ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
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第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第40話 絶体絶命
「やっ……」
最初に声を上げたのは誰だったか……。
「「「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」」」」」」
今私たちは眼下で喜びの声を上げたイッセーたちを遙か上空から黒姉の仙術で姿と気配を消しながら見ているわ。そのイッセーたちから少し離れた、さっきまでライザーがいた場所には巨大な氷の塊が出来ている。
「勝ったんだよな!? 俺たち勝ったんだよな!?」
「ええそうよ! 見なさい! あんなことになって無事なはずないわ!」
「やりました! やりましたよレイナーレさん!」
「う゛ん。良かった、役に立てて本当に良かった……」
「あらあら、レイナーレちゃんは泣き虫ですわね」
「なんにしてもこれで破断は決定ですね、部長。おめでとうございます」
「ありがとう祐斗。でもこれも皆のおかげよ。本当にありがとう」
皆輪になって喜び合ってるわ。そんな姿を龍巳だけ少し離れて見てる。
しっかし部長たちも私が氷輪丸を貸したからといって、よくここまで強くなったわね。正直予想以上よ。確実に原作よりは強いわよね。正直私達も今すぐあの場に行って褒めてあげたいんだけど……。ホント、惜しかったわね。
「あ、こうしちゃいられないんだった! 早く火織たちを助けに行かないと!」
「それなら心配ないわよイッセー! 決着がついたのだからもう戦闘も止まってるはずだわ!」
「それにリタイアアナウンスも流れなかったしね。3人とも無事なはずさ」
「そうか! そうだよな! アナウンス流れなかったし……」
そこまで言った所でイッセー、そして聞いていた部員の皆は時が止まったかのように凍りついた。どうやらようやく気付いたようね。
「あ、あの部長。1つ聞いていいですか?」
「な、何かしらイッセー」
「敵の王を倒した時にそのリタイアのアナウンスやゲーム終了のアナウンスって……流れないんですか?」
「な、流れるに決まってるじゃない。でないといつまで経ってもゲームが終わらないわ」
「で、ですよね~」
あっはっはと笑い合うイッセーと部長、そしてそれに釣られるようにして笑い始める部員の皆。うん、なんだかこの光景だけ見ると泣けてくるわね。
とその時、ビシッ! という音と共に氷の塊に大きな亀裂が走った。
「そ、そんな……嘘よ……」
「あんなに攻撃食らって、なんで……」
「私の放った槍だけでも致命傷のはずなのに……」
「ああ、そうだな。ここまで追い込まれたのは俺も初めてだ」
という言葉とともに氷を粉々に爆散させながら炎を全身に纒った無傷のライザーが現れた。
「ど、どうして……」
「申し訳ありませんがこれを使わせてもらいましたわ」
と言ってライザーの背後に立っていたレイヴェルが小瓶を掲げた。イッセーたちは気付かなかったでしょうけど上空から見ていた私達は気付いたわ。光の槍を喰らってから氷龍が着弾するまでの僅かな間にレイヴェルがフェニックスの涙をライザーに振りかけるのを。あれがなければ部長が勝っていたでしょうね。
「リアス、以前君に言ったことは取り消そう。なかなか強力な眷属たちだ。俺もレイヴェルがとっさに涙を使わなければ負けていた。強いよ、お前らは。あと1年、いや半年修行を積んでいれば確実に俺が負けていたな。だが今回は俺の勝ちだ。運がなかったと思って諦めろ」
確かにあそこでもうちょっと早く氷龍を放っていれば勝っていたもんね。
「火織、そろそろ私達も行くかにゃ?」
「もう十分皆の修業の成果は見れました」
黒姉と白音が私にお伺いを立ててきた。見れば龍巳ももう手を出してもいいかという表情でこちらを見上げてる。っていうか黒姉でも龍巳から隠れることは出来なかったか。観戦室の魔王様たちも私たちの居場所把握してるのかな? まあそれは今は置いといて……確かに皆の腕っ節の方は見れたからここでもう私達が出て行ってもいいんだけど……やっぱりもうちょっと様子を見ようかな。
私はまだよという意志を込めて首を左右に振った。
「どうしてですか? 火織姉様」
「確かに修行の成果の方は見れたんだけど……もう1つ見ておきたいものがあるのよ」
「それは……何かにゃ?」
「心の強さよ」
☆
「まだだ!」
へたり込んだ私達の目の前にイッセーが、イッセーだけが私を守るようにして立ち上がってくれた。でも……
「イッセー、やめて。もう……」
フェニックスの涙はもう使ってしまった。その上私と朱乃はそれで回復した魔力も全て使ってしまったしライザー相手にずっと剣を交えていた祐斗の体力ももう限界、レイナーレだって先程の槍を創るのに増幅された全ての魔力を使ってしまって体の方が限界。もう私達には戦う力が……
