少年と女神の物語
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第百八話
前書き
注意
今回の話の中には、この章の敵キャラとなるあのカンピオーネのヒントになるような内容は一切含まれていません。
途中で過去に現れた神の情報とかでてきますけど、これの次の章のための伏線です。
俺はあの九人目のカンピオーネとあった次の日、生徒会室で梅先輩が作業している中とある資料を見ていた。それは、文化祭関連の書類を片付けていた日の帰りに梅先輩からもらった書類だ。他にも、あのとき情報を出さなかったやつもいるんじゃないかと再度要求したり、同類がリーダーやってる所に直接交渉して新たに得たものもある。
まあ、そうはいっても・・・やっぱり、これを見たところで役に立ちそうにはないなぁ。
「・・・はぁ、これは駄目だな。そもそも相手のこともよく分かってないのに、候補の情報が多すぎる」
「それはそうですよ。貴方が求めた情報自体、あやふやなものも含めて送るしかないんですから」
「・・・ですよねぇ」
まあ、うん。最近神と会うことが、そしてその神の正体がわかることが多かったから麻痺してただけなんだろう。
「これまでに現れた、そしてどうして消えたのか分からない神のリスト、なんて。そんなものはっきりと分かるはずないじゃないですか。そもそも、神そのものには会わずに天災のような形で認識されているものばかりなんですよ」
「そうじゃなくても、ですよねこれは。ある程度名前の推測もしてるみたいでも、これが辺りかどうかは分からない。現れた場所から推測されてるのもいるみたいだけど、大体はその神の持つ属性しかわかっちゃいない」
水神とか、炎の神とかいうもの。王の類と思われるという、まるで実在していた存在の神格化のような表記。日本の神と思われるという、そこそこに絞ることのできる表記。まあでも、明確に分かっているのはこれくらいのものだ。
「でも、多分この中にあいつが殺した神がいるんだよなぁ・・・」
「そのことなのですが・・・本当なのですか?あの八人以外にカンピオーネがいるなんて、信じられないのですが」
「手合わせした感じだと、事実ですよ。そもそも、権能とか込みの俺と互角に戦えるのなんて、カンピオーネか神様かの二択です」
んで、相手が神様なら俺の体は戦うための準備をする。それがなかった以上は、相手はカンピオーネのはず。信じられないことなのは俺もだけど、信じるしかない。それにしても、当たり年にもほどがあるだろ、今年。同じ年の間に二人も神殺しが誕生するなんて。
「まあ、俺も約二年の間正体を隠していられましたからね。不可能ではないはずです。神を殺す、なんてことをする愚か者がこんなにいるとは思わなかったですけど」
「自分を含めて、ですか?」
「自分を含めて、です」
そう言ってから、二人揃って笑い出す。軽いなぁ。これくらいの方が気楽でいいけど。
「それにしても、大変そうですね・・・どうしますか?今度の約束。中止にした方が」
「ああ、いえ。それについてはこのままでいきましょう。正直今すぐにでもあいつ見つけてぶっ殺してやりたいんですけど、それも無理そうなので」
だったら、向こうから来るのを待った方がよっぽど楽でいい。そして、あんなののためにこっちが予定を変更するのも癪だ。他にもあいつの持つ権能の情報がないという問題もあるんだけど、まあそんなのは基本些細な問題だ。
「・・・そうですか。では、そのように」
「はい、そんな感じでお願いします」
「私にとってはうれしいことなので、問題ないですよ」
そう言ってもらえるなら、うれしいことだ。ちょっと心が荒れてきそうな感じだから、少しでも抑えられると。
「・・・って、会長は仕事終わったんですか?」
「ええ、先程。そうでなければこうして話をしていませんよ」
いやうん、会長まじめだからそうなんだろうなとは思ったけど、それにしては早すぎる気がする。そこそこの量があったと思うんだけど。
「まあ、何事も慣れですよ。ですから、出来ることなら私の次の会長は今のメンバーの中から出てほしいです」
「それなら遅くならずに済むからですか?」
「まだ遅くならずに済むから、です。生徒会の中でも会長の仕事量は他の役員とは比べられませんから」
