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美しき異形達

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第三十七話 川の中での戦いその十六

「そうした視点からもいいお店よ」
「文学なのね」
「そう、その舞台でもあるから」
「この京都もそうだけれどね」
「あのお店もよ」
 その夫婦善哉もというのだ。
「文学作品の舞台なの」
「そうなのね」
「文学は観るだけでなく味わうもの」 
 菖蒲は微笑んでこうも言った。
「そういうものでもあるのよ」
「カレーも文学ですね」
 桜も菖蒲に応えて言う、そしてこの作家の名前も出した。
「谷崎潤一郎の作品もよく食べものが出ますが」
「そうね。美食倶楽部という作品もあって」
「あの人は美食家だったそうで」
「そのせいでね」
 実際に、というのだ。
「作品の中にも食べものがよく出るのよ」
「他には池波正太郎も」
「あの人は特にそうね」
「作品の中に食べものがよく出ますね」
「何かというと」
 その小説を時代劇にした作品でもだ、鬼平犯科帳ではとかく食事の場面が多かった。
「出て来たわね」
「そうでしたね」
 こうした話もした、そして。
 一行は豆腐を食べた次の日は京都を観て回った、バスで移動していたがこの時にだった。
 銀閣寺で鈴蘭、黒蘭と一緒になった。薊は銀閣寺を前にして二人と会って言った。
「やっぱり会うな」
「そうね、何かとね」
「縁があるわね」
 二人はその薊に言葉を返した。
「京都でも」
「会うわね」
「それで多分」
「奈良でもそうなるわね」
「だろうな。奈良で行くのは」 
 薊はいつもの明るい笑顔で二人にこうも言った。
「東大寺とか春日大社だけれどな」
「私達もよ」
「そこに行くわ」
 その東大寺や春日大社にというのだ。
「奈良の大仏も観たいし」
「その他の場所もね」
「奈良市を観て回るわ」
「そのつもりよ」
「あたし達もだよ。明日香とかも行こうと思ったけれどな」
「明日香村は離れてるのよ」 
 奈良県民の裕香が言って来た。 
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