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美しき異形達

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第三十九話 古都での死闘その九

 菖蒲と怪人の闘いを見守った、その菖蒲はというと。
 十に分かれた怪人達に囲まれていた、怪人はそのうえで菖蒲に対して既に勝ち誇っている顔で言って来た。
「さて、ではね」
「囲んだからというのね」
「覚悟はいいかな」
 こう余裕の声で言った怪人だった、しかしその余裕の裏にはかなりの緊張があった。
「これから君を倒すよ」
「その十の身体でそれぞれ攻撃をして」
「そうだよ、覚悟はいいかな」
「そうね、闘いだから覚悟は必要ね」 
 菖蒲は囲まれながらも冷静に述べた。
「お互いに」
「僕もだっていうのかな」
「そうよ、確かに貴方のその分身は凄いわ」
 そのこと自体はと言うのだった、菖蒲もまた。
「けれどね」
「それでもっていうのかな」
「そうよ、凄いだけにそれに神経を集中させるから」
 それで、というのだ。
「どうしても他のことがなおざりになるわね」
「?一体何に対してかな」
「私は今どうしているかしら」
 菖蒲は分身達に囲まれながらも冷静でだ、怪人に言葉をぶつけた。
「今の私は」
「君は?」
「その手に剣を持っていてね」
「そのうえでなのかな」
「剣に力を注ぎ込んでいるわね」
 見れば氷がある、その氷が青く輝いている。
「この通り」
「確かにね」
「そしてこの剣を」
 氷を宿らせたそれをというのだ。
「こうするのよ」
「!?」
 ここでだ、その剣をだった。
 菖蒲は自分の足元に突き刺した、すると。
 そこから氷が辺り一面を覆った、若草山の黄緑の地面を。それは怪人の分身達がいるその場所も同じだった。
 急激に包み込みだ、分身達もだった。
 その足元を急に氷で覆われた、すると。
 足の動きを止められたことによってだ、分身がだった。
 全て瞬時に消えた、それで怪人は一体になってだった。その足の動きもだ。
 完全に止められた、先程まで自信を見せていた怪人もこれには狼狽しその狼狽の色がはっきりと出ている声を出した。
「あ、足が」
「普通の貴方ならかわせたわ」
 冷静に言う菖蒲だった、今の怪人とは正反対に。
「私の今の攻撃は」
「それが何故」
「分身をしたからよ」
 この切り札を出したが為というのだ。
「そのせいでよ」
「まさか」
「そう、それに神経を集中させ過ぎて」
「この攻撃をかわせなかった」
「跳べばかわせたわ」
 今の攻撃は、というのだ。
「確実にね、けれどそれをすれば」
「分身が解ける」
「そうよ、貴方の分身はフットワークによるもの」
 その俊敏な動きでだ、残像を作っているのだ。菖蒲はそのことを把握しているのだ。
「それを防げば」
「僕の足の動きを」
「そう考えてよ」
「僕の足の動きを止めた」
「相手の切り札を封じれば勝てるわ」
 やはり冷静に言う菖蒲だった。 
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