「・・・いつもお疲れ様です、会長」
心からの一言だった。というか、うん。そこまでなんだ。そこそこの間会計やってきたけど、まだこの仕事大変だと思うのに。
「・・・まあでも、来年はまだ会長やるんですよね?」
「そのつもりですよ。といっても、前期の間だけですけどね」
三年生の後期からは生徒会の活動はできない。だからそのあたりで足りない人数分が新しい生徒会メンバーの選挙になるんだけど・・・そうか、もう来年にはメンバーが変わるのか。書記さんと会長は間違いなく抜けるわけだし、俺はこのまま続けるつもりだけど、他の二人がこれ以上続けない、って可能性もあるわけだし。
「そういえば、だれを後任にするかとかもう決めてるんですか?」
「いえ、まだ決めていませんよ。武双君なんかいいとは思うんですけど、来年生きてるかわかりませんし」
「確かにその通りですねって言うのは置いといて、俺ですか?」
「はい。一番生徒会の仕事には慣れているでしょうし、知識不足なんかがあっても何とかなっちゃいますし」
ああ、うん。確かに権能を使えばなんてことはないですね、それ。とっても分かりやすい理由をどうもありがとうございます。
「でも、俺が生徒会長をやったら生徒はどう思うんですかね?」
「といいますと?」
「人気云々は俺には分からないので置いといて、家族のことで少なからず男子連中に思われてるところがあると思うんですけど」
ついでに言うなら、俺以外女子しかいない生徒会、という状況もそうだ。つっても、本気でいろいろと思ってるのは一部のやつらくらいだけどな。ほとんどは冗談みたいなもんだ。
「そういう一部の連中、ってのは怖いもんだと思うんですけど」
「何かしてきたところで貴方に影響を及ぼせるのですか?」
「まず無理でしょうね」
「ならいいじゃないですか」
「いや、そういう問題ではないでしょう」
何とかなるからいい、とくに害はないからいい、というわけではないだろうに。
「まあ正直に言うと、カンピオーネであるあなたに対してモノを言える人間、というのはとても貴重ですから見ていて楽しいんです」
「なんですか、それ・・・というか、基本的には何か言われても気にしませんよ?」
うちの家族に害がなければ気にしない。それが俺・・・というか、神代だ。そんな単純なことなのに潰された組織があるのは、まあそれだけ才能があるやつが混じってたり、危険視されてたり、なんだろうなぁ。はぁ・・・別にいいけど。俺の正体公表したからには、もう来ないだろうし。魔術に少しでも関わってるなら、カンピオーネ・・・それも、こんなに権能を持ってるやつに手を出そうなんて考えるはずもない。そんなバカそうそういないだろう。
「・・・まあ、その前にその時になっても武双君が生きているか、そもそも日本に残っているか、というのが問題なわけですけど」
「あー・・・まあ、そうですね。それに、他の立候補者がいるかもしれませんし」
先の話は、その時にすればいい。ってかなんかいつの間にやら元の話からずれちゃってるんだけど。
「あーっと、武双君。話を戻しましょうか?」
「ええ、そうしましょう。この話題、終わりがないですし」
両者同意となったので、話をあのぶっ殺したいやつのことに戻す。
「えっと、それでは・・・そうだ。正史編纂委員会の方から一つお願いが」
「お願い、ですか?」
「他にも懇願、といういい方もできますね。依頼にすると見返りを出さないといけないので、却下されましたけど」
「・・・つまり、俺がカンピオーネだからですか?」
「そういうことです。ちゃんと言い方を考えましょう、って言って馨さんと甘粕さんがとても楽しそうに会議してました」
「あの二人俺を言い訳に遊んでるだろそうなんだろ」
ここまでカンピオーネなめきってる組織、他にあるだろうか?
「なんにしても、伝言です。『お願いなんで、被害できる限り少なくしてくれるとうれしいです』と」
「・・・了解、です。俺、あいつに会ったらキレる自信がありますけど、出来る限り頑張ってみようと思ったりしてみたいと思います」
「分かりました。もう被害はあきらめて隠蔽の準備をしておいた方がいいですよ、って伝えときますね」
うん、俺もそれが賢明だと思う。
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