「まだです! 俺は体力の方はじっとしてたから残ってますし魔力だって倍増すればまだ戦えます!」
「ふん、お前からはもう、いや最初から殆ど魔力なんて感じられないがな。ここまでどうやって生き残ってきた」
「気を付けてくださいお兄さま。あの方の左手につけているあれ、赤龍帝の籠手らしいですわ」
「……なるほど、そういうことか。なら先ほどの堕天使の攻撃も奴の譲渡の力か」
イッセーの手の内ももうバレてる。もう本当に勝ち目は……
「イッセー、もう……もう本当にいいのよ。これ以上あなたが傷付くことなんてないわ」
「何言ってるんですか! それに俺は約束しました! 絶対にあなたを守るって!」
『Boost!!』
「行くぜ焼き鳥野郎!」
そう言ってイッセーは私の静止を振り切り氷輪丸を構えてかけ出した。
「うおおおおおお!!」
『Burst』
「ガハッ!」
でも赤龍帝の籠手から聞こえてはいけない音声がすると同時にイッセーは血を吐いて倒れこんでしまった。
「赤龍帝の籠手は所有者の肉体を激しく傷めつける。駆け出しでここまでよく頑張ったが……もう終わりだ」
「まだ、だ」
それでもイッセーは立ち上がって氷輪丸を構えてくれた。どうしてそこまで。私なんかのために……。
「無駄だ」
でもその氷輪丸もライザーに簡単に弾き飛ばされ屋上から落ちていった。
「ま……だ……!」
それでもイッセーはなおも拳を構えて一歩も引こうとしない。
「……ちっ」
そんなイッセーをライザーは襟首を掴んで持ち上げた。イッセーはもう体に力も入らないのかだらんと手足を投げ出してしまっている。
「ここまで頑張ったお前に敬意を評して一撃で終わらせてやる。だからもう楽になれ」
そう言ってライゼーは今までにないくらい大きな炎を左手にまとった。そ、そんな炎を浴びたらイッセーが死んでしまう!
「これで終わりだ!」
そこからのことは私には何が起きたのか分からなかった。ライザーが炎を振り下ろすのと同時に私は前に駆け出し、そしてさらに同時に私の横を黒い影が通りすぎてライザーが吹き飛んだ。私はライザーには目もくれず後ろに倒れようとしているイッセーに駆け寄り、倒れる前に抱きとめる。
「イッセー、こんなになるまで……」
そのままイッセーをその場に寝かせ膝の上に頭を載せる。傷こそアーシアのおかげで目立ったものはないけれど、服を見ればぼろぼろだった。実戦経験なんて皆無のはずなのにこんなになるまで。皆私のせい。わがままを言った私の……
「ごめんね、ごめんねイッセー。私なんかのために……」
涙が私の頬を伝ってポタリポタリとイッセーの顔に落ちる。それにイッセーだけではない。皆だって私のために傷ついて……。もうこれ以上皆に傷ついてほしくない。もう、もう……
「私、私の負k……」
パンッ!
その私の言葉を遮ったのは頬に感じた鋭い痛みだった。
☆
頭の上でした音に俺は意識を回復し、目を開けると泣きながら頬を抑える部長と厳しい顔をした火織がいた。良かった、火織は無事だったのか。
「火織、あなた無事だったの……」
部長も目を見開いて驚いていた。
「部長、今あなたがしようとしたことがどういうことか分かってます?」
一方の火織は厳しい表情のまま続けた。
「今部長は自ら負けを認めようとしましたよね?」
「そ、そうよ、だってこれ以上皆が傷付くのを見たくなかったから……」
パンッ
そう言った部長の頬をまた火織は叩いた。
「……その傷は皆あなたを守るために負ったものですよ? それもあなたに強制されたからではなく自分の意志で。ならあなたのすべきことは最期まで諦めないことではないんですか!? 傷ついた皆のためにも!」
「で、でも! 皆はもう戦うことが出来なくなってたのよ!? ならこれ以上誰も傷付かない方がいいじゃない!」
「……そこが間違いです。周りをもっとよく見て下さい。部長のそばにはもう一人戦える人が残ってたはずですよ?」
そう言って火織は振り返り、さっきまでライザーたちがいた方を見た。するとそこには
「クッ! どうなってやがる!?」
「無駄」
焼き鳥の放つ特大の火炎を片手で受け止めている龍巳がいた。俺が無事なのは龍巳が助けてくれたからか? それに……なんであいつあんな簡単に焼き鳥の炎を、しかも片手で……。
「龍巳はずっと部長のそばにいたはずですよ? 私が指示して積極的には戦っていないはずですけど。でも周りをよく見ればまだ万全に戦える人がいることに気付いたはずです。それに……」
その言葉と同時に新たな声が頭上で響いた。
「あ~あ、しかしまあ部長にはがっかりだにゃ」
「はい、火織姉様が心の強さを見たいと言って様子見してた理由が分かりました。一度あの人を追い込んだ直後だっただけにがっかりです」
黒歌姉! 白音ちゃん! 無事だったのか! それにしても今の発言って……
「あ、あなた達、皆無事だったの? それに様子見ってどういう……?」
そうだ。俺たちが戦ったのを見てたのか? じゃあ焼き鳥の眷属たちは……?
