思い出して……。































「あ、アリサちゃん……」

すずかは私に困惑した顔を向けるが、私はそんなすずかに目もくれずに

「っ!!」

私は、全の部屋を飛び出した。

SIDE OUT 
 

 
後書き
はい、というわけでアリサとすずかが記憶を取り戻しましたが……未だに記憶が戻る方法は明言しておりません。

飛び出していったアリサ。どうなってしまうのか……次回、全君の主人公力が試される!?

次回もお楽しみに。 
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