| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

我が剣は愛する者の為に

作者:wawa
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

奇妙な占い師の予言 五斗米道継承者

故郷である村を出発して数日が経つ。
俺は当てもなくぶらぶらと荒野を馬に乗りながら歩いていた。
率直に言おう。
何をすればいいのか全く分からない。
俺には家柄などの恩恵がない。
完全に零からのスタートという事になる。
なので、これからどう動けばいいのか全く方向性が決まらない。

(この場合、俺が兵を集める事はできない。
 どこかに客将として仕えて、そこから実績を積むしかないか。)

幾ら強くなったとはいえ実績も何もない俺について来い、と言っても誰も来ないだろう。
何処かに仕えて実績を積んで独立。
これが最善の策だと俺は思う。
さて、問題はどこに仕えるかという事だ。
誰でも良いから仕えるという訳にはいかない。
仕えた所が全くの無能だとしたら自分の力を充分に発揮する事ができない。
きちんと仕える相手を選ばないとな。
と、考えた時だった。
ぐぅ~~、とお腹が鳴る。

「よし、飯にするか。」

腹が減ったら戦はできぬ。
地図で一番近い街を目指す。
本当はこんなのんびりとして居ては駄目なんだろうけど、腹が減っていては力が出ない。
ゆっくりと馬を歩かせて街に向かう。
ちょうど昼頃には一番近い街に着く事ができた。
馬を預けて何を食べようか、と考える。

(今日の気分はラーメンだな。)

てなわけでラーメン屋さんを探す事にする。
そこそこ大きな街なのですぐに見つかった。
ラーメンを一つ頼んで、昼食をとる。
食べ終わり店を出て、これからどこに向かうかを考えようと思った時だった。
大通りの一角に人だかりができていた。
気になった俺はそこに向かう。
一番後ろにいる男性に話しかける。

「この集まりは何なんだ?」

「管輅って占い師が何か大声で言っているんだよ。」

少し気になった俺は人混みをかき分けて前に向かう。
そこには一人の女性が立っていた。
見惚れるほどの綺麗な瞳をしており、人がこうやって集まっているのもそれが原因だろう。
月琴を弾きながら彼女はこう言った。

「今、この世は乱れに乱れきっている。
 貧困、病、そして王政。
 しかし、まもなくです。
 まもなく天の御使いが現れる。
 星の流星と共に御使いが現れ、この世を救済してくれるでしょう!」

声を高らかにしてそう宣言する女性。
周りの人は何を言っているんだが、と興味をなくしたのか人が離れていく。
だが、俺は少しその話に興味があった。
俺も元からこの世界の住人なら離れていたが、他の人とは違う点がある。
それは前世の記憶。
これがあるからこの管輅のその内容を無視する事はできなかった。
去って行く人混みに逆らうようにその女性に近づく。

「その天の御使いについて詳しく教えてくれないか?」

他の人は話しかける俺をどのように見えただろうか。
周りが俺に視線を集めているのが分かったが、無視する。
女性は顔を近づけて俺にしか聞こえない声で言う。
少しドギマギしながらその言葉を聞いた。

「天の御使いはそう遠くない未来にやってきます。
 貴方の元に。」

「俺の?」

そう聞き返すと小さく頷き、言葉を続ける。

「その御使いをどう導くかは貴方次第です。」

「御使いが俺に引っ張られるのはおかしくないか?」

「何もおかしくありませんよ。
 貴方も天の御使いと変わらないのですから。」

管輅の言葉に俺は眉をひそめる。
右手で刀を持ちつつ、俺は真剣な表情で聞き返す。

「お前、何者だ。」

「ただの占い師ですよ。
 王の資質を持つ者よ。
 貴方の目指す世界が作られる事を私は祈っています。」

そう言って俺から離れて行く。
管輅は人通りの中に入ると一瞬で姿が見えなくなった。
刀から手を放して顎に指を当てて考える。

(さっきの言葉から察するに俺が転生者ってことを知っているみたいな発言だったな。
 そして、俺と御使いは変わらない。
 もしかして俺の世界の人間がこの世界に来るのか?)

深くまで考えるが答えが出る訳がなかった。
これは実際に御使いに会ってみないと分からない事だな。
そう割り切って近くの本屋による。
あの管輅の言うとおり、実際に出会うかはまだ分からない。
麻奈達と同じ神様なのか?、と考えた。
俺が王を目指す事を分かっているような口ぶりだった。
やぅぱり考えても考えても謎は深まるばかり。
本屋に寄って新しい本が入荷されていないかを確認して俺は街を離れる。
街で情報を聞くと、ここら辺で優秀は諸侯はあまり居ないらしい。
他の街に行って情報を集めるか、と考えた時だった。