「頑張ってた皆には申し訳ないですけど修業の成果の確認のために静観させてもらいました」
「な、なんででそんなことを?」
「赤龍帝であるイッセーと関わっていく以上一定以上の強さを身に着けて欲しかったんです。ドラゴンは古来より強者を引き付けますから。弱いままでは彼の近くにいるのは危険なんです。ですから皆には悪いと思いましたけど離れて見ていました。その結果短い期間でよくここまで強くなったって感心したんですよ?」
そこまで火織は嬉しそうな顔で言った。でもそこからはまた厳しい顔に戻った。
「でも部長、最後のは少し頂けません。周りの状況をしっかり観察しなかったこと、皆を傷つけたくないと言ってすぐ諦めたこと、この2つは戦場では決してしてはならないことです。戦いでは心の折れた者から脱落します」
「で、でも……それでももう皆が傷付くのを見たくなくて……」
そう言って部長は俯いて泣き始めた。
「火織、あいつの眷属たちは?」
「そ、そうですわ!」
力が入らない体に鞭打って聞いてみると、焼き鳥の妹が声を被せてきた。
「あ、あなた達はカーラマインと戦っているはずでしょう!? それがなんでこんな所にいますの!?」
「ああ、それなら……白音」
「はい」
返事をした白音ちゃんは指をぱちんと鳴らすと
ドオォォォォォォォォン!!
校庭の方からものすごい爆発音がした。それと同時に
『ライザー・フェニックス様の戦車2名、騎士2名、僧侶1名、兵士6名、リタイヤ』
「そんな!?」
そう言って焼き鳥の妹は絶句した。見れば焼き鳥も、そして目の前の部長も驚いている。
「き、貴様ら、俺の下僕に何をした?」
「簡単なことです。私達で全員ぶっ叩いたあと黒姉が霧で拘束して、その後白音が全員に遠隔起爆式の気弾を仕掛けただけです。すぐその場でリタイヤさせてここに現れなかったら不自然ですから」
あ、あれ全員すぐに倒したっていうのか? しかもほぼ無傷で?
「さて……」
そう言った火織は膝をついて俺の顔を覗きこんできた。
「イッセー、あなたはまだ戦いたい?」
……え?
「火織、あなた何言ってるの!? イッセーはもうこんなにぼろぼろなのよ!? なのにこれ以上彼を戦わせようって言うの!?」
「部長、少し黙って下さい。私はイッセーに質問しているんです」
火織は部長をたしなめると再度俺の顔を覗きこんで言った。
「イッセー、あなたは今回の修行で強くなった。今回の修業の成果としては十分合格だと思ってる。だから今回はもう限界だというのならそれでも構わないわ。後は私達が終わらせてあげる。でも……」
そう言って火織は俺の頬に手を這わせた。
「でももしあなたがまだ戦いたいというのなら……私達があなたに戦うための力を貸してあげる。決めるのはイッセーよ。さあ、どうする?」
ドクンッ
その言葉に俺の心臓は飛び跳ねた。こんな状態でもまだ戦える?
「いい加減にしてちょうだい! もう戦えるわけ……イッセー?」
俺はなおも反論しようとする部長の腕を掴んで発言を止めた。
「部長、ありがとうございます。でも俺……」
そう言った後視線を火織に向ける。火織は真剣に俺の顔を覗きこんでくれていた。
「火織、俺まだ戦いたい。まだ俺何も出来ていない。部長を守るって約束したのに、全然守れていない! 俺はこんな所で負けたくない!」
それにこんな所で躓いてるようじゃいつまで経っても火織の背中に追いつけない!
