美しき異形達
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第三十九話 古都での死闘その八
「相当自分の力を出してるわ」
「もうその全部を」
「うん、ただ」
「ただ?」
「あれだけの分身をすると」
十の姿になるそれを、というのだ。
「物凄く大変だから」
「動きに神経を集中させいて」
「そう、全神経を集中させるからね」
まさにそれが為にというのだ。
「他のことにまで気を向けるとなると」
「難しいのね」
「私はね」
菊は、とだ。自分で前置きもした。
「あそこまでしたら」
「どうなるの?」
「分身に神経を集中させ過ぎて」
その為に、というのだ。
「もう他のことが出来なくなるから」
「ということは」
「あの怪人の能力次第だけれど」
菊はこう前置きしてから裕香に話した。
「多分ね」
「分身にばかり神経が集中して」
「他のことに神経が回らないかも知れないわ」
「あれだけ分身出来たら凄いけれど」
「凄いことは凄いわ」
その分身自体はとだ、菊もこのことは認めた。
「十身分身なんて私も相当苦労して出来るものだから」
「全身全霊を使って?」
「そう、まさにね」
それだけの力を使って、というのだ。
「スピード出してするものだから」
「裕香ちゃんはそっちの分身なのね」
「うん、幻術じゃなくてね」
「幻術、幻でもよ」
その幻を使う菫も話に加わって来た。
「あれだけの分身となると」
「やっぱり相当な神経を集中させるから」
「他の行動がおざなりになってしまうわ」
菫もまた裕香に話した。
「どうしても」
「それじゃあ」
「あの怪人の力は確かに凄いわ」
菫もまたこのことを認めた、怪人の能力の凄さ自体は。
だが、だ。それでもとだ。菫も言うのだ。
「けれどあれだけのことをすると」
「他のことが、なのね」
「流石に攻撃は出来るわ」
それは可能だというのだ、それだけは。
「そのことはね」
「出来るのね」
「そう、それは出来るわ」
そのこと自体はというのだ、闘っているだけに攻撃が出来なくては話にならない。怪人もそれは出来るというのだ。
「流石にね、けれどね」
「それでもなのね」
「そう、色々と問題が出ている筈よ」
「それを菖蒲ちゃんがどう衝くかよ」
菊がここでまた言って来た。
「とはいっても菖蒲ちゃんはね」
「それをわかっていてね」
十身分身がそれをすることだけで相当な神経を集中させることを、とだ。菫は菖蒲の先程の怪人への言葉から指摘した。
「怪人に分身をさせたかも知れないわ」
「あえてなのね」
「切り札は成功させなくてはならないものね」
「それで決めないといけないから」
「そう、それを出すとね」
その切り札をだ。
「それに神経を集中させるから」
「他のことには、なのね」
「そうなるから。だから隙を作ることになるわ」
「ううん、じゃあ」
「これからが見所よ」
菫はその目の光を強くさせていた、そしてだった。
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