「お前達、馬鹿な真似は止めろ!
 この馬車には病人が乗っているんだぞ!」

と、男の声が聞こえた。
その方に視線を向けると一つの馬車に賊が数人囲んでいた。
後ろの積み荷を守るかのように赤い髪の男が賊達に言う。

「こうしている間にも病人は弱っている。
 早く街に行って適切な処置をしないと!」

「そんなの俺達には関係ないんだよ!
 いいから、積み荷を渡しやがれ!」

「何を言っている!
 この積み荷はこの病人の物だ!
 渡す馬鹿がいる訳ないだろう!」

賊達は男が面倒になっているのか、手に持っている剣でその口を封じようとする。
黙って見過ごす俺ではないので。

「そこに俺がどーん!!」

「はぎゃ!!」

馬から降りてウルトラバックドロップを繰り出す。
簡単に言えば後ろからジャーマンスープレックスをかけた。
首の辺りが嫌な音が聞こえたが気にしない。
突如現れた俺に賊達の視線が一気に集まる。
俺の後ろで賊の一人が伸びているのを見て、剣を向ける。

「お、お前何者だ!?」

「最強の格闘王関忠だ!!」

b。
俺は親指を突き立てて言う。
賊達は俺が何を言っているのか分からないのか、首を傾げる。
まぁ、分かったら分かったで俺がびっくりするんだけどな。
てなわけで。
思いつく限りのプロレス技と柔道技を賊達にお見舞いする。
骨とか色々折れた気がするが、まぁ大丈夫だろう。
ふう、と息を吐いて俺は言う。

「それでその人、病人なんだろう?」

「あ、ああ。
 その通りだ。」

賊達を圧倒する俺に唖然としていたが、声をかけると正気に戻る。

「一番近い街まで護衛するよ。
 謝礼とかはいらないから急ぐぞ。」

馬に乗り込む俺を見て男はありがとう、と一言お礼を言う。
馬車の手綱を持って走らせる。
近くの街、さっきまで俺がいた街なのだがそこに向かう。
道中族に襲われる事なく街に着くと、男は近くの人に指示を出しながら病人を運ぶ。
俺も気になったのでその後に続く。
布団に寝かせて、男は針を片手に病人の身体を触る。

「ここだな。」

そう呟いてもう片方に針を持ち、高らかに叫ぶ。

「我が身、我が鍼と一つになり!
 一鍼同体!
 全力全快!
 必察必治癒・・・病魔覆滅!
 げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

他の人からすれば奇妙な叫びに思えただろう。
しかし、俺には分かった。
この男から膨大な氣を感じた。
そして鍼から氣が流されていく。
すると、病人の顔は少しずつ良くなっていく。
おそらく氣を送る事で病気を消滅させているのだろう。
さっきの言葉と氣と鍼で推測する。
一通り治療を終えてから俺は声をかける。

「さっきのは見事だ。」

「さっきは助けて貰って助かった。
 お前が来てくれなかったから、あの病人は助からなかった。」

「しかし、あれほどの氣を出しても大丈夫なのか?」

「慣れているから安心してくれ。
 お前も氣を扱うのか。」

「まぁ、多少はな。
 でも、お前のように医療には使えないよ。」

会話をしていて男は何かを思い出したかのような顔をする。

「名前を言っていなかったな。
 俺は華佗。」

華佗は俺に手を差し出してくる。
俺はその手を握り返しながら自己紹介をする。

「俺は関忠。
 よろしく頼む。」

「よろしく関忠。
 そうだ、何かお礼をしたいんだが。」

「いいよ。
 別に謝礼を求めて助けた訳じゃない。」

「尚の事、礼がしたくなった。
 そうだな・・・・よし、こうしよう。」

名案が浮かんだのか、その案を俺に説明する。

「関忠が困った事があればすぐに駆け付けよう。
 これなら物を受け取る訳ではないし、病人や怪我人を救えて俺にも得がある。」

華佗は三国志でも有名な医者だ。
さっきのあれを見た限りかなりの医者というのが分かる。
氣を治療方法にするとは考えもしなかった。
本当に俺には妙な縁があるな。
そこで俺はある事を思い出し、華佗に言う。

「なら、早速頼めるか?」

「何だ?」

「荊州南陽にいる周瑜という女性を診て貰えないだろうか?」

史実では彼女は病死する事になっている。
この三国志の世界ではその通りに進むかは分からないが診て貰って損はないはず。

「分かった。
 この街の病人を診て終わり次第、向かわせてもらう。」

「助かる。
 関忠に頼まれてきた、と言えば多分通してもらえると思う。」

一応、近くの家から紙と筆を借りて手紙を書いて渡す。
その時、他の村人が華佗を捜す声が聞こえる。
それに呼ばれて華佗はまた会おうと言ってその場から離れる。
俺も自分の馬に乗って旅を続けるのだった。 
 

 
後書き
密かに休みが4日続いたので両作品4日連続投稿を目指していたので達成できて満足です。
このシナリオをどう進めるか非常に悩んでいます。
完全にオリジナルで行くか、ルートに便乗するかで悩んでいます。
なので、次に投稿するのは少し遅れるかもしれません。
そちらの方も意見は募集しています。

誤字脱字、意見や感想などを募集しています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