そう言った俺に火織は……優しい笑顔を向けてくれた。
「よく出来ました」
そう言って俺の頭を撫でてくれる。
「よく言えたわね。さすが私達の幼馴染よ。いいわ、私達があなたに戦う力を分けてあげる。だからもう少し頑張りなさい」
そう言って火織は立ち上がるとつま先でトンッと床を叩いた。すると火織の影が少し広がりその中……か……ら……
「か、火織、何だ……それ……」
俺は顔を引き攣らせつつ火織の抱えているものに目を向けた。
「これぞ神裂家特製魔力ドーピング液よ!」
それはとてつもない大きさのピストン状の容器で、中にはドロドロとした赤黒い液体が詰まっていた。っていうかその中の液体が魔力ドーピング液!? なんか中の液体蠢いてないか!? 一体何から作られてるんだその液は!?
「む、無理だ火織! そんなでっかい注射されたら死んじまう!」
ち、力を貸してくれるって言ったから俺はてっきりなにか強力な魔剣を貸してくれると思ったのに! いくらなんでもこれは無理だ!
「え? 注射?」
しかし火織は俺の発言に首を傾げた。え? だってそのピストンってどう見ても注射器だよな?
「あ、あ~そっか。確かにそう見えなくもないわね。イッセー、安心しなさい。これは注射器ではないわ。先端に針なんてついてないでしょう?」
注射器じゃない? た、確かに針はついてないけど。じゃあそれは一体……? 何か嫌な予感が……。
「イッセー、このドーピング液ね、副作用は無いように作ったんだけどそれでもやっぱり長時間体内に入れておくのは良くないのよ。所詮はドーピングだしね。だからこれを体内に注入する場合、戦闘後にすぐ排出できる場所に入れる必要があるのよ。でも血管内に入ったらすぐには体外に出せないでしょう?」
た、確かに血と混ざったら排出できないな。でもじゃあ一体どこに……ってちょっと待て! 体外に排出ってもしかして! じゃあそれは注射器なんかじゃなくて!
「ま、まさかそれは……!」
「その通り、か・ん・ちょ・う・よ♪」
空気が死んだ。時間が止まった。部長も、部員の皆も、焼き鳥たちでさえ動きを止めた。そんな中俺はというと
「い」
「い?」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
俺はすぐさま立ち上がって猛然と階段に向けてダッシュした! 体が痛いとかもう体力が限界とか言ってる場合じゃない! あんなもん浣腸されたら死んじまう! すぐのこの場を逃げないと!
「おっと残念、逃がさないにゃん♪」
「往生際が悪いですよ、お兄ちゃん」
って黒歌姉に白音ちゃん!? いつの間に回り込んで!
俺はそのまま両腕を抑えられそのまま地面にうつ伏せにケツを突き上げるようにして倒された。グッ、体が動かない!
「痛くないから安心するにゃ」
「お兄ちゃんも子供じゃないんですから逃げないで下さい」
「いやあれに大人とか子供とか関係ないって!」
や、やばい! このままじゃ本当にあんなもん浣腸されちまう!
「か、火織! 頼むちょっと待ってくれ!」
「イッセーまだ戦いたいんでしょう? だったら……龍巳?」
後ろを振り向けば浣腸を持った火織のTシャツの結び目を龍巳がクイクイッと引っ張っていた。そ、そんなことしたら手の動きに合わせて火織の胸がバインバインッて……ってそんな事言ってる場合じゃなかった! っていうか龍巳は焼き鳥抑えてるんじゃなかったのか!? ってあいつまだフリーズしてやがる!
「龍巳? どうしたの?」
「我、それやりたい」
……は?
「まあ別に構わないけど。じゃあ私は終わるまでライザー抑えてるからさっさと終わらせるのよ」
「分かった」
そう言って龍巳に浣腸を渡した後火織はスタスタ行っちまった。
「じゃあイッセー、始めるから力抜く」
って俺いつの間にかズボンもパンツも脱がされちまってるじゃねーか!
「ま、待て龍巳!」
「大丈夫。我、ゲームでいっぱい練習した。痛くない」
一体お前はどんなゲームやってんだ! ってお願いちょっと待って!? なんでそんなに振りかぶってんだ! って今更だけど俺ケツの穴も股間も龍巳たちに丸見えじゃねーか! その上こんな浣腸されたらもうお婿にいけねーよ!
「大丈夫、その時は我が貰う」
「いやいや、その時は私が貰うにゃん」
「むぅ、2人共ずるいです。私だって欲しいです」
「いやいや何ナチュラルに俺の思考読んでるの!? っていやそうじゃなくて、お、お願いだからちょっと待って! せ、せめてするなら火織に、それもダメならもう少し優しく! ってなんで更に大きく振りかぶるの!? いや、ほんと、マジでやめ、あ、あ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ずぶっ!